マーケティング思考を入れてインサイドセールスを成功に導くには
バズワードになっている"インサイドセールス"、あなたの会社では上手くいっていますか?
インサイドセールスとは「社内(=インサイド)にいて営業(=セールス)をするという手法です。コロナ禍の初期に、通常の訪問営業が難しくなり、会社や自宅などから、オンラインツールや電話を使ってリモートで営業をする、という考え方です。
ここ数年で、営業をする側も、受け取る顧客側にも、ZOOMやMS TEAMSのようなITツールが浸透してきたのでリモート営業もやりやすくなってきました。
一方で、便利だからと手当たり次第に電話をかけたり、DMやメールマガジンを送っても上手くいきません。なにより、受け取る顧客側が迷惑に感じることが大半です。
そこで、マーケティング的な発想を取り入れて、インサイドセールスをより効果的にしていくことには何をすればいいのか?を考えていきましょう。
■ マーケティング的な営業活動とは?
自社にとって、新しい取り組みをする時に、いきなり「インサイドセールスをやろう!」と号令をかけても、空振りに終わります。
新しい手法を組織に取り入れる時には、この3つのステップを踏む必要があります。
- どうやって買ってもらうのか?というHOW=手法を考える前に、
- なぜやるのか?というWHY=なぜやるのか?という、"やる意味"をはっきりさせること
- やると何が変わるのか?SO WHAT=やるとどうなるのか?という、"やった結果"を想定しておくこと
マーケティングでは、売り方を考える前に、
顧客の心がどう動くのか?
そして、その心の動きに伴って「顧客がどう動くか」を考えます。
AIDMAとかAISASという言葉を聞いたことがあるかもしれません。
人が何かを買おうとする時にどんな心の動きをするのか、
を考えてマーケティング活動に当てはめる考え方です。
人は注意を引かれて興味を持ち、情報を探して、
購入して、クチコミをします。
この購買心理にそって、マーケティングツールを仕掛け、
顧客の心を動かすことで購入につなげる、
という考え方です。
これを法人営業にあてはめると、
ニーズに気づき、興味を持ち、詳細を検索し、
選択肢を比較検討した上で、契約し、
製品を導入し使用、といった流れになります。
ここで、それぞれのフェイズでの顧客の状態を深掘りしてみましょう。
顧客は、そもそもあなたの会社ことを知らないのです。
そして、知ってもらえたとしても興味がありません。
もっと詳しく調べたいとも思っていないし、
あなた会社とライバルの違いも分かりません。
あなたの会社と契約する決め手も分からないし、あなたの製品やサービスをどう使えば良いのかさえ、わからないのです。
顧客は、私たちが考えているほど、私たちに優しくないのです。
顧客はこのような状態にある、という"前提"で、
何をやると良いのか、を考えていくのです。
潜在顧客層を、見込み顧客層に絞り、
独自化・差異化をした上で、最後の一押しをします。
そして顧客と契約をし、その後に顧客支援をする、
といったステップです。
■ 主語を「顧客」にして考える
ここで重要なのが「顧客」が何を考えて、何がしたいのか?を先に考え、その後に「うちの会社」ができること、を考えるという順番です。
つまり"顧客は"を主語にして考えてみることが最初なのです。
①ニーズに気づいた顧客は、
②マス媒体や、インターネット検索、展示会などで自ら情報を探し、
③より深く知りたい情報についてカタログや白書などを入手しようと資料請求をします
④その後、これだという会社に詳細を聞こうとします
⑤ここから商談が始まります
⑥そして契約をしその後も、
⑦メンテナンスや追加注文について顧客から聞いてくる
という具合です。
この顧客の心理と行動の動きのステップをベースとして、
どうやって顧客獲得をするのか、について、BtoB法人営業での、
顧客アプローチから獲得までの一連の流れで考えていきましょう。
まず、全体を
- 情報収集、潜在顧客を見つける、
- 見込み顧客に絞る、
- 顧客を獲得し、
- 顧客を維持、
- そして顧客を拡大していく、
という大分類に分けて考えていきます。
それぞれのフェイズでの目的は、
- 情報を収集し分析する
- ターゲット層に向けての情報発信をする
- 顧客データを集める
- 問い合わせを増やす努力をする
- フィールド営業。獲得後はリピートを促す
- ファンがファンを呼ぶようにする
といったことになります。
マーケティングでは、顧客を探し、新規で獲得し、一度契約した顧客を維持する一連の流れを組み立てていきます。市場にいる見込み顧客の数を徐々に絞っていくことになるのです。なので、アプローチする顧客の数は逆三角形のように減っていきます。
一方で、顧客が支払う金額について三角形のように契約以降増えていくことを狙います。理解してもらうまでは対価をもらわず、納得して契約をしてもらい、その後継続して購買してもらう、という考え方をします。この2つの三角形を合わせると、じょうろのような形をしているため、この考え方をセールスファネル(=じょうろ)と呼びます。
自社プロダクトの認知度をあげて、問い合わせや引き合い(=リード)を獲得し、有益な情報を定期的に発信することで顧客の理解を深めます。さらに詳しく知りたいという顧客に、はっきりと差別化ポイントを提示し、Googleなどの検索対策もします。商談時には、必要性を訴求していく、といった具合です。
そして、ターゲット層が見そうなSNSやウエブ展示会に出展したり、啓蒙のためにブログや白書を書いたりYouTubeなどで動画をアップしより細かい点まで説明をするといった具合です。
■ 営業活動のどの部分にインサイドセールスを入れると効果的なのか
この図は、上段がネットの媒体で、下の段が対面・リアルの媒体を使い、何をやるか、を表しています。
情報収集では、ネットリサーチのサービスを使ったり、あなたがSNSをやっているのであれば、発信に対する反応で調べてみる、ということもできます。
リアルでは、顧客からヒアリングするとか、業界の動向などは政府が出している白書や業界新聞なんかも使えますよね。
情報が収集できたら次は、発信です。Googleなどの検索の対策(SEO対策といいます)をしたり、そこに広告を打ったりできますし、SNSでの発信も潜在顧客にアプローチするには効果的です。リアルの方では、業界名簿があれば活用し電話やメールでアプローチしたりできますね。休眠顧客へのDMなども有効です。
顧客候補のデータを集めるための特別なホームページ(ランディングページ)と言います)を作り、集まった顧客データに向けて、LINE やメルマガ、DM
を使って情報発信をしていきます。そして、反応は多い顧客層に、もっと情報を提供するために、リアルの場所やZOOMで無料での相談会や、集団学習、工場見学などのイベントをやるとか、電話やZOOMでの相談会などを組み込んでも良いでしょう。
そして顧客を獲得するために、自社ホームページに誘導し問い合わせが来たターゲット層に、店頭や商談で契約にもっていきます。
ビジネスはここで終わりではありません。一度買っていただいたお客様に、もう一度買ってもらえるように、メールマガジンなどで継続的に顧客とのつながりを保ち続けましょう。DM、ニュースレター、もちろん電話も重要なコミュニケーションのツールです。
そして、あなたの会社のファンになってもらえるように、メールマガジンやアプリ、SNSで有益な情報を発信し続け、対面の機会を作り懇親会やファンイベントを開催するのも有効な手段です。
そして、社内にいて有望な顧客候補や、一度契約をしてもらった顧客に、電話やDM、メールマガジンなどでアプローチをすることを、「社内から営業する」という意味でインサイドセールスと呼んだりします。この際にも、顧客名簿を活用して先程のRFM分析をした上で電話したりメールをするので、顧客関係性のマネジメントCRMという考え方を使うと効率的に顧客にアプローチができます。
■ インサイドセールスをマーケティング活用した事例
全国に支社がある耐久消費財、たとえば家電品や家具、インテリアグッズを小売店に卸す事業の事例です。
首都圏や大阪など意外の、地方支社は顧客間の移動距離が長いため、商談も毎月できるというわけでもありません。また、ちょっと近くにきたので寄って良いですか?というわけにもいきません。
引き合いがない限り対面で顧客に会えるのは、数ヶ月に1度です。
かりに引き合いが来たとしても、1回の訪問ですんなり契約が決まるわけではありません。何度も見積もりを出して、本社に確認しつつ、先方の社内での稟議や会議での承認を得るというプロセスを踏みます。
この流れの中で、顧客が何を考えどの段階にいるのかを知りたいところですが、遠いのでそうそう訪問もできません。そんな、「合間」を埋めるように適切なタイミングで顧客にコミュニケーションをとろう、とインサイドセールスを取り入れました。
たとえば、1月に契約を取れたとします。次の契約は早くても半年後の6月。
2月にはアポを取って、3月に見積もりを出し、4月に商談をして詰めていきます。そして5月には念押しをして6月に契約、と目論みます。
このように、これまで通りだと対面で訪問できる回数は限られています。
ところが、訪問できない合間に顧客企業の担当替えがあっったり、競合他社がより安い提案をして、契約をひっくり返されてしまったりすることはよくあることです。
この問題を解決するには、
- 顧客の状況を知ることと
- 顧客から忘れられないようにすること
が重要です。
そこで、訪問と訪問の間に会社にいながらアプローチをします。
顧客に忘れられないように、DMやメールマガジンなどの有益な情報を定期的に送るとか、ZOOMを使って顧客と双方向のコミュニケーションを取る、といった具合です。
リモート営業と異なる点は、有益な情報を提供する点です。具体的には、既存顧客の喜びの声、導入事例、生産性の上げ方など、顧客の価値に直轄する情報を適切なタイミングなどです。
■ 営業の一連の流れを棚卸ししてみる
戦略営業にマーケティングの考えを入れていく時には、一連の流れで営業活動を考えていく必要があります。そのためには、営業活動の各フェイズを洗い出して、今何をやれているかと何がやれていないかを"見える化"してみることからはじめるといいでしょう。
まずは以下のようなワークシートに、あなたが今やっていることを、上の空欄にそれぞれ書き出していきましょう。
左から、潜在顧客層を探す認知度アップできる取り組み、"ツイッターWebinar/展示会などです。
次に、その右は、有益な情報で啓蒙して見込み顧客層に絞るためにやっていること、たとえば"ホームページ/ブログ、Youtubeなど内容までしっかり伝えられる媒体です。この段階では、あなたの会社、商品を差別化、独自化することも大事です。検索で探してきた方は、あなたとライバルを比較するでしょうから、その時に選ばれるようあなたの会社の優位性をしっかり出しておきたいところです。資料請求なんかも充実させたいところです。
そして、契約前に最後の一押しです。法人営業の場合は、潜在ニーズを顕在化させることが大事なので、無料での悩み相談会やセミナーなどの集団学習をここに入れて必要性を訴求していくことが重要です。顧客獲得のフェイズはフィールド営業に加えてリモート営業もできます。
新規顧客獲得後も重要視しましょう。顧客支援、カスタマーサクセスとして、DMやLINE・メルマガで継続的にコミュニケーションをしていきましょう。工場見学や、ファンイベントなどの開催も有効です。