失敗しないマーケティングコンサルタントの選び方|理論と経験、両方を持つ人がベストな理由とは?

◾️ 【経営者必見!】マーケティングコンサルタントを選ぶ基準

「マーケティングコンサルタントの選び方に困っている」という経営者も多いと思います。具体的には、

「この人、すごく学歴もあるしMBAも持っている。でも現場は知らなそう...」
「現場叩き上げの人だけど、なんかやり方がピントこない...」

といった具合です。理論の習得度合いと経験値は、どちらか1つあればいいというものではなく"理論だけでも、経験だけでも足りない"、両方必要なのです。

この記事では、マーケティングコンサルタントを選ぶ時の基準を、理論と経験という2つの軸で説明していきます。

◾️ 理論と経験の重要性

理論の力は地図を持つようなもの

マーケティングの理論やフレームワークは、例えるなら「地図」です。
例えば、「STP」や「4P」、「カスタマージャーニー」のようなフレームワークは、今の状況を整理して、言語化してくれます。

ある税理士さんの事例で説明していきます。女性税理士が、新規顧客を取りたいという相談に来ました。私のマーケティングの基礎講座を受けて、ターゲットを絞ることの大事さに気づいたのです。

彼女の強みは、調理師免許を持っていることと、飲食店での勤務があること、そして飲食店のオーナーは集客に困っていることに気づきました。そこで、きめ細かなセグメンテーションをして、飲食店オーナーで集客に課題を持っているオーナーというペルソナを作り、「飲食店専門の税理士」と謳いました。それを、S N Sや自社サイトで告知しました。その結果、問い合わせが増え、収益向上につながったと報告をもらいました。

成果が出た背景には、S T P分析やS W O T分析というフレームワークを使ってこそ導き出せたことがあります。

経験の力とはコンパスを持つようなもの

一方で、経験は「その道を実際に歩いた人の勘」です。

お客様のちょっとした表情や、数字に出ない兆しを見逃さないことは、法人営業ではとても大事です。

ある製造業の展示会での成功事例をお話しします。理論で考えていくと、「主力商品の提案」が正解だとしても、ベテラン営業の経験で「今は関係性づくりが先だ」と判断して、まず情報提供をメインにしました。結果、半年後に大型契約につながりました。顧客に一番近いところにいるスーパー営業員の勘や経験の重要性を表す事例です。

初期Amazonでの事例

経験は理論を現実世界に使うときの知恵袋のようなものです。予測もできない複雑な市場に対処するには経験での意思決定も必要です。

マーケティングの現場では、予測不能な変化の激しい市場に対応するには、理論で方向を定め、経験でその道を歩く判断が求められます。

私の古巣であるAmazon.comには、まさにその両方を活かした文化が根づいていました。創業者ジェフ・ベゾスは、「顧客中心主義(Customer Centricity)」というマーケティングの基本理論を徹底的に実践に落とし込んだ人物です。その象徴が「空(から)の椅子」という仕掛けです。

会議室にはいつも一脚、誰も座っていない椅子が置かれていました。これは「この椅子にお客様が座っているとしたら、今の議論をどう聞くだろうか?」という問いかけのためのもの。ときには、社員がその"顧客役"として椅子に座り、議論の中で顧客の立場を代弁するという場面もありました。

これは単なる演出ではなく、マーケティング理論で言うところの「顧客インサイト(Customer Insight)」を意思決定に組み込む工夫であり、ベゾス自身が何度も現場で「顧客の反応」を観察してきた経験から生まれた実践知です。
理論を掲げるだけではなく、それを社内文化にまで落とし込む──Amazonの急成長の背景には、理論と経験のバランスがあったのです。
今の時代の変化に対応するには何をすべきか?ということについては以下の記事で説明していますので参考にしてください。
VUCAとは?:AI時代の変化=VUCAに対応できる人材育成とは?

◾️ 理論だけ、経験だけではダメな理由

マーケティング活動において、理論だけで問題を解決しようとすると、机上の空論になりやすく、現実とのギャップに苦しむことになります。

例えば、あるコンサルタントが、食品メーカーのために、美しいペルソナを設計して、ポジショニングマップを書くというようなフレームワークを駆使し、理論的に完璧なレポートを作成したとします。しかし、

「その価格帯では売れない」
「地元スーパーではその棚は取れない」
「買い物客の導線とか陳列位置まで考えにはいっていない」

といった現場の営業現場にはまったくフィットしない案になってしまうのです。
「理論上は正しい」けど、「現場では効かない」施策になってしまうのです。

一方で、経験だけに頼ると、属人的になり再現性が低くなります。

ある中小製造業の社長に事例をお話しします。創業40年、営業もすべて自分でやってきたというその社長の営業スタイルは、

「とりあえず足で稼げ!」
「相手が困ってるタイミングを嗅ぎ取れ!」
「スペックじゃなくて"ノリ"でいけ!」

実際、社長の全盛期にはそれで一定の売上はありました。しかし、社長が引退しようとしたとき、社員たちはこう言ったのです。

「どうやって新規開拓していたのですか?」
「どのお客さんが本当に利益が出ているのか分かりません...」

このように、個人の"経験則"に頼りすぎると、他の人が実際に仕事でやろうとしても、再現できないのです。

営業部隊が属人的になり、そのおかげで事業をスケールできず、若手も育たないという状況になる背景にはこのようなケースが多くみられます。

この事例は製造業の経営者のケースですが、経験だけのコンサルタントに依頼する場合は、再現性はあるか、自社の仕組みにマッチするのか、という基準で考えることが重要です。

このように、理論は「考える道具」、経験は「判断する力」になるのです。

◾️ 両方あると何がいいのか?

理論だけだと、現実の複雑さや予期せぬ状況に対応できません。一方で、経験だけでは、新しい状況や変化に適応するための、体系的なアプローチが抜け落ちてしまいます。

マーケティングを取り巻く環境は、常に変化しています。15年前くらいからのSNSの浸透や、ここ最近のAIの進化、これらに伴う消費者の価値観もかなりのスピードで変化しています。

理論と経験の両方を駆使することで初めて、これらの変化に柔軟に対応することができるのです。

理論プラス経験のメリットをまとめると以下の3点になります。

•    状況を正しく分析できる(理論)
•    それを実行に落とし込める(経験)
•    再現性のある仕組みにできる

中小企業の製造業の売上アップ支援策を例に取って考えてみると、

1.    S T Pのフレームワークを使ってセグメントを設計(理論)
2.    営業現場の現実を聞き取り、経験に基づいて重要な意見を抽出
3.    両方を活かして営業資料を改善することで
4.    商談化率を30%から60%に上げる目標を立てる

といった具合です。

◾️ マーケティングコンサルタントの選び方

では、マーケティングコンサルタントを選ぶとき、どこを見ればいいのか?をまとめていきます。

提案の内容に、理論と経験での偏りがない点を考慮することが重要です。
具体的には、理論だけを語るコンサルタントには、「ちゃんと現場を見てきたか?」という点を確認するといいでしょう。

同じように、経験だけを語るコンサルタントには「再現性ある「型」や「考え方」を持っているか?」という点を確認するといった具合です。

具体的には、以下の5点を確認するといいでしょう。

  • 理論的知識:最新のマーケティング理論や技術に精通しているか
  • 実践経験:様々な業界や規模の企業でのコンサルティング経験があるか
  • 適応力:新しい状況や変化に柔軟に対応できるか
  • コミュニケーション能力:複雑な概念を分かりやすく説明できるか
  • 実績:過去のプロジェクトで具体的な成果を上げているか

理想は、理論やフレームワークに精通していて、同時に実務でのマーケティング経験があることが重要です。その上で「その理論や経験を、自社のビジネスに当てはめて考えてられるかどうか」という点を確認するといいでしょう。

◾️ まとめ

理論やフレームワークは、考えるための道具のようなもので、地図のようにガイドしてくれます。

経験は、迷った時に判断するための基準になるコンパスのようなものです。

どちらか一方では、十分ではなく、両方あってこそ成果が出ます。有能なコンサルタントは、理論と経験の"橋渡し"ができる人といったイメージなのです。

マーケティングは、「売れる仕組み」を作るもの。
そのためには、"考える力"と"動かす力"の両方が必要なのです。

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執筆者

マーケティングアイズ株式会社 代表取締役 理央 周(りおう めぐる)
家電メーカー、石油会社、大型車両メーカー、高機能フィルムメーカー、建築部品メーカーなどに、新規事業立ち上げ・ブランド構築のコンサルティングと、顧客視点の顧客文化にするマーケティング社員研修を提供。 2013年より2024年まで、関西学院大学 経営戦略研究科で教授を務める。
著書は「売れない問題 解決の公式」(日本経済新聞出版)など国内外で24冊。米国、台湾、香港など海外でも講演。テレビ、ラジオの出演や新聞・雑誌への寄稿も多数。YouTubeでも最新のマーケティング情報を発信中。 本名 児玉洋典 

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