マーケティングと営業の違いとは?売上が伸びない理由と解決策と事例を徹底解説!

◾️ 【経営者必見!】営業とマーケティングの違いとは?
「マーケティングって営業と何が違うの?」
「うちの会社では営業がやっているから、マーケティングはいらないよ」
中小企業の経営者や営業部長の方から、こういった言葉を聞くことがあります。実はここに、売上が上がらない、値引きが当たり前になる、いつまでも営業が属人的で疲弊する...といった"営業の構造的な課題"の本質が隠れています。
「営業の構造的な課題」とは、営業パーソン個人のスキルや努力だけでは解決できない問題のことを指します。たとえば以下のようなものです:
- 顧客リストが属人的で、新規開拓が再現できない
- 提案の軸が営業ごとにバラバラ
- 顧客が「そもそも興味がない」状態でアプローチしている
- 営業の質にバラつきがあり、教育しても成果が出ない
- 頑張っても受注率が低く、受注単価が上がらない
これらの課題の共通点は、「営業担当だけが努力しても限界がある」ことです。
すなわち、マーケティングの思考と施策が必要になるのです。
ところが、大企業ではマーケティングと営業が別の部署として存在することが多いのに対し、中小企業ではこの2つが統合されている、またはマーケティング部が存在しない場合があります。実際にこの2つは全く異なる概念でありながら、それぞれ独自の役割があるのです。なので、部署のあるなし、に関わらずどちらも意識して企業戦略を立てるのが理想的です。
マーケティングは、未知の土地を探検する前の準備のようなものです。市場調査を行い、ターゲット顧客を特定し、適切な商品やサービスを開発して市場へのアプローチ方法を計画します。
この段階は、成功への土台を築く重要なプロセスです。 一方、営業はその探検に行くこと自体です。計画に従って行動し、予期せぬ状況に遭遇した際には臨機応変に対応します。営業は、直接顧客と接触し、彼らのニーズに応える商品やサービスを提供し、成果を上げる活動です。
マーケティングが「売るための準備」を行い、営業が「実際に売る行為」を担うことで、顧客満足度を高め、売上を伸ばすことができるのです。マーケティングと営業の基本的な理解を深めるためにご覧ください
そのためには、まずマーケティングと営業の違いを知り、枠割を明確にして、仕組みで売れる様にしていくことが重要なのです。
◾️マーケティングと営業、それぞれの定義
まずは、マーケティングと営業、それぞれの基本的な定義を確認しておきましょう。
マーケティングとは
一言で表すなら、「顧客創造」です。
より具体的に言うと、市場調査を通じて顧客のニーズや課題を把握し、それに応える商品やサービスを開発・設計し、適切な価格設定を行い、顧客にその価値を伝え、購入しやすいように流通経路を構築する。これら一連の活動全体がマーケティングです。
マーケティングの目的は、まだ見ぬ潜在顧客を含めた幅広い層に対して、自社の商品やサービスを知ってもらい、興味関心を持ってもらい、「欲しい!」と思ってもらうこと。そして、最終的には購入という行動につなげるための仕組みづくりと言えるでしょう。
営業とは
一方、営業は「顧客との関係構築と成約」です。
マーケティングによって見込み顧客となった層に対して、直接的なコミュニケーションを通じて、自社の商品やサービスの魅力を伝え、具体的な提案を行い、疑問や不安を解消し、最終的に購入の意思決定を促す活動です。
営業の目的は、目の前にいる顧客一人ひとりと信頼関係を築きながら、個別のニーズに合わせた提案を行い、契約を結ぶこと。そして、購入後も良好な関係を維持し、リピーターやファンになってもらうことも重要な役割です。
マーケティングと営業の違いをわかっていないとどんな弊害があるのか
マーケティングと営業の違いを曖昧にしたままビジネスを進めてしまうと、様々な弊害が生じます。ここでは、具体的な事例を交えながら、その影響を見ていきましょう。
事例1:見当違いなアプローチによる機会損失
ある中小企業では、ウェブサイトからの問い合わせに対して、営業担当者が画一的な製品カタログを送るだけで、顧客の具体的な課題やニーズを深くヒアリングしようとしませんでした。一方、マーケティング部門は、ウェブサイトへのアクセス数を増やすことばかりに注力し、問い合わせをしてきた顧客がどのような情報を求めているのか、といった視点が欠けていました。
その結果、顧客は「自分の課題を理解してくれていない」と感じ、競合他社のより丁寧な提案に流れてしまいました。マーケティング部門が質の高い見込み顧客を集めても、営業部門がそのポテンシャルを活かせず、多くの機会損失を生んでしまったのです。
事例2:部門間の対立と非効率な連携
別の企業では、マーケティング部門が「質の低いリードばかり送ってくる」と営業部門から不満の声が上がっていました。一方、マーケティング部門は「営業がせっかく獲得したリードをきちんとフォローしてくれない」と反論。お互いの役割や目標が明確に共有されておらず、連携も不十分だったため、顧客情報の共有が滞ったり、重複したアプローチが発生したりと、非効率な状況が生まれていました。
結果として、顧客体験は損なわれ、成約率も伸び悩むという悪循環に陥ってしまいました。
事例3:的外れな戦略によるコストの浪費
あるBtoC企業では、詳細な市場調査を行わないまま、過去の成功事例を基にしたキャンペーンを繰り返し実施していました。しかし、顧客のニーズや購買行動は変化しており、今まで上手くいっていた戦略はもはや効果を発揮しません。にもかかわらず、効果測定も曖昧だったため、無駄な広告費や販促費を垂れ流し続けることになってしまいました。
もし、マーケティング部門がしっかりと市場の変化を捉え、顧客ニーズに基づいた戦略を立てていれば、このような無駄なコストを削減し、より効果的な施策に投資できたはずです。
これらの事例からわかるように、マーケティングと営業の違いを理解せず、それぞれの役割を曖昧にしてしまうと、
- 見込み顧客を逃してしまう(機会損失)
- 部門間の連携が悪くなり、業務効率が低下する
- 無駄なコストが発生し、収益性を悪化させる
- 顧客体験を損ない、顧客満足度を低下させる
といった様々な弊害が生じる可能性があるのです。
◾️ マーケティングと営業の相乗効果を出すには
例えていうなら、マーケティングは「漁師の網」の様なものです。
広大な海に網を仕掛け、様々な魚(見込み顧客)を効率的に集めるイメージです。どんな魚がいるのか(市場調査)、どこに網を張ればたくさん獲れるのか(ターゲット選定)、どんな網を使えば良いのか(プロモーション手法)、獲れた魚をどうやって届けるのか(流通)といった戦略を立て、実行するのがマーケティングです。
一方で、営業は「魚釣りの名人」です。
網にかかった魚(見込み顧客)の中から、特に価値の高い魚を見極め、丁寧に釣り上げるイメージです。魚の好みに合わせた餌を選び(ニーズに合わせた提案)、絶妙なタイミングで竿を操り(クロージング)、釣り上げた魚が逃げないように優しく接する(顧客との関係構築)。まさに、熟練の技が求められるのが営業です。
このように考えると、マーケティングが「広く集める」役割であるのに対し、営業は「個別に深く関わる」役割であることがイメージできるのではないでしょうか。
このマーケティングと営業の違いを踏まえて、先述の営業の根本的な課題を、以下の様なアプローチで、解決していくのです。
1)営業支援できる仕組みを構築する
マーケティングのアプローチで「営業が売りやすくなるための仕組み」をつくるのです。たとえば:
- 見込み客のペルソナを明確にする
- 顧客が抱える課題と、その課題に対する自社の解決策を言語化する
- 商談前にお客様の関心を高めるためのホワイトペーパーや動画などを用意する
こういった施策をマーケティングが担うことで、営業は"売れる見込みのあるお客様"に対して"刺さる提案"をすれば、効率と成果が飛躍的に上がります。
2)属人性から脱却し営業の再現性を高める
営業の「構造的な課題」は、多くの場合「〇〇さんじゃないと売れない」という"属人化"です。
マーケティングの役割が明確になると、「どういう順番で」「どんな情報を渡せば」「どんな言葉で訴求すれば」お客様が興味を持つのかが整理され、誰が営業してもある程度の成果が出せる"型"ができます。これが再現性のある営業です。
3)顧客の課題視点で提案できるようにする
営業だけで顧客を深く理解するのは難しいですが、マーケティングが「なぜその商品が必要なのか」「どんな痛みを解決するのか」を事前に整理していれば、営業の現場で"課題起点"で話を始めることができます。
「値段の話」ではなく「価値の話」ができるようになるため、値引きに頼らない営業が可能になります。
◾️ マーケティングと営業の役割を分担による相乗効果の事例
では、マーケティングと営業の違いをしっかりと理解し、それぞれの専門性を活かした組織体制や役割分担を行うと、どのようなメリットがあるのでしょうか。具体的な事例を交えながら見ていきましょう。
事例1:顧客体験の向上と成約率の向上
あるBtoB企業では、マーケティング部門が見込み顧客の属性や興味関心に基づいたコンテンツマーケティングを展開し、質の高いリード(見込み顧客)を育成することに注力しました。一方、営業部門は、マーケティング部門から提供された詳細な顧客情報に基づき、顧客一人ひとりの課題に寄り添った提案を行うことに集中しました。
その結果、顧客は早い段階から自社の専門知識や解決策に触れることができ、信頼感を高めることができました。営業担当者も、顧客のニーズを深く理解した上で提案できるため、成約率が大幅に向上しました。マーケティングと営業が連携することで、顧客体験が向上し、最終的な成果につながった好例と言えるでしょう。
事例2:効率的なリード獲得と営業活動
あるSaaS企業では、マーケティングオートメーションツールを導入し、見込み顧客の行動履歴に基づいてスコアリングを行い、関心度の高いリードを営業部門に自動的に引き渡す仕組みを構築しました。マーケティング部門は、より多くのリードを獲得するための施策に集中でき、営業部門は、確度の高いリードに集中してアプローチできるようになったため、営業効率が大幅に向上しました。
このように、マーケティングと営業の役割を明確に分け、テクノロジーを活用して連携することで、無駄な労力を削減し、より効率的に成果を上げることが可能になります。
事例3:データに基づいた戦略立案と改善
ある小売企業では、POSデータや顧客データを統合的に分析するマーケティング部門と、顧客からのフィードバックを直接収集する営業部門が定期的に情報交換を行う体制を整えました。マーケティング部門は、データ分析の結果から新たなターゲット層やニーズを発見し、商品開発やプロモーション戦略に活かしました。一方、営業部門は、顧客からの生の声を通じて、マーケティング施策の改善点や新たなニーズの兆候をマーケティング部門に伝えました。
その結果、データに基づいたより精度の高い戦略立案が可能になり、顧客満足度の向上と売上増加を両立することができました。
これらの事例からわかるように、マーケティングと営業の違いを理解し、それぞれの専門性を活かした組織体制と役割分担を行うことは、
- 顧客体験を向上させ、顧客満足度を高める
- 質の高いリードを獲得し、成約率を向上させる
- 営業活動の効率を高め、生産性を向上させる
- データに基づいた戦略立案と迅速な改善を可能にする
- 組織全体の目標達成に貢献する
といった、多くのメリットをもたらすのです。
◾️ まとめ〜ビジネスの成功は、二つのエンジンの連携にかかっている~
「マーケティングと営業の違い」というテーマで、それぞれの定義から、違いを理解しないことによる弊害、そして理解することで得られるメリットまで、事例を交えながら解説してきました。
マーケティングは、顧客を「広く集め」「育てる」役割で、営業は、顧客と「深く関わり」「成約に導く」役割です。
これらは、ビジネスという 船を前に進めるための、二つの強力なエンジンです。どちらか一方だけが優れていても、 船はスムーズに進みません。両者がそれぞれの役割を理解し、連携し、補完し合うことで、初めて大きな推進力が生まれるのです。
もし、あなたの会社でマーケティングと営業の連携に課題を感じているのであれば、まずはそれぞれの役割を明確に定義し、情報共有や目標設定の仕組みを見直してみてはいかがでしょうか。今回の記事が、皆さんのビジネスをさらに発展させるための一助となれば幸いです。
このブログでは、マーケティングや営業に役立つ記事を掲載しています。 他の記事も読み、ビジネスの参考にしてください。
また、この記事について以下の動画でも説明をしていますので参考にしてください。
執筆者
家電メーカー、石油会社、大型車両メーカー、高機能フィルムメーカー、建築部品メーカーなどに、新規事業立ち上げ・ブランド構築のコンサルティングと、顧客視点の顧客文化にするマーケティング社員研修を提供。 2013年より2024年まで、関西学院大学 経営戦略研究科で教授を務める。
著書は「売れない問題 解決の公式」(日本経済新聞出版)など国内外で24冊。米国、台湾、香港など海外でも講演。テレビ、ラジオの出演や新聞・雑誌への寄稿も多数。YouTubeでも最新のマーケティング情報を発信中。 本名 児玉洋典
営業チームを活性化したい、AIを営業に取り入れたい、新しいビジネスを軌道に乗せたい、など、
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