インサイドセールスを成功に導くマーケティング的戦略の立て方と構築ステップ

◾️ 【営業リーダー必見!】 インサイドセールスを成功させるには?
- 目次
- インサイドセールスに力を入れているにも関わらず、多くの企業で成果が出ていない
- インサイドセールスが売上に繋がらない
- インサイドセールスが会社の成長に貢献しているという実感がない
コロナ禍以降、重要だと言われているインサイドセールスを導入する企業が増えた一方で、上記のような問題を抱える企業も少なくありません。
なぜ、こんなにもインサイドセールスがうまくいかないのでしょうか?
1つの原因は、インサイドセールス自体が誤解されているからです。
インサイドセールスとは、直訳すると「内部での営業」、すなわちリアルな商談ではなく、オフィスにいながらにして営業をする、という意味です。
「接点があった顧客にアプローチをして、商談につなげる」ことが目的です。
具体的には、オンラインでの問い合わせや展示会で名刺交換をした顧客候補、いわゆる"リード""引き合い"、にアプローチをして商談に繋げることを目指します。
このプロセスにおいて、顧客を訪問したり、電話をかけまくったりするという従来の営業スタイルではなく、メールやチャット、ビデオ会議などを活用して、顧客との関係を構築していき商談に繋げるのです。
◾️ インサイドセールスが重要な理由
インサイドセールスが重要な理由を、顧客側と企業側の視点で説明します。
顧客側にとってのメリットは、顧客体験が向上することです。
基本的に顧客は、いつでもどこでも自分のペースで情報を収集したいと考えています。顧客のニーズに合わせた情報を、適切なタイミングでインサイドセールスによって提供されてば、顧客が情報を探す手間が省けるという顧客体験が上がるのです。
インサイドセールスを仕掛ける企業側は、営業生産性が上がります。 営業が訪問をせずにメールや電話などで情報提供ができます。また、営業担当者が商談に行く前に顧客に有益な情報を提供することで、より商談に集中できるようになり、高度な商談ができるようになります。もちろん、移動費や交際費など、従来の営業活動にかかっていたコストを削減もできます。
◾️なぜインサイドセールスがうまくいかないのか?
効果的なインサイドセールスは、このように顧客にも企業にもメリットがあります。ではなぜ、うまくいかないことが多いのでしょうか?セールススキルや数字の分析などのテクニックに問題があることもありますが、インサイドセールスの本質を理解していないために失敗するケースが多いのです。
ここでインサイドセールスを導入して、失敗した事例と成功した事例を紹介します。
失敗事例
A社では、フィールドセールスが訪問できない間に、見込み顧客に電話をかけ続けましたが、興味を持ってもらえませんでした。電話で提供する情報が顧客のニーズとマッチしていない一方的な商品説明だったためです。時間泥棒のような無駄な電話に、顧客はストレスを感じ、商談の進展が止まってしまいました。
成功事例
1) パーソナライズ
一方で、B社では、インサイドセールスチームが顧客ごとにパーソナライズされた情報提供を実施しました。具体的には、顧客の業界トレンドや課題に特化したホワイトペーパーをメールで共有し、適切なタイミングでウェビナーを開催しました。このアプローチにより、顧客の信頼を獲得し、商談の成約率が30%向上しました。
2) マーケティングオートメーション
C社では、顧客がウェブサイトを閲覧した履歴や資料をダウンロードした行動履歴に基づいて、最適な情報を自動で配信するマーケティングオートメーションを導入しました。顧客の興味や関心に合わせたコンテンツを段階的に提供し、商談につなげるリードナーチャリングを実施しフィールド営業の成約率を上げました。
3) 顧客エンゲージメントの向上
D社は、AIを使った自動応答のチャットボットやメールマガジンを活用し、顧客とのコミュニケーションを活性化して成約につなげました。
4) フィールドセールスとの連携によるシームレスな顧客体験
情報共有の仕組み作り
CRMシステムなどを活用し、インサイドセールスとフィールドセールスがリアルタイムで情報を共有しました。
同時に、インサイドセールスは顧客との最初の接点、フィールドセールスはクロージングを担当するなど、明確な役割分担を行いました。
5) 顧客が自ら情報を検索できる環境の整備
FAQページを充実させ、顧客が抱える「よくある質問」に対して、分かりやすい回答を用意しました。商品やサービスに関する情報を体系的に整理し、ナレッジベースの構築することで、顧客が自由に検索できるようにもしました。
また、コミュニティフォーラムという、顧客同士が情報交換できる場を提供しました。
インサイドセールスは、フィールド営業の訪問の合間に電話したりすることではなく、フィールドセールスがいかない間の時間にも有益な情報を提供することだというのがわかる事例です。
繰り返しますが、インサイドセールスは、フィールド営業の補助的な役割ではなく、顧客との継続的な関係構築を担う重要な役割なのです。
◾️ インサイドセールス成功の鍵
この成功と失敗の2つの事例の違いは何でしょうか?
出発点が違うのです。
この図は、ファネルと呼ばれる顧客獲得のフレームワークです。図にある三角形の左から、1)新規顧客を開拓し、2)とった引き合い(=リード、顧客候補)を啓蒙し自社をだんだん理解してもらいます。3)そして商談をセットして、4)契約に至る、という考え方です。
開拓のステージでは、顧客の現状を知り、商談に至るようにするために、有益な情報を提供して、気が熟したらアポを取ります。フィールド営業は、リードを受けとったら商談で提案、契約に至るまで納期や条件を交渉します。
従来は、1人の営業がやっていたこのプロセスを、前半にインサイドセールスを入れて、商談に行くところでフィールド営業にバトンタッチをする、という仕組みです。
顧客中心の視点で、顧客ニーズに応えるための情報を提供することで、顧客との信頼関係を作りながらフィールド営業にバトンを渡すのです。
この時に重要なのが、仕組みを考える"順番"です。
まず考えるべきは、セールストークとかインサイドセールスのやり方ではなく、顧客の成功とは何か?いわゆるカスタマーサクセス、です。そこから逆算して、インサイドセールスでは何をすべきか?という順序で組み立てるのです。
インサイドセールスの手法や組織編成から考えるのではなく、顧客にとって価値になることは何か?から始めないと成果が出ないのです。インサイドセールスは、手段であって目的ではありません。
営業の目的は「顧客の成功」すなわち「カスタマーサクセスの実現」なのです。
◾️ インサイドセールスを成功させるポイント
これらの事例からも分かるように、インサイドセールスは単なる業務ではなく、顧客との関係性を深め、企業の成長に貢献する重要な事業戦略の1つです。また、顧客を中心に考える視点を持ってインサイドセールスに取り組むことで、大きな成果を期待できるでしょう。
インサイドセールスを成功させるためのポイントをいくつか紹介します。
顧客の視点に立つ:
顧客が求めているものは何か、常に考え行動することが効果的です。そのためには、売り込み型の営業マインドを排除し、「顧客の課題解決をどう支援するか」というマインドセットを持つことが重要です。
チームワークの強化:
フィールドセールスとの連携を密にし、共通の目標に向かって協力します。同時に、マーケティングとの連携し、一貫した顧客体験を提供する必要もあります。
データに基づいた意思決定と適切なツールやシステム:
インサイドセールスで成果を上げるには、CRMやマーケティングオートメーションなどのツールでの効率化が必要です。顧客データ分析を行い、客観的で効果的な施策を立案する役に立てましょう。
継続的な改善:
インサイドセールスは導入して終わりではありません。むしろ導入してからが始まりなのです。定期的に成果を評価し、改善点を洗い出すことを繰り返しましょう。
◾️ 成果を出せるインサイドセールスの導入ステップ
インサイドセールスを成功させるには、企業の事業戦略として位置付け、段階的に導入していくのが効果的です。その導入のステップを紹介します。
1.事業戦略として位置付ける
まずは、経営層の理解とコミットメントを社内に周知させることが肝要です。
インサイドセールスが企業の成長に貢献できるという重要性とその理由を、具体的なデータや事例を交えて説明します。
具体的な目標を明確にし、人材、予算、ツールなど、インサイドセールスに必要なリソースを確保します。
2. 組織設計と役割分担
専用チームの設置:
インサイドセールス専用のチームを設け、責任者を任命します。
役割分担の明確化:
インサイドセールス、フィールドセールス、マーケティング部門それぞれの役割を明確にし、連携を強化します。
KPIの設定:
各メンバーの目標を数値化し、定期的に進捗状況を評価します。
3. 顧客理解とペルソナ作成
顧客データを収集・分析し、既存顧客や見込み顧客のデータを収集し、共通点や相違点を分析します。
顧客ペルソナの作成が効果的です。理想的な顧客像を具体的に描き出し、ターゲットを絞り込みます。ペルソナに基づき、顧客ジャーニーマップを作成します。顧客が製品やサービスを購入するまでのプロセスを可視化し、顧客の行動を予測します。
カスタマージャーニーの作成については以下の記事で紹介していますので参考にしてください。
→ カスタマージャーニーの作り方〜成果を出す作成ステップ、仮説の立て方、作成のポイント
4. インサイドセールスプロセス設計
上記の戦略を明確にした段階で、ここで初めて戦術を立てていきます。
リードジェネレーション〜引き合いの獲得:
ウェブサイト、SNS、セミナーなどを通じて見込み顧客を獲得します。
リードナーチャリング〜引き合いを啓蒙:
見込み顧客の興味や関心に合わせたコンテンツを提供し、購買意欲を高めます。
商談設定:
フィールドセールスとの連携のもと、商談の設定の仕組みを構築します。この時に、成約後のアフターフォローまで設計しておき、顧客満足度向上に努めます。
5. ツール導入と活用
上記のプロセスに以下のようなツールを活用し、効率化を目指します。
- CRM: 顧客情報を一元管理し、効率的な営業活動を実現します。
- マーケティングオートメーション: 自動化されたマーケティング施策を実行し、生産性を向上させます。
- 電話システム: 通話記録や顧客とのやり取りを記録し、分析します。
- 動画会議システム: 遠隔地との商談をスムーズに行います。
- コンテンツマーケティング:ブログ記事: 顧客の悩みや課題を解決するような記事を作成し、SEO対策も行います。ホワイトペーパーのような、専門的な知識を提供し、見込み顧客の信頼を獲得します。
- ウェビナー: 顧客候補と双方向でオンタイムにコミュニケーションができる、オンラインセミナーを開催し、顧客との交流を深めます。
6. トレーニングと教育
人材トレーニングにおいて、セールススキルアップも大事ですが、まずは顧客視点、マーケティングの一環という理解を浸透させます。
その後、 実践的なトレーニングで、ロープレなどの営業スキルを磨きます。特に、フ重要なのが定期的にフィードバックによる改善の習慣化です。
インサイドセールスは、単なる電話営業ではなく、企業の成長戦略として重要な役割を担います。上記のステップを踏むことで、インサイドセールスを成功させ、企業の売上向上に貢献することができます。
◾️ まとめ
インサイドセールスは、企業の成長に不可欠な要素です。 しかし、単にツールを導入したり、プロセスを定型化したりするだけでは、成功はできません。 顧客中心の視点で、マーケティングとの連携を強化し、チーム全体で一丸となって取り組むことが重要なのです。
この記事については以下の動画でも説明していますので参考にしてください。
執筆者
石油会社、家電メーカー、大型車両メーカーなどに、新規事業立ち上げ・ブランド構築のコンサルティングと、法人営業にマーケティングを注入する社員研修を提供。 2013年より2023年まで、関西学院大学 経営戦略研究科で教授を務める。
著書は「売れない問題 解決の公式」(日本経済新聞出版)など国内外で23冊。米国、台湾、香港など海外でも講演。テレビ、ラジオの出演や新聞・雑誌への寄稿も多数。YouTubeでも最新のマーケティング情報を発信中。 本名 児玉洋典
インサイドセールスを軌道に乗せたい・導入したい、新規顧客を獲得したい、営業チームを活性化させたい、など、
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