VUCAとは?:AI時代の変化=VUCAに対応できる人材育成とは?

◾️ 【初心者必見!】VUCAとは?
今までと同じ営業スタイルなのに、なぜか上手くいかなくなってきた
理由がわからないけれど、売上がジリジリ下がってくる
なぜ、原因もわからず売上が下がる最大の理由は"変化の中身とスピード"が今までと違うからです。
例えば、過去のデータをもとに緻密な販売計画を立てたとします。でも途中で、市場が大きく変わったり、新しい技術が出てきたり、法律が変わったり、顧客のニーズも変わったら、その計画は全く役に立たなくなります。
このように変化の中身と変わるスピードが速くなってきたために、今までと同じことをやっていてはうまくいかないのです。この新しいタイプの変化がVUCAと呼ばれているのです。
VUCAは、英語の「Volatility(変動性)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(曖昧性)」の頭文字を取った言葉です。
- Volatility(変動性): 市場やビジネス環境が急速に変化すること
- Uncertainty(不確実性): 未来の予測が難しく、計画が不確実であること
- Complexity(複雑性): 多くの要素が絡み合い、問題の解決が一筋縄ではいかないこと
- Ambiguity(曖昧性): 物事の状況や結果がはっきりしないこと
◾️今までの変化とVUCAは何が違うのか?
VUCAを深く知るためには、今までの変化との違いを知る必要があります。
これまでの変化は、段階的である程度予測できました。一方で、今の変化は不確実で複雑です。市場や技術の変化が速いため、数年先の未来すら読めないし、AIやDXの影響があるため、昨日の成功パターンが今日通用しないのです。また、影響する範囲も、自分たちがいる業界だけじゃなくて、多方面に広がります。
これから何が起こるかわからない変化の中身を、4つのカテゴリーに分けて考えよう、
そして対応していこうとするのがVUCAです。
このような環境がVUCA時代の特徴です。VUCAの時代は、安定的で予測可能なビジネス環境がなくなり、どんな企業でもこの不確実な状況に対応しなければならないという現実があるのです。
では、VUCAをわかっていずに戦略を立てるとどうなるのでしょうか?VUCAを理解せず、過去の成功体験に頼って戦略を立て続けることは「カーナビ無しで10年くらい前に行った旅行先に車で行くようなもの」です。
過去の道をたどることにこだわると、道が変わっていたり、渋滞に巻き込まれたりしてスムーズに辿り着けないないし、事故を起こしてしまうかもしれません。市場が急速に変化しているにもかかわらず、同じやり方を続けることは、企業にとって致命的なのです。
ここでもう少し、VUCAの4項目を整理して説明します。この図は、縦軸が成果の予測ができそうかを表しています。上に行くほど、予測ができるといった具合です。横軸は、現段階でどれくらい状況が分かっているかを表しています。右に行くほど、状況が把握できている、ということになります。
Volatility
右上のVolatility(=変動性)は、現段階では、状況はわかっているし成果の予測もできます。しかし、市場の変化が激しいため、このような状況下では「予期せぬチャレンジ」が必要になるでしょう。なので、変動性が高い市場を相手にする場合は、突発性の高い事案を想定しておくことが重要です。
Uncertaity
次に、右下のUncertaity(=不確実性)は、現段階では、状況はわかっているが、将来的に不確実な要素が多く、将来の見通しが立てづらい場合です。このような場合は、確実性の高い要素と不確実な要素を洗い出し、前者は経験則で対応し、後者の対策を複数立てることが重要です。
Complexity
左上の、Complexity(=複雑性)は、成果の予測はできるが、状況がわかっていない複雑な要素が絡み合っている状況を指します。この場合は、まず予測される全ての変化要員を洗い出し、1つ1つ潰していくことが実は早道です。
Ambiguity
そして、左下のAmbiguity(=曖昧性)、これが最も厄介です。状況もわからず成果予測もしづらい変化を表します。すなわち、未来がはっきり見えず、答えが一つではない状況を意味します。この曖昧な変化に対応するためには、「予測」ではなく、「対応力」を鍛えることが重要です。
実際に、変化に対応できなかった企業の事例も多くあります。携帯のトップシェアだったNokiaが変化に追いつけず凋落したり、写真フィルムのトップシェアだったコダックがデジタル化に対応できなかったこともありました。E コマース化の流れに対応できずに倒産や撤退したアメリカのデパートも、記憶に新しいところです。
◾️VUCAに対応できる組織になるには?
VUCA時代におけるマーケティングは、従来の経験に頼った計画的で予測可能な戦略を立てるだけでは不十分です。なぜなら、それに経験したことのない変化が起こるので、今までの経験では解決できないからです。
では、VUCA時代において、企業はどのようなマーケティングを行うべきでしょうか?事例で説明します。
私の古巣のAmazonは、市場のニーズを先取りする会社でした。本だけだったのが、DVDやCDを売ったり、他社がやってなかったECでの代引きをやったり、音楽も映画もプライムサービスもと、柔軟に事業戦略を変えることができる企業です。
Netflixも柔軟なマーケティングとデータ活用によって成功しています。彼らは顧客の視聴履歴を分析してコンテンツを最適化し、個別化されたエンタメ体験を提供することで、ユーザーのエンゲージメントを強化しています。
もちろん、この2社のような大企業だけではなく、中小企業やスタートアップ企業ができることも多くあります。VUCAに対応していくために必要なのが、スピード持って臨機応変に戦略を方向転換できる企業文化を持つことです。具体的には以下の3点が挙げられます。
では、具体的に何をすればよいのでしょうか?
1.社員に仮説思考を持たせる
VUCAの状況下では「正解」は分かりません。だからこそ、小さな仮説を立てて、すぐに試す姿勢が大切です。
- 小さく試して学ぶ(スモールスタート・アジャイル):新商品を全国展開する前に、一部の地域でテスト販売する
- 失敗を学びに変える(試行錯誤を許容する文化):Amazonの「Fire Phone」失敗後、得た知見をAlexa開発に活かした
2. 多様な視点を持つ社員を育てる
曖昧性のある課題は、一つの視点では解決できません。異なる経験・価値観を持つ人材を巻き込むことが重要です。
- 異業種・異分野とのコラボレーション:自動車メーカーがIT企業と組んで自動運転を開発
- 顧客の声を取り入れる(ユーザー起点で考える):SNSやレビューを分析し、消費者の潜在ニーズを探る
3. シナリオプランニングをさせる
未来が読めない時は、複数の「もしも」のシナリオを用意することが有効です。
- 3つのシナリオを考える:楽観・悲観・現実的:原材料費が高騰する場合/新規参入が増える場合/市場が縮小する場合など
- どのシナリオでも対応できる柔軟な戦略を持つ:商品ラインナップを複数用意して、状況に応じてプロモーションを変える
4. 学習する組織をつくる
曖昧性の高い時代には、「変化に対応できる人と組織」こそが競争力になります。
- ナレッジシェアを徹底する:週次ミーティングで成功・失敗事例をチーム全員で共有
- PDCAよりもOODAループを回す(観察→方向づけ→決定→行動):市場の変化を見てすぐに方向を決め、行動と修正を繰り返す
5. データと直感を組み合わせる
VUCAの環境下では、データだけでも直感だけでも不十分です。どちらも備えて初めて対応できるのです。
- データドリブンの意思決定:AIを使って顧客データを分析し、購買予測を立てる
- 直感や経験を大事にする:「なんとなく違う」と感じたら、その違和感の原因を分析する
V U C Aの環境下では「適応力」と「実験力」が必要になります。
曖昧性の高いVUCA時代では、「正しい答えを探す」のではなく「素早く試して、学び、適応する」ことが生き残る鍵なのです。
◾️ VUCAに対応できる人材とは?
VUCAに対応するためには、企業はどのような人材を育て、どんなスキルを持った人物を求めるべきなのでしょうか?
柔軟で迅速に対応できる人材:
VUCA時代では、状況に応じて素早く意思決定を行うことが求められます。変化に対して柔軟に対応できる社員が必要です。
データ分析スキルを持った人材:
マーケティング活動においてデータを有効活用できるスキルが必要です。AIや機械学習を活用した予測分析ができる人材が企業にとって重要な資産になります。
問題を発見し定義する能力を持った人材:
複雑で曖昧な状況において、問題を発見し定義できる人材が必要です。すでに分かっている問題は、ロジカルな思考と経験則で解決できます。
しかし、VUCAの環境下ではその前段階として「事前に危機を察知」して「問題を定義」し「スピード持って動ける」能力が必要なのです。
この問題解決能力と、問題発見能力は似て非なるスキルが要求されます。
社員研修などの人材育成においては、このマーケティング的な能力を磨くことが重要なのです。
◾️まとめ
VUCA時代のマーケティングでは、企業が柔軟で迅速に対応できる能力が求められます。過去の成功体験に固執せず、データに基づいた戦略の再構築と顧客とのエンゲージメントの強化が重要です。成功している企業は、常に変化に対応し、新しい市場機会を見つけ出しています。
これからの時代に備え、企業はVUCAの時代を乗り越えるための戦略を考え、適切な人材を育成していく必要があります。
私たちビジネスパーソンの次のステップは、これらの変化に対してどのように準備し、どんな実践を行っていくかです。具体的には、
曖昧性の高いVUCA時代では、「正しい答えを探す」のではなく、「素早く試して、学び、適応する」ことが生き残る鍵です。
- 小さく試して、素早く改善(仮説思考)
- 多様な視点を取り入れる(チーム・顧客・異業種)
- 複数シナリオを持って備える(リスクヘッジ)
- 組織で学び続ける(学習する文化)
- データと直感を組み合わせる(バランス感覚)
この時代のマーケティングは、戦略を一度決めて終わりではなく、「市場と共に進化し続けること」そのものなのです。
あなたの企業でも、変化に強いマーケティング戦略を立て、未来に備えていくにはないをすればいいのか、について考えてみてください。
この記事については、以下の動画でも説明をしていますので参考にしてください。
執筆者
石油会社、家電メーカー、大型車両メーカーなどに、新規事業立ち上げ・ブランド構築のコンサルティングと、法人営業にマーケティングを注入する社員研修を提供。 2013年より2023年まで、関西学院大学 経営戦略研究科で教授を務める。
著書は「売れない問題 解決の公式」(日本経済新聞出版)など国内外で23冊。米国、台湾、香港など海外でも講演。テレビ、ラジオの出演や新聞・雑誌への寄稿も多数。YouTubeでも最新のマーケティング情報を発信中。 本名 児玉洋典
VUCAについて詳しく話を聞いてみたい、VUCAに対応できる社員の育て方を知りたい、新しいビジネスを軌道に乗せたい、など、
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