法人営業の課題を解決するマーケティング的セールスファネル
◾️ なぜ営業が上手くいかないのか?:法人営業での問題とその理由
営業活動、特に法人営業では以下のような問題を抱える営業リーダーが増えています。
- 見込み顧客のフォローが漏れてしまう
営業担当者が個別の顧客に時間をかけすぎ、別の見込み顧客のフォローを忘れてしまう。
その結果、見込み客が競合他社に流れてしまう。
- 営業プロセスが属人化する
ベテラン営業担当者は成果を出せるが、新人や若手層が何をどうすれば成果を出せるのか分からず、成績が安定しない。 - 成約率が下がってきた
見込み顧客の数は多いものの、成約率が低い。何がボトルネックになっているのか分からない。
といった具合です。
内容を分析してみると、以下のような原因が見えてきます。
- フォローが漏れてしまうのは、
どの見込み顧客がどのステージにいるかが可視化されていない
営業活動が個々の担当者に依存し、全体像が管理できていない - 属人的になるのは、
営業活動が個々のスキルや経験に頼りきりになっている
標準化された顧客の動線がないため、新人が育たない - 成約率が下がってくるのは、
どのステージで顧客が離脱しているかが分からない
顧客の興味・関心の段階に応じた適切なコミュニケーションが取れていない
といったボトルネックになっているのです。
◾️ 営業の悩みを解決するセールスファネル
営業上の問題点を見える化して、ボトルネックを探し、解決していくには、セールス・ファネルが有効です。
ファネルというのは、酒などの液体を別の容器に移す時に使う「漏斗(=じょうご)」のことです。上が広くなっていて、下に行くほどすぼんでいくツールです。
営業で初めは広く潜在顧客を探して、見込み顧客を徐々に絞り込み可能性の高いユーザーを探し、商談から契約に持っていくプロセスが漏斗に似ているのでこう呼ぶのです。
特に製造業、I T、金融、保険業界でのB2B、法人向けビジネスなどでの、契約サイクルが長い業界では、顧客企業は「見てすぐ」に契約はしません。候補を比べ、社内でも何回も検討する中で成約に至ります。
◾️ セールスファネルはなぜ、マーケティング的なのか?
セールスファネルは、市場にいる潜在顧客に、知ってもらい興味を持たせ、製品やサービスを契約してもらう、各プロセスを見える化しつつ最適化するアプローチなのです。
この手法は、マーケティングでのフレームワークの、セグメンテーション、ターゲティング、メディアミックスの考え方を踏まえて設計すると、より効果的です。
このそれぞれのプロセスを、4段階に分けて考えます。
- 【認知】潜在顧客が製品やサービスを知る
- 【興味】より深く詳しく知りたいと感じ情報を収集する
- 【検討】条件やスペックを調べ、競合と比較し契約を検討する
- 【行動】商談から社内検討、稟議から実際に契約する
顧客は、知って、興味を持って、検討して商談から契約に至ります。
営業に出る前にこのようなマーケティング的な戦略を立て、準備をしておくことで、成約率を上げることを目指すのです。
◾️ セールスファネルの各プロセスで何をすべきか?
このファネルを効果的に活用するには、各プロセスに合わせた戦略が必要です。
認知の段階ではターゲット層をはっきりさせておくことからスタートします。ターゲット企業が見る可能性が高いメディアに効率よくリーチしていくためです。そこに、ターゲット層の課題を解決できるメッセージを発信していき、反応してくる企業を探します。この段階では、S N Sの発信や広告、S E O対策、検索エンジンでの広告を活用し、顧客リスト(=メールアドレスや住所など)を収集します。
興味の段階では、より詳しく説明できる媒体、メールマガジン、ブログやYouTubeなどで情報を発信します。集めた顧客リストに向けて、具体的なコンテンツを提供して興味を深めてもらうことを目的とします。
検討の段階では、ホームページやランディングページで業界の比較情報や評価を提供します。業界の白書やレポート、自社の実績をまとめた小冊子、有効な事例集などが効果的です。ここでは契約前の商談に持っていくために、問い合わせをもらえることを目的とします。
行動の段階では、絞り込んだ見込み顧客に「契約するとこんなメリットがあります」と価値を伝えます。比較検討しているターゲット企業を集めての集団勉強会や、具体的な課題がある企業への個別相談会が有効です。
このマーケティング的なファネルはオプションツアーを販売する「旅のガイド」に似ています。
最初に、大勢の観光客(潜在顧客)が様々な場所(製品やサービス)について知りたいと興味を示します。これが「認知」の段階です。
観光客はあなたの案内で多くのスポットを見て回ります。
次に、「興味」の段階で、いくつかの特定の目的地に興味を持ったグループに、特定の場所の詳細な情報を提供しその魅力を伝えます。
「決定」の段階では、さらに少数の観光客だけが残り、彼らはどの旅行先を選ぶかを慎重に検討します。あなたは、彼らのニーズや好みに合わせて、最適な旅行プランを提案します。
最終的に、「行動」の段階では、いくつかの目的地への旅行を決めたい、わずかな観光客だけが残って「いくらですか」「かかる時間は?」などと聞いてきます。そこでお客様は実際に旅行を予約し、その体験を楽しむことになりますよね。
それぞれのプロセスを経る時に観光客の数は減りますが、最終的には、その旅行に最も興味を持ち、満足を得られる人々だけが残るというわけです。
セールスファネルは、マーケティングやセールスの戦略を立てるときに、どの段階でどのようなアクションを取るべきかを理解するのに役立ちます。
ファネルの上部では広告や一般的な情報提供によって、多くの人に製品やサービスを知ってもらい、下の方ではより具体的な販売促進活動に焦点を当てる、といった具合です。
このファネルがあることで、顧客はどういうステップ契約したらいいのか、
がわかり、納得して契約できます。
さらに、各段階であなたからの情報やサービスを受けるので、
顧客体験が上がって、あなたの会社っていいよね、と信頼も上がります。
効率的なマーケティング戦略ができるので、リソースの効率的な配分もできますよね。それによって、契約率、コンバージョン率もあげることができます。
ファネルごとに、分析していけば、正確な売上予測も立てられるし、どのマーケティング活動が効果的かを判断し、ROI(投資利益率)を最適化にもなります。
また、冒頭で説明した時に、プロセスを見える化することで、営業の障害になっているボトルネックを発見することもできます。
◾️ セールスファネルなしで営業するとどうなるのか?
逆に、セールスファネルなして営業すると、どの段階の顧客にどれだけのリソースを割り当てるべきかが不明確になります。その結果、見込みの薄いリード(潜在顧客)に過剰な時間や予算を費やしたり、逆に有望なリードに十分な注力をしなかったりするリスクが高まります。
また、顧客が購入プロセスのどの段階にいるのかわかりづらいと、顧客に最適なタイミングや方法でアプローチすることが難しくなります。コンバージョン率も下がるし、効果測定とか改善もできなくなります。
◾️ セールスファネルの事例:建築の素材メーカーの法人営業の場合
では、建築の素材メーカーが建築会社の得意先に営業を行う際の、マーケティングファネルの活用事例を考えてみましょう。
- 認知の段階
展示会や業界イベント、オンライン広告、業界誌への広告掲載、
SNSでのプロモーションなどで顧客または顧客候補の建築会社に、自社の素材や製品の存在を知らせます。
ここで、顧客候補の建築会社が使っている素材の新しい代替品を紹介し、
その利点や革新性を強調します。 - 興味の段階
建築会社が自社の製品に興味を持ち、もっと情報が欲しいと仕掛けていきます。 - ウェブサイト上での詳細な情報の提供、カタログやサンプルの送付、製品デモの実施、専門的なブログ記事やケーススタディの公開などが有効です。
そこで、環境に優しい素材やコスト削減を実現する新技術といったような、情報を提供するという具合です。 - 検討の段階
建築会社が自社と競合他社の製品と比較して、自社だけが提供できるメリット(=差別化ポイント)を分かってもらいます
既存の顧客からの推薦や証言がパワフルです。また、技術サポートやアフターケア、カスタマイズオプションの提案も有効です。 - 行動の段階
商談に持っていく前に、顧客企業の潜在的なニーズを顕在化させる仕掛けをします。工場見学(リアルやオンライン)や、課題別のセミナーや学習セッション、個別相談会が有効です。
契約後も、建築会社が製品を再購入し、長期的なビジネス関係を築くようにします。契約までのプロセスをシンプルにするとか、アフターサービスや保証の明確化、初回購入に対するインセンティブ提供、フォローアップとサポートの強化など、製品周りのことで差別化が有効です
セールスファネルは、ただ売りこもうとするのではなく、お客様のニーズに合わせて適切な情報を提供し、自然な流れで購入に導くことが重要です。ここで大切なのは常に顧客目線で考え、顧客問題を解決することです。
このスタンスでのファネルを通じて、顧客の立場を理解し、信頼関係を築くことができます。その意味でも、マーケティング的な姿勢と発想が重要なのです。
セールスファネルを理解し、適切に活用することで、より効率的に顧客を獲得し、売上を伸ばしてください。
この記事の内容は、以下の動画でも説明をしています。
マーケティングアイズ株式会社 理央 周