本来のマーケティングとは?:マーケティングの誤解かを解き社内に浸透させるステップ

◾️ 【経営者必見!】本来のマーケティングとは?

マーケティングとは何をすることでしょうか?」という問いに、多くの人は様々な答えを返すでしょう。

多くの人はマーケティングを広告や宣伝、WebサイトやSNSでのプロモーションと捉えています。しかし、これはマーケティングの一部に過ぎません。また、マーケティングは専門家だけが扱う特別なものだと思われがちです。これらの誤解は、マーケティングの範囲が広く、特定の活動が強調されがちなこと、情報過多で正確な情報が伝わりにくいこと、成果を数字で評価しにくいこと、企業内でのマーケティング担当者の役割が限定的であることなどが原因です。

目次
  1. ◾️ 【経営者必見!】本来のマーケティングとは?
  2. ◾️ 本来のマーケティングと誤解
  3. ◾️ マーケティングが誤解される理由
  4. ◾️ 本来のマーケティングを導入するために
  5. ◾️ 本来のマーケティングができる企業になるには
  6. ◾️ まとめ

◾️ 本来のマーケティングと誤解

マーケティングの誤解.001.png

市場が複雑になることに伴って、マーケティングが重要だと考える企業も増えています。一方で、マーケティング部門を作ったのに、
「効果が出せない」
「投資対効果が見えない」
と悩む経営者も少なくありません。

この背景には「マーケティングが "誤解"されている」ことがあります。
「マーケティングとは何をやることですか?」という問いに対して、以下のような答えが返ってくるのです。

  • 広告や宣伝で商品を売り込むことだ
  • 市場調査やアンケートをやること
  • デジタルマーケティングやS N Sをやること
  • DMなどの販促物を作ること
  • 営業のサポート役

本来のマーケティングとは「正しい顧客に、期待を超える製品やサービスを提供するためにし、顧客にコミュニケーションをする」ことです。

中心になるのは"顧客"です、しかし上記の答えには顧客が不在なのです。

◾️ マーケティングが誤解される理由

本来のマーケティングが正しく理解されず、誤解されてしまう理由を考えてみましょう。

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マーケティング活動の一部が強調されがち 

近年、デジタルマーケティングやS N Sマーケティングなど、目に見える販売促進の活動が注目されています。しかし、本来のマーケティングは、これらの活動だけではない、広い範囲を含みます。

マーケティングに関する情報が多すぎる 

書籍やインターネット上には、マーケティングに関する情報が溢れています。しかし、その中には、誤った情報や、特定のツールや手法に偏った情報も多く含まれています。

マーケティングの成果の定量的評価が難しい 

マーケティングの目的の1つは収益の向上です。しかし、マーケティング"活動"の成果は、必ずしも売上や利益という形で表れるわけではありません。そのため、その効果を、数字で定量的に評価することが難しいため、誤解が生じやすいのです。

社内のマーケティングの役割

企業内でのマーケティング担当者の役割が、営業サポートとか販促物の作成、ホームページのコーディネーターなど実務のみの担当をする場合が多いのも事実です。

マーケティングを誤解したままビジネスすることは、事前情報やコンパスなしで地図だけで登山に行くようなものです。地図には目的地も書いてあり道のりもわかります。しかし、事前に天気の予想や準備、そして行ってからも方向がわかるコンパスがないと、道に迷ってしまいます。

同じように、本来マーケティングでやることの一部だけをやることは、顧客ニーズに合っていない製品やサービスを提案してしまったり間違った顧客像にアプローチして、本来目指す顧客層にリーチできなかったりするのです。

◾️ 本来のマーケティングを導入するために

このような誤解を解き、本来のマーケティングを理解するために、カテゴリー別に比較しながら説明します。

マーケティングの誤解と本来の姿.003.png

目的:

マーケティングの目的は、売り込むことではなく、顧客に価値を提供することです。そのために"売れる仕組み"を構築します。

具体的には以下の3つの戦略を立て実践することです

  • 何を:自社だけが提供できる独自価値のある"選ばれる"プロダクト
  • 誰に:既存顧客と未顧客(=ターゲット層)に届ける
  • どうやって:顧客層と双方向のコミュニケーションをとる

マーケティングの実務=やること:

実務として、WebサイトやSNSなどのデジタルマーケティングや、D M作成、市場調査もやります。

しかし、事前準備として分析をし、市場機会を探り、どう攻略を立てるかという戦略を練ることが重要です。戦略が正しければ正しいほど、打ち手が当たるからです。

準備、戦略を考えたら実際に動く、その手法がWebやSNS、DMやチラシなのです。

マーケティングの効果:

マーケティング活動の結果としての効果は多様です。短期的に売り上げを上げることは、マーケティング全体の効果ではなく"販売促進"や"営業活動"の効果です。

顧客が、購入したり契約する前に必要なブランディングをしている間は、直接的な売り上げにはなりません。しかし、顧客が自社製品の存在をしり深く理解すると、商談や販売促進の時の"選ばれる理由"につながります。

このような、直接的に数字に現れない"質的"な中身の効果を「中長期的」に上げていくこともマーケティングの重要な役割なのです。

マーケティングを誰がやるのか?:

こう考えてくると、マーケティングをやるのはマーケティング部門だけではないことが見えてきます。

高機能カメラの製造業の事例で考えてみましょう。

開発部門のエンジニアは上層部から「A Iを使って顧客のためになるソフトを開発せよ」という方針を受け取りました。カメラもハードだけでなく、動かすソフトウエアが必要だからです。もちろんA Iの知識や技術も必要ですが、重要な仕事は「A Iで顧客ニーズを実現する」ことです。自社技術とニーズを同時に考えることが必須になるのです。

このように、設計や開発部門もマーケティングの全体像を理解しておくことが重要です。

同じように、販売店に営業をする部門も、自社の製品の差別化ポイントとターゲット層のニーズを理解した上で商談をすることで成約率を上げることができます。

経理や財務部門も、キャンペーン時の長期的な費用対効果を考えることができれば、ブランド構築にかかる費用を"コストではなく投資"だと理解できます。

マーケティング部門は、会社全体をリードしながら、顧客のためになる製品やサービスを世に出していくのです。

マーケティングがお客様価値を生むこと、がわかっていることって大事なのです。

◾️ 本来のマーケティングができる企業になるには

マーケティングの誤解を解き、会社として本来のマーケティングを実践するには、以下のステップを踏むことが重要です。これにより、社員全員がマーケティングを「売れる仕組みづくり」として正しく理解し、企業全体で顧客価値の創造に取り組めるようになります。

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1)社員全員でのマーケティングの共通認識をつくる

本来のマーケティングの目的を、社員全員が理解することが先決です。
マーケティングは手法ではなく"事業戦略"です。会社としての取り組みということを、経営陣から社内に浸透させていくのです。

リーダーシップの発揮:

経営者がマーケティングの重要性を理解し、全社的な取り組みとして推進することが鍵です。

本質の理解:

マーケティングとは「顧客価値を創造し、売れる仕組みを構築すること」であり、単なる広告や調査ではないことを伝えます

全社的な認識の統一:

部門や職種に関係なく、すべての社員がマーケティングに貢献しているという視点を共有します。たとえば、営業は顧客との接点で価値を伝え、開発部門は顧客のニーズを形にする役割といった内容です。

2)マーケティング活動の目的と役割を明確化

具体的なゴールを設定して、会社としてのビジョン=目指すところを示します。

目的の再定義:

「マーケティングの目的は売り込むことではなく、顧客が喜ぶ価値を生むこと」であると改めて明確化します。

部門ごとの役割の設定:

部門ごとに、マーケティング的にどのような活動をするといいのか?を具体化するといいでしょう。

  • マーケティング部:市場調査、顧客ニーズの分析、戦略の策定。
  • 営業部:顧客との接点を活かし、マーケティング戦略を実践する。
  • 開発部門:顧客ニーズを満たす製品やサービスを設計する。
  • 経理・財務部門:マーケティング活動の費用対効果を評価し、適切な資金配分を行う。

製造業の事例:

大型車両を生産している製造業では、以下のような役割分担にすることで効果を出しています。

  • マーケティング部門:新規顧客獲得を担当〜市場の未顧客の探索、リード獲得、ターゲット層を啓蒙し、営業部門に渡す
  • 経営企画部門:広報を担当し、認知度とイメージを上げる〜S N Sやホームページ、P Rによって営業の成約率アップや採用に活かす
  • 営業部門:既存顧客への質の高い提案とリピートに集中〜新規顧客はマーケティング部からのホットなリードを引き継ぐ
  • サービス部門:自社のみでなく他社のロードサービスや整備、部品販売も手がける〜自社サービスのブランドイメージ向上だけではなく、他社からの乗り換えによる営業の新規顧客獲得にも貢献

3) 実践を通じた学習と経験の共有

マーケティングの考え方やフレームワークの習得に加えて、実際のプロジェクトを通じて学ぶ環境を作ります。

マーケティングの全体プロセスを理解&体験する:

調査、分析、戦略立案、実施、効果測定まで"マーケティングの一連の流れ"を社員に経験させることで、理論を実践に結びつける下地を作ります。

集合研修では、理論やフレームワークと事例をセットで学ぶことです。これにより、フレームワークを自社に当てはめるには何をするといいのか?と考える習慣が定着するのです。

社員教育の設計については以下の記事で説明しているので参考にしてください。
→ 成果を出せる社員教育の設計方法:営業やマーケティングの社員研修は知識ではなく知恵を重視

継続的なトレーニングと外部の知見の活用:

最新のマーケティング手法やトレンドを常に学び、アップデートします。
外部の知見の導入も効果的です。マーケティングコンサルタントや専門家を活用して、最新のトレンドや具体的な改善案を取り入れます。

成功事例の共有:

学びを実務に活かすには「社員が自分ごととしてマーケティングを捉えること」が必須です。

自社や他社の成功事例を定期的に学び、その方法論を分析して応用します。成功体験を共有することで、マーケティング活動への理解とモチベーションを高めます。

4)効果測定の仕組み化

マーケティングの成果を定量的・定性的に評価し、継続的に改善します。

KPI(重要業績評価指標)を設定する:

短期的な指標:売上増加、リード獲得数、顧客獲得コスト(CAC)など。
長期的な指標:ブランド認知度、顧客満足度、ライフタイムバリュー(LTV)など。

成果の「見える化」:

数字やレポートで成果を明確にし、マーケティング活動が経営にどう寄与しているかを全社に共有します。

5)マーケティング文化を企業に根付かせる

単なる手法としてではなく、企業文化としてマーケティングを浸透させます。

顧客視点の企業文化を形成:

顧客の課題解決や価値提供を最優先に考える文化を育みます。
社内の会話や会議で「顧客視点」を基準に意思決定を行うよう促します。

失敗を学びに変える仕組み:

マーケティング活動での失敗を責めるのではなく、学びとして次の改善に活かす仕組みを作ります。

全社的な協力体制を築く:

マーケティング部門だけでなく、すべての部門が連携し、顧客価値の創造に向けて協力します。

部門間の連携を強化:

各部門が自分たちの役割を認識し、協力しながらマーケティング活動を推進します。

◾️ まとめ

この記事では、マーケティングに対するよくある誤解と、それを解く方法について説明しました。

マーケティングは単なる広告や調査ではなく、また売り込むのでもなく、自然に売れる仕組みを作ることが本来の目的です。そのためには、社員全員がマーケティングの本質を理解し、顧客価値を中心に考える企業文化を作ることが必要です。そして、成功には戦略の明確化と全社的な協力が欠かせません。

マーケティングを正しく理解し実践することで、これまで以上に顧客から選ばれる存在になれるはずです。この記事をきっかけに、社内でマーケティングについて話し合ってみる、など最初の一歩を踏み出してください。

この記事については以下の動画でも説明しています。参考にしてください。

執筆者

マーケティングアイズ株式会社 代表取締役 理央 周(りおう めぐる)
石油会社、家電メーカー、大型車両メーカーなどに、新規事業立ち上げ・ブランド構築のコンサルティングと、法人営業にマーケティングを注入する社員研修を提供。 2013年より2023年まで、関西学院大学 経営戦略研究科で教授を務める。
著書は「売れない問題 解決の公式」(日本経済新聞出版)など国内外で23冊。米国、台湾、香港など海外でも講演。テレビ、ラジオの出演や新聞・雑誌への寄稿も多数。YouTubeでも最新のマーケティング情報を発信中。 本名 児玉洋典 

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