マーケティングに効く生産性の高め方〜量と質を両立させる5つの視点

マーケティングで成果を出すには、「生産性」を高めることが欠かせません。ただし、ここでいう生産性とは単に「たくさんこなす」ことではありません。実は、生産性には大きく2つの視点があります。

それが 「量の生産性」「質の生産性」 です。

この2つをどう捉え、どう両立させるかによって、企業の成長スピードも、ブランドの信頼性も、大きく変わってきます。

目次
  1. ◾️ 生産性とは?
  2. ◾️ 量の生産性とは?
  3. ◾️ 質の生産性とは?
  4. ◾️ 質の生産性を測定する5つの方法 
  5. ◾️ 質の生産性を高めるために組織と個人でできる具体策
  6. ◾️ 質と量の生産性を高めることで得られる効果
  7. ◾️ まとめ

◾️ 生産性とは?

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まず、生産性とは何かを定義します。 生産性とは、

一定のリソース(時間や労力)でどれだけの成果を上げるか

を指します。 ここで重要なのは、単に多くの成果を出す「量の生産性」と、 成果物の質を高める「質の生産性」の2つの側面があることです。 多くの企業が量の生産性に重きを置きがちですが、質の生産性も同様に重要です。

この2つの違いを音楽バンドのライブに例えると、量の生産性はライブで何曲演奏できるか?という曲の数になります。一方で、ライブでの質の生産性は、その演奏の完成度や、観客の感動度といった音の美しさ、演出、パフォーマンスに当たります。

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音楽のライブでは、
「たくさん演奏しても雑だったら満足度は低い」
「少なくても丁寧で心に響く演奏なら満足度は高い」
ということがありがちですが、ビジネスもまさに同じです。

■ 量の生産性とは?

量の生産性は、短時間で多くの成果を上げる力です。例えば、製造業では1時間にどれだけの製品を生産できるかが指標となります。これは定量的に測定でき、数値で表すことが可能です。量の生産性を高めるためには、効率的な作業手順や自動化技術の導入が有効です。これにより、コストを抑えつつ大量生産が可能となります。

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営業現場では、どう行動すれば、受注数、受注金額を達成できるか、が量の生産性になります。具体的には、以下のような項目です。

【量的な生産性】

  • 訪問件数・架電数・見積提出数など
  • サイト改善でクリック率UP
  • 顧客リストの拡充や商談回数の増加

これらの数字の見える化をすることで、数字への意識アップにつながります。

◾️ 質の生産性とは?

一方で、質の生産性は成果物の品質を指します。どれだけ多くの製品を生産しても、品質が低ければ顧客満足度は低下し、ブランドの信頼性も損なわれます。質の生産性を高めるためには、従業員のスキルアップや品質管理の徹底が必要です。 

営業における質的な生産性とは、どう工夫すれば、商談獲得率、受注率を向上できるかということになります。具体的には、以下のような項目になります。

【質的な生産性】

  • 商談化率や成約率のアップにつながる営業トーク
  • 成約しやすい顧客を見極める力
  • 提案の中身、質問力、スピード感、顧客の負担軽減
  • 顧客にとって本当に「価値ある情報」を提供できているか

といった、顧客に価値のある情報は何かを考える力の結果に当たります。

2つの生産性の以下に比較をまとめてみます。

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量の生産性:

  • 定義:一定期間内にどれだけをこなせるかという数字の成果
  • 目的:生産量・スピード・効率の向上
  • 指標:売上金額、生産数、顧客への訪問回数、成約率、リスト数
  • メリット:短期間で成果が出やすい
  • デメリット:質がおろそかになりがち

質の生産性:

  • 定義:成果物の中身、内容の良さ、完成度など
  • 目的:品質・満足度・精度・信頼度
  • 指標:顧客の評判・イメージ・リピートする理由・N P S
  • メリット:ブランド価値のアップ、満足度アップ
  • デメリット: 時間とコストがかかりがち

といった具合です。

量と質のバランス 

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ビジネス成功のためには、量と質のバランスを取ることが重要です。例えば、Appleは大量生産しながらも高い品質を維持しています。これにより、顧客の信頼を獲得し、ブランド価値を高めています。逆に、量だけを追求すると質が疎かになり、顧客満足度が低下します。質だけにこだわるとコストや時間がかかりすぎてしまうため、どちらも高めることが重要です。 

2つの生産性が両立できると、以下のようなメリットを得られるのです。

  • 顧客満足度アップ
  • 競争力もアップ
  • コスト効率もアップ
  • ブランド価値
  • モチベーション

ひいては、持続可能な差別化ポイントになり自社の成長につながるのです。

◾️ 質の生産性を測定する5つの方法 

特に質の生産性を高めることは、中長期的な顧客の満足度を高めることにつながるため、とても重要になります。この質の生産性の測定方法を以下に挙げておきます。

1) 顧客満足度調査

顧客アンケートやフィードバックを通じて、製品やサービスに対する満足度を測定します。具体的な質問項目には、製品の品質、使用感、サービスの対応などが含まれます。

2)品質評価

製品やサービスの品質基準を設定し、定期的に評価を行います。例えば、製造業では製品の耐久性や欠陥の有無を検査します。

3)リピート購入率

顧客が再度購入する割合を測定します。高いリピート購入率は、顧客が製品やサービスに満足している証拠となります。

4)ネットプロモータースコア(NPS)

顧客が他人に製品やサービスを勧める意欲を測る指標です。NPSは「0から10のスケールで、あなたはこの製品を友人や同僚にどれくらい勧めますか?」という質問で計測されます。

5)製品の返却率やクレーム率

返却やクレームの頻度を追跡します。低い返却率やクレーム率は、高品質の製品やサービスの指標となります。

◾️ 質の生産性を高めるために組織と個人でできる具体策

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組織でできること 研修と教育:

1)研修と教育の強化(接客、提案力、品質管理)

社員の基礎スキルに加えて、顧客対応力や提案の質を高める研修を継続的に実施することで、現場力が向上し、質の生産性も自然と高まっていきます。

2)顧客満足度やクレームの分析と活用

アンケートやクレーム内容を「現場改善のヒント」として捉え、組織全体で共有・活用することで、顧客の声に基づいた改善が信頼とリピートにつながります。

3)部門を越えた改善チーム(クロスファンクショナル)の設置

営業・製造・カスタマーサポートなど、異なる部門が連携することで、新たな視点からの改善アイデアが生まれ、組織全体の質を底上げすることができます。

4)新しい改善提案を受け入れる仕組み(イノベーション文化)

現場からの提案を「手間」ではなく「価値」と捉える文化をつくることが重要です。社員の気づきを積極的に取り入れることで、質の向上が組織に根づきます。

個人でできること

1)スキルアップ、専門性の深掘り

自分の専門分野や強みを意識的に磨いていくことで、提案や対応の質が向上します。継続的な学びが、自信と成果につながります。

2)上司・顧客・同僚からのフィードバックをもとに改善

自分では気づきにくい課題も、周囲からのフィードバックによって発見できます。素直に受け止めて改善に活かす姿勢が、仕事の質を高めていきます。
「どうすればもっとよくなるか?」を日々考える習慣
業務をこなすだけでなく、より良くするための視点を持つことで、小さな工夫が積み重なり、全体の生産性向上につながります。

3)細部までこだわる姿勢

資料の見た目、メールの書き方、言葉づかいなど、細かい部分への配慮が信頼を生みます。丁寧な仕事は、結果として高く評価されるようになります。

4)自分の仕事が顧客にどう貢献しているかを常に意識する

自分の業務が、誰にどんな価値を届けているのかを意識することで、仕事への向き合い方が変わります。「顧客視点」で考えることが質を高める第一歩です。

量と質の生産性を両立することで、顧客満足度の向上、競争力の強化、コスト効率の改善、ブランド価値の向上、従業員のモチベーション向上など、多くのメリットが得られます。これにより、企業は長期的な成功を収めることができます。

◾️ 質と量の生産性を高めることで得られる効果

両方をバランスよく高めることで、次のような成果が得られます。

1)顧客満足度の向上

質の高い製品やサービスを提供することで、顧客の満足度が向上します。これは顧客のリピート購入や口コミによる新規顧客の獲得につながります。さらに、量の生産性を高めることで、迅速に顧客のニーズに応えられます。

2)競争力の強化

量と質の両方を重視することで、市場において競争力が強化されます。高品質な製品を大量に供給できる企業は、他社に対して優位性を持ち、価格競争や品質競争において勝ち残ることができます。

3)コスト効率の改善

量の生産性を高めることで、単位当たりの生産コストが削減されます。一方、質の生産性を重視することで、製品の返品やクレームの減少につながり、長期的にはコストの削減となります。これにより、全体的なコスト効率が改善されます。

4)ブランド価値の向上

質の高い製品やサービスを継続的に提供することで、ブランドの信頼性や価値が向上します。量の生産性を高めることで、安定した供給体制を確立し、顧客の期待に応え続けることができます。

5)従業員のモチベーション向上

量と質の生産性を重視する企業は、従業員のスキルアップやキャリア成長に注力します。これにより、従業員のモチベーションが向上し、仕事に対する満足度が高まります。結果として、従業員の生産性が向上し、企業全体のパフォーマンスが改善されます。

6)持続可能な成長

量と質のバランスを保つことで、短期的な利益だけでなく、長期的な成長を実現できます。高品質な製品を安定して供給することは、企業の持続可能な成長に不可欠です。

7)市場への迅速な対応

量の生産性を高めることで、市場の変化や顧客の新たなニーズに迅速に対応できます。同時に、質の生産性を重視することで、新しい要求に対しても高品質な製品やサービスを提供することができます。

◾️ まとめ

量と質の生産性を両立することは、顧客満足度の向上、競争力の強化、コスト効率の改善、ブランド価値の向上、従業員のモチベーション向上、持続可能な成長、市場への迅速な対応など、多くの面で企業にとって有益です。これらの要素が組み合わさることで、企業はより強固な基盤を築き、持続的な成功を収めることができます。

「量をこなせば売れる」時代は終わりました。これからは「量×質」の両立が、企業の強さを決めます。動くだけでなく、どう動くか。数字を追うだけでなく、顧客にどう伝わるか

この両方を意識できる組織・個人が、これからの時代をリードしていきます。
皆さんの現場でも、ぜひこの視点を取り入れてみてください。

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また、記事を動画でも説明しています。こちらも参考にしてくください。

執筆者

マーケティングアイズ株式会社 代表取締役 理央 周(りおう めぐる)
家電メーカー、石油会社、大型車両メーカー、高機能フィルムメーカー、建築部品メーカーなどに、新規事業立ち上げ・ブランド構築のコンサルティングと、顧客視点の顧客文化にするマーケティング社員研修を提供。 2013年より2024年まで、関西学院大学 経営戦略研究科で教授を務める。
著書は「売れない問題 解決の公式」(日本経済新聞出版)など国内外で24冊。米国、台湾、香港など海外でも講演。テレビ、ラジオの出演や新聞・雑誌への寄稿も多数。YouTubeでも最新のマーケティング情報を発信中。 本名 児玉洋典 

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