ペルソナの作り方〜売上増につなげる作成方法、意識統一、社内浸透までのプロセス

なぜ、「あなたの商品・サービスは、誰のためのものですか?」と質問に明確に答えられますか?この記事では、ビジネスで成功するために必要な「ペルソナの作り方」について、作成のポイントと、社内での浸透方法を説明していきます。
◾️ 【初級者必見!】ペルソナとは何か?〜ターゲット設定との比較
「ペルソナ」とは、サービスや商品の典型的な顧客・ユーザーを表した"仮想の人物像"のことです。「理想の顧客像」と言えます。
マーケティングのSTP分析で使う「ターゲット設定」とは、目的は同じですが、違うものなのです。ターゲット設定は、広く市場を捉え、大きな塊として顧客をとらえます。
S T P分析については、以下の記事で説明しているのでそちらを参照ください。
クリック→ STP分析とは?目的、やり方、活用方法とAmazonの事例で解説
ターゲット設定とは「どの層に売るか?」というグループの設定です。たとえば、
- 30代の共働き夫婦
- 中小企業の経営者
- 大学生の一人暮らし層
などと、「属性」や「共通点」で市場を大まかに分類する考え方です。
一方で、ペルソナとは、そのターゲットの中から、代表となる"1人の人物像"を具体的に描くことです。たとえば、
- 名前:田中美咲さん(38歳・東京都在住)
- 職業:広告代理店勤務のワーママ
- 家族構成:夫と小学生の子ども2人
- 悩み:仕事と家事の両立が大変で、毎日の夕食作りが負担
- よく見るSNS:Instagram
といった具合に、まるで実在する人のように描くことで、「誰のために、何を、どう伝えるか」を明確にするために作成します。
「この人のために商品やサービスを作る」と決めた人物像のことなのです。
架空のキャラクターではありますが、できる限り"実在しそうな"一人にまで落とし込むのがコツです。
◾️ なぜペルソナが必要なのか?
もし、ペルソナ無しでマーケティング活動をすると、どうなるのでしょうか?
マーケティング活動では、ターゲット層に向けて
- どんな言葉で伝えるか
- どこに広告を出すか
- どんな商品にするか
という全体の設計をしていきます。
このプロセスの中で、もしペルソナ無しでビジネスをやるとどうなるのか、について飲食店の事例で考えてみます。
新しく、オープンするラーメン屋が、「万人受けするように」と、あっさり味・こってり味・ビーガン対応・チャーシュー盛り盛り全部のせと、考えうるメニューを全部やると、結果的に個性のない店になってしまいます。
しかし、ペルソナを「30代男性、仕事帰りにガッツリ食べたい人」と絞っていくと、
- にんにく多めでスタミナがつく
- ご飯おかわりは自由
- 店内では、お客様が元気の出るような接客をする
- スポーツジムと提携する
というように、メニューも、サービスも、チラシの文言もターゲット層が具体的にイメージできる形を生み出せます。
ペルソナなしでマーケティングをするのは、目隠しをしてダーツを投げるようなものです。当たる可能性はゼロではありませんが、的中率は極めて低くなります。結果として、多くの時間とリソースを無駄にしてしまう可能性が高いのです。
◾️ ペルソナを作る目的
ここでペルソナを作る目的をあらためてまとめていきます。
1)チーム全体で共通のユーザーイメージを持つ
複数の担当者が同じ顧客像を共有することで、方向性のぶれを防ぎ、プロジェクトの進行がスムーズになります。
2)見込み客が抱えている悩みや問題点を発見しやすくする
ペルソナを通じて、顧客の細かなニーズや心理的な側面を理解しやすくなります。
3)ユーザー視点で、効果的な施策を考える
顧客の行動や価値観を具体的に設定することで、効果的なマーケティング戦略を立てることができます。
4)マーケティング施策の方向性が決まりやすくなる
ペルソナが商品やサービスに求めるものを具体的に描き出すことで、マーケティングの方向性が明確になります。
5)客観的な判断を下すため
企業側の視点ではなく、顧客の視点に立つことで、客観的に商品やサービスを評価できます
マーケティング戦略を立てる段階で、
- 見込み顧客がどのような課題感を持っているのか
- 問題解決に向けてどんな行動をとるか
を具体的に推測した上で、効果的なアプローチは何か?を立案していきます。
そのためには上記1)で挙げた、チーム全体で共通のユーザーイメージを持つことで「社内の意識統一」することが重要です。
製造業でいえば、製品開発から営業、カスタマーサービスまで、全部門が同じ顧客像を共有することで、一貫した戦略を立てられるようにするためです。
部署や関係者で"顧客像がバラバラ"だと、同じ船に乗っているのに、バラバラの方向にオールを漕いでいるようになってしまいます。
- 営業部門は「価格に敏感なお客様」だと思って値引き提案をする
- 商品開発は「高性能を求めるプロフェッショナル層」だと思って高価格で開発する
- 広告チームは「初心者向け」だと思ってやさしい表現で訴求する
このように、前提となる"顧客のイメージ"がバラバラだと、やること・伝えることが全部ズレてしまうのです。そして、結果として、
- 顧客に一貫した価値が伝わらない
- ブランドの印象があいまいになる
- 社内で意見が食い違い、ムダな会議や手戻りが発生する
- 営業も広告も効果が出にくくなる
つまり、「売れない理由」がどこにあるのかが分からなくなってしまい、次の戦略構築や施策の立案につながらないのです。
◾️ なぜペルソナを上手く作れないのか?
ペルソナが上手く作れない理由は、大きく3つあります。
1) データ不足
実際の顧客の声を聞いていないとか、顧客に関する情報が十分にないことがあります。抽象的なペルソナだと、そこから顧客の行動などを予測できず、的外れな施策が出来上がってしまいます。
また、1人で作ると限界があります。自分の頭の中で作ってしまっているから、リアリティが出せないのです。営業や製造など他部署の人と作ることで、だんだんとペルソナの解像度が上がり具体的になってきます。
2) 1人に絞るのが怖い
ターゲットを絞ると「その人にしか売れない」と思い込む方もいます。ペルソナを作るということは、1人に絞ってこの人にしか売らない、ということではなく「こういう人"が典型的な顧客だよね」と一旦決めることなのです。
全て仮説に基づいて仮の結論を出すわけなので、想定外のこともあります。ペルソナを設定してから、テストを行うなどPDCAを回しながら、臨機応変に微調整していくことが重要です。
3) 部署や関係者の共通認識がない
営業、商品開発、広告担当など社内の各部署の間での"ペルソナ"に関する共通認識を持たずに営業をしているので、バラバラの顧客像を描いてしまっている企業も少なくありません。
各部門の意見が反映されないまま、マーケティング活動を進めていくと、顧客増がブレてしまい、ひいては施策の方向性も定まりません。
また、各部門が独自の視点で動くことで、社内で「誰のために何をするか」という共通認識が欠如し、チームワークが損なわれます。
◾️ マーケティングに使えるペルソナの作り方
では実際にどうやって作るのか?ステップで解説します。
ステップ①:実際の顧客データを集める
アンケート、インタビュー、商談メモ、ウェブサイトの分析などを通じて、顧客データを収集します。
BtoBの場合は、直接顧客にインタビューするのも効果的です。例えば、よく買ってくれるお客様の共通点は何か、という具合です。
ステップ②:属性を整理する
年齢、性別、職業、年収、家族構成、住んでいる地域など、基本情報を決めます。
BtoCなら38歳の主婦、世帯年収900万円、子供が2人で二子玉川駅に住んでいるという具合です。
BtoBであれば、車両部品メーカーの購買課長で、決済権限はあるが300万円を超える場合は上司の決済が必要、という具合です。
ステップ③:価値観や行動パターンを想像する
ペルソナの、詳細な特徴付けをします。
趣味、価値観、日常生活、悩みなどを具体的に設定します。
BtoCなら「ヨガが好きで、健康意識が高い27歳の独身女性
BtoBなら「意思決定の基準は品質重視、とか、新しい技術を容認する」という具合です。
特徴づけをするために仮説として以下のような問いをたてるのがいいでしょう。
「どんな言葉に共感するか?」
「普段、どんなSNSを見ている?」
「何に一番お金を使いたいのか?」
ステップ④:どんなニーズ・課題感を持っているのか?
ペルソナが抱える具体的な問題や欲求を明らかにします。
このペルソナの課題感や、悩み、問題意識をあぶり出すことが、最も重要になります。
BtoCでは、実用的な利便性、感情的な共感が購買動機になりがちですし、BtoBでは組織としての課題、個人の立場での悩みの両面を見ることが重要です。両者ともに、購入を妨げる不安(購買障害)を明確にしておくと、マーケティング施策に活かせます。
ここでも、どんな悩みを持っている?と以下のような問いを立ててみましょう。
BtoCなら「時間がない、料理がマンネリ、家族に喜んで欲しい」
BtoBなら「売上が横ばい、若手が育たない、価格競争に巻き込まれている」
そこから、項目ごとにリストアップしていきます。
以下に、具体的な事例を列挙しますので参考にしてください。
日常の悩み
そもそも時間がない、子どもの世話で自分の時間がない、料理がマンネリ、家事と仕事の両立が大変
情緒的なニーズ
自分の時間が欲しい、家族に喜んでほしい、手を抜いても罪悪感を感じたくない
実用的なニーズ
簡単・時短・失敗しない、栄養バランスがとれる、家計にやさしい
商品・サービスに求めるもの
レシピ付きミールキット、家電の自動化、食洗機、宅配サービスなど
購買における障害
価格が高い、操作が難しそう、家族が気に入るかわからない、使いこなせるか不安
情報収集方法
Instagram、YouTube、ママ向けブログ、口コミ、リアル店舗での体験
決め手になる要素
SNSでの評判、時短効果、家族の反応、使いやすさ、アフター
サポートの有無
BtoBの場合だと、
組織課題
売上が横ばい、営業が属人的、若手が育たない、価格競争に巻き込まれている
部門課題
受注率が下がってきた、新規開拓がうまくいかない、オンライン営業が進まない
個人の悩み
自分が現場に出ないと売れない、経営陣との板挟み、マネジメントに時間が取られる
導入したい価値
営業を仕組み化したい、部下に任せていきたい、利益率を上げたい、働き方を改善したい
購買における障害
上司の決裁が必要、費用対効果が見えにくい、過去の失敗体験がある、現場が抵抗する
情報収集方法
業界紙、展示会、ウェビナー、LinkedIn、知人の紹介
決め手になる要素
実績がある、同業の事例がある、短期間で成果が出そう、担当者の信頼感
ステップ⑤:名前をつけて"1人"にする
1から4までを考えた上で、ペルソナの一日の行動や、商品との出会いから購入までのジャーニーを描きます。その上で、1人を想定していきます。
BtoCなら「高橋裕子さん 39歳 二子玉川駅 歩いて7分の分譲マンション」
BtoBなら「川崎太一さん・38歳・営業マネージャー・神奈川県在住」
できれば写真(フリー素材でOK)も添えておくとリアルに感じられます
ここまでできたら、以下の図(BtoBの事例です)のようにまとめていきます。
このペルソナのワークシートを差し上げますので、以下の弊社問い合わせフォームから「ペルソナワークシート希望」と依頼ください。
リック→ マーケティングアイズ 問い合わせフォーム
◾️ ペルソナ作成後の社内共有の方法
ペルソナは、作って終わりではありません。社内で共通言語として扱い、具体的な行動に結びつけることが重要です。
「この人のために、私たちは何ができるか?」
これを社内の共通キーワードにするだけで、マーケティングの力が一段階上がります。
そのためには、以下のステップを踏んで、社内に浸透させることが効果的です。
1)カスタマージャーニーを作る
ペルソナの一日の行動や、商品との出会いから購入までの一連の動きを描きます。
これはカスタマージャーニーという考え方を使います。
以下の記事で説明しているので参考にしてください。
クリック→ カスタマージャーニーとは?作り方、ステップ、仮説の立て方、作成のポイントを事例で解説
このカスタマージャーニーのワークシートをパワーポイントのファイルで差し上げます。ご希望の方は、以下の問い合わせフォームからご依頼ください。
クリック→ マーケティングアイズ 問い合わせフォーム
2) 目的を明確にする
単に「ペルソナ作ったから」と他部署に連絡するだけではうまくいきません。
「営業・開発・マーケ部門で顧客像を統一して、売れる商品と売り方を揃えるため」という目的をはっきりさせて、関連部署を集めて説明します。
具体的には、以下のような手法が効果的です。
- ワークショップの開催:双方向のディスカッションを通じて、チーム全体でペルソナへの理解を深める
- 社内プラットフォームでの共有:ペルソナの資料を全社的にアクセス可能なプラットフォームに保存し、いつでも参照できるようにする
3)実際の業務への活用促進
開発や営業などの実際の業務の中でペルソナを活用する習慣づけを行うことで、社内に文化として根付いていきます。全社的な理解の促進をするには、経営層から現場の社員まで、ペルソナに基づく戦略のメリットを繰り返し説明することが理想的です。
4)定期的な見直しと更新
製品開発、営業企画、採用ミーティングなどで、ペルソナが現実のニーズに合致しているか確認し、必要に応じて更新を行うことが効果的です。
ペルソナは、顧客を深く理解し、効果的なマーケティング戦略を立てるための強力なツールです。しかし、ただ作るだけでは意味がありません。重要なのは、ペルソナを通じて顧客の視点に立ち、真のニーズを理解することです。そして忘れてはいけないのは、市場は常に変化しているということ。定期的にペルソナを見直し、更新することが大切です。
このブログでは、マーケティングや営業に役立つ記事を掲載しています。 他の記事も読み、ビジネスの参考にしてください。
執筆者
家電メーカー、石油会社、大型車両メーカー、高機能フィルムメーカー、建築部品メーカーなどに、新規事業立ち上げ・ブランド構築のコンサルティングと、顧客視点の顧客文化にするマーケティング社員研修を提供。 2013年より2024年まで、関西学院大学 経営戦略研究科で教授を務める。
著書は「売れない問題 解決の公式」(日本経済新聞出版)など国内外で24冊。米国、台湾、香港など海外でも講演。テレビ、ラジオの出演や新聞・雑誌への寄稿も多数。YouTubeでも最新のマーケティング情報を発信中。 本名 児玉洋典
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