マーケティング部門と営業部門の連携を強化するステップと6つの施策

◾️ 【経営者必見!】マーケティングと営業の連携の問題とは?
BtoB、法人ビジネスの経営者の方から、
「マーケティングが獲得したリードを営業が活用しない」とか、
「営業とマーケティングの目標がずれている」
といった悩みがあるのです、という相談をいただきます。
マーケティング部門と営業部門の連携に問題があると、売りの現場での機会損失につながります。
このような、マーケティングと営業のボタンのかけ違いをなくすには、何をすればいいか、について掘り下げていきます。
◾️ 営業とマーケティングの連携の問題が起こる3つの理由
「マーケティング部門が獲得したリードの質が低い」
「営業部門がマーケティング部門の意図を理解してくれない」
という課題感を、営業リーダー、マーケティングの責任者からよく聞きます。
マーケティングと営業はともに「顧客の獲得と維持」を目的にしているのに、なぜ多くの企業が、マーケティングと営業の連携に悩んでいるのでしょうか?
この問題の背景にある理由を3つほど挙げていきます。
コミュニケーション不足
まず1つ目はコミュニケーション不足です。
ある製造業の会社では、マーケティング部門が新製品のキャンペーンを企画しましたが、営業部門に相談せずに進めてしまいました。結果、営業現場のニーズとかけ離れたキャンペーンになり、効果が出ませんでした。明らかにコミュニケーション不足です
目標の不一致
お互いに、違う目標に行っちゃうこともあります。ITサービス企業では、マーケティング部門はリードがどれくらい取れるかっていう数を重視し、営業部門は成約率を上げるダメのセルストークを重視していました。マーケティングは量を追求し、営業は質を求めるという食い違いが生まれてしまいました
目的と手段の逆転
あるコンサルティング会社では、マーケティング部門が最新のSaaSのシステムを導入しました。しかし、このシステムを実装することによって得られることの説明がマーケティング部門からなかったため、営業部門はただ入力するだけに終わってしまいました。
システムの目的である「営業の生産性の向上」の共通認識の欠如からくる不一致です。
◾️ マーケティングと営業の役割を決める前の事前準備
これらの問題の理由は、マーケティング部門と営業部門が「お互いの役割や目標、課題を理解していない」ことにあります。だからといって「仲良くしよう」「わかり合おうよ」というような形だけ、表面だけでの協力ではうまくいきません。根本治療が必要なのです。
マーケティングと営業が1つの目標に向かい連携し合いながら相乗効果を出すには、以下のようなステップを踏むと効果的です。
- 市場の構造を理解すること
- 社内での営業とマーケティングの役割分担を明確にすること
- マーケティングの役割を決める
- 営業の役割を決める
1)市場構造:自社、競合と顧客
まず手をつけるべきは、営業とマーケティングの双方で市場の構造を再認識することから始めます。一見、遠回りに見えるかもしれませんが、このような当たり前のことが部署かんで共通の認識を持てていないことがよくあるのです。
この図は、市場を表しています。
市場には、自社と競合がそれぞれ、顧客にアプローチをする、という関係にあります。
これを、BtoBの場合、例えば建築のための部品や素材のメーカーの事例で説明します。
自社は、取引先の赤の顧客、商社や問屋など直接の顧客に納品します。そしてその部材を現場で使うのは、工事会社、ゼネコン、サブゼネコン、水道会社などの緑のエンドユーザーです。そして、エンドユーザーは必要に応じて赤の商社や問屋に注文する、という構造です。
自社や競合の営業は、この赤色の顧客から注文をもらうために営業をかけていきます。
多くの企業が見逃しがちなのですが、この構図で重要なのは「エンドユーザーにアプローチ」することです。営業が得意と自負する企業の多くは、直接の顧客との関係性を維持すれば注文が来る、と信じ込んでいる場合が大半です。
しかし、実際に自社の製品の需要は「エンドユーザーが生み出している」です。
関係性を維持、強化することは重要ですが、赤の顧客は自社の部品だけでなく競合の部品も扱っているので、似たような製品の1つとして認識されているのです。そして仕入れることはしますが、そこで販売、出荷されなければ在庫として残ってしまいます。
ここで視点を変えてみると、自社の製品を実際に使うエンドユーザーから「自社の製品がいい」と顧客の商社や問屋さんに注文が来るようにすれば、自然に売れていくことになります。したがって、この緑の「顧客の顧客」に価値を提供することが大事なのです。
こうなると、赤の顧客へのアプローチを営業がこれまでどおり行い、同時にエンドユーザーである「顧客の顧客」にマーケティングのアプローチをかけることによって、"選ばれる企業"になれるというわけです。
この構図を分かった上で「営業とマーケティングが何をすべきか」という役割分担をしていくことで、より実践的な営業活動につながっていくのです。
◾️ サプライチェーンから役割分担の全体像を作る
この図は、自社から顧客までどのように製品が流れていくかを表しています。製品は自社から、直接の取引先の顧客企業にいき、そこからエンドユーザーに行く、という流れです。
この過程の中で、マーケティングと営業が、それぞれどの顧客にどうやってアプローチするかというステップを説明します。
1 市場での顧客、自社、競合の動きを知る
まず、市場全体がどうなっているのか、顧客が求めているのは何か、市場の変化は?ライバルの動きは?を考えます。
2 営業戦略を立てる
次に、営業が動きやすく成約しやすい営業戦略を立てていきます。直接の顧客層が感じる価値は何か?自社の強みに響くのはどんな顧客なのか?自社全体を俯瞰した営業の戦略、方向性を決めて行きます。
3 個々の顧客への"戦略営業"を立てる
営業部門は、上記の会社全体の営業戦略に基づいて、個々の顧客企業に対してどうアプローチをするのか、という自分なりの戦略営業を考えます。
4 マーケティング部門がエンドユーザーへの戦略を立てる
マーケティング部門は、同時に「顧客の顧客」すなわちエンドユーザーへの価値創造を考えていきます。
先ほどの事例でも説明したように、直接の顧客である問屋や商社からすれば自社の製品は数ある中の1つに過ぎません。関係性が良くても、エンドユーザーに選ばれなければ売れません。エンドユーザーから「自社の製品がいい」と問屋に注文が来る流れを作るためにも、マーケティング部門がエンドユーザーの求めるニーズを分析しアプローチを立案するのです。
5 営業とマーケティングの連携の仕組み
もちろんここで終わりではなくて、顧客を最も知る営業が反応をマーケティングにフィードバックして、営業戦略をよりいいものにしていくことを仕組み化することが重要です。
◾️ マーケティングと営業を連携させる6つの施策
この構造を理解した上で、マーケティング部門と営業の具体的な役割分担、守備範囲を決めていきます。
マーケティング部門の役割:
マーケティング部門は、自社から見えづらいエンドユーザーの価値を定義して、自社に響くであろう潜在顧客を見込み顧客化していく役割を担います。具体的には以下のような役割になります。
- 潜在顧客層のターゲット像・ペルソナを決める
- その層にアプローチしリードを獲得する
- 見込み顧客として育てていく
- 確度の高い見込み顧客に絞る
- 営業に随時フィードバックし機が熟すタイミングで営業に引き継ぐ
例えば、ソフトウェア会社のマーケティング部門は、ウェビナーを開催してリードを獲得し、メールマーケティングでそのリードを育成するという具合です。
営業部門の役割:
営業は「顧客との関係構築」し「商談を通じて成約を得る」という顧客接点での主業務に加えて、マーケティングからの情報をもとに営業に出る前の「準備力」を高めます。
具体的には、マーケティング部門から以下のような準備をしてから営業に出向くことで成約率を高めていきます。
- 市場全体のニーズがどのように変わっているか
- 競合はどんな動きをしているか
- エンドユーザーの価値はどんなところにあるか
上記の情報を、商談に盛り込むことが顧客企業への付加価値になるので顧客からもありがたがられる存在になります。
また、新規顧客獲得の場合も、マーケティング部門が割り出してくる見込み顧客のニーズを把握した上でアプローチをしていきます。
同じソフトウェア会社の営業でいえば、マーケティングが育成したリードに対して直接コンタクトを取り、顧客のニーズを深掘りしながら商談を進めることで、成約の確度上げることができます。
◾️ マーケティングと営業を連携させる6つの施策
役割分担を明確にした上で、部門連携を進め相乗効果を出せるようにしていきます。
相乗効果を出せる連携の手法を紹介していきます。
1)共通のペルソナ作成
営業部門は顧客を熟知し、マーケティング部門は分析のプロです。この両者の強みを活かして、より精度の高いペルソナを作成することで、よりいいリードを取るなどの効果的なマーケティング施策につながります。
2)SLA(Service Level Agreement)の策定
両部門で合意した目標や基準を設定することで、お互いの役割が明確になり、協力体制が強化されます。この時気をつけるのは、SLAって作ってもその通りにいかないことが大半です。まあ当たり前ですよね。相手の顧客も人間なので、予測してないことが起きるのは当然です。だから、SLA通りにやる、のではなくてSLAは単なるガイドラインで、ここからはずれて当たり前、その時は打ち合わせ用、っておい取り決めにしておくのがいいです
3)共通KPIの設定
両部門が同じ指標で評価されることが大事です。一体感も生まれるし、全体的なパフォーマンスも上がり。この時に大事なのは、数字だけじゃなくて、中身のKPI、例えばどんな仮説を立てるのか?商談はどうすればいいのか?という具合です。
4)定期的な情報共有会の開催
営業とマーケティングが直接顔を合わせて議論できる場を設けることで、相互理解を深めます。例えば、以下のような内容を共有します。
- マーケティング部門からの最新キャンペーンや市場調査結果の報告
- 営業部門からの顧客フィードバックや現場での課題共有
- 両部門での成功事例や失敗事例の振り返り
これにより、施策の方向性が一致し、改善点を迅速に見つけることが可能になります。
5) 共同プロジェクトチームの発足
特定の製品やキャンペーンに対して、営業とマーケティングが共同でプロジェクトチームを組む仕組みを導入します。例えば、以下のようなケースです。
- 新製品ローンチ時に共同で戦略を策定
- マーケティングがリード獲得から育成までを担当し、営業が商談化に注力するプロセス設計
これにより、両部門が同じ目標に向かって協力しやすくなり、一体感が生まれます。
6) ツールやデータの統合と活用
CRM(顧客管理システム)やMA(マーケティングオートメーション)ツールを活用し、両部門が同じデータ基盤で活動できる環境を整えます。具体的には:
- リード情報や顧客データをリアルタイムで共有
- 営業活動とマーケティング施策の効果測定を一元化
- データ分析結果に基づいて次のアクションを共同で決定
これにより、無駄な作業が減り、効率的な連携が可能になります。
これらの施策は、それぞれ単独でも効果がありますが、組み合わせて実施することでさらに強力な相乗効果が期待できます。
製造業での連携の事例
ある製造業の会社では、マーケティング部門と営業部門が週1回の定例ミーティングを始めました。マーケティングはキャンペーンの進捗を報告し、営業は現場のフィードバックを共有します。この取り組みにより、6ヶ月で新規顧客獲得数が30%増加したんです。
また、別のITサービス企業では、両部門で「顧客生涯価値」という共通KPIを設定しました。その結果、短期的な数字だけでなく、長期的な顧客関係構築にフォーカスするようになり、1年で顧客満足度が20%向上しました。
マーケティング部門と営業部門の違いを理解し、お互いの強みを活かすことが重要だということです。定期的なコミュニケーション、共通の目標設定、そして相互理解を深めることで、驚くほどの成果が生まれる可能性があるんです。
皆さんの会社では、マーケティングと営業の連携はどうですか?今日お話しした内容を参考に、ぜひ新しい取り組みを始めてみてください。
このブログでは、マーケティングや営業に役立つ記事を掲載しています。 他の記事も読み、ビジネスの参考にしてください。
執筆者
家電メーカー、石油会社、大型車両メーカー、高機能フィルムメーカー、建築部品メーカーなどに、新規事業立ち上げ・ブランド構築のコンサルティングと、顧客視点の顧客文化にするマーケティング社員研修を提供。 2013年より2024年まで、関西学院大学 経営戦略研究科で教授を務める。
著書は「売れない問題 解決の公式」(日本経済新聞出版)など国内外で24冊。米国、台湾、香港など海外でも講演。テレビ、ラジオの出演や新聞・雑誌への寄稿も多数。YouTubeでも最新のマーケティング情報を発信中。 本名 児玉洋典
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