【図解と事例で解説!】差別化に効くラテラルマーケティングとは〜ロジカルシンキングとの比較
◾️ 【営業リーダー必見!】差別化に活かせるラテラルシンキングとは?
売上と利益がジリジリ下がってきたので、「他社との差別化をしようとしている」
しかし「いつも同じような発想しか出てこない」と悩むことも多いと思います。
思ったように売れない時や、アイディアに行き詰まった時には、発想を変えてみるといいのです。しかし、いきなり新しい発想を出そうとしても「そうは言っても難しい」というのが現実です。
新しい発想を生むための「水平思考」という考え方を用いた"ラテラルマーケティング"を紹介します。このアプローチは、他者との差別化を図る上でも有効な考え方です。
差別化については以下の記事で詳しく説明していますので参考にしてください。
【差別化とは?】利益を上げるための差別化戦略と手法:競争優位の戦略を作ろう
この記事の内容は以下の通りです。
- ラテラルシンキング・水平思考とは?
- ラテラルシンキングとロジカルシンキングの違い
- ラテラルマーケティングの事例:コカコーラ、コンビニ、シリアルバー
- マーケティング活動に水平思考を活かすには
◾️ ラテラルマーケティング〜コカコーラの事例
ターゲットを絞る、売れる筋商品に絞るなど、マーケティングの考え方は、経営資源を有効に使うために効率を求めます。
よく使われるマーケティングのフレームワークは、合理的に効率を求めるロジカルシンキングでのアプローチが中心です。データ分析、顧客セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニング(STP)などが、ロジカルシンキングでのアプローチです。
このロジカルシンキングを用いたマーケティング戦略の立て方を、コカコーラの新製品開発の事例に当てはめて説明します。
新製品の市場導入のマーケティングではまず、
- 【市場の定義】攻める市場を定義します。この場合だと、清涼飲料水の市場です。
- 【顧客ニーズ】その市場の中でどのような顧客ニーズをより具体的に定義します。例えば、健康志向やグルメを求める人たちなどです
- 【細分化:セグメンテーション】そういう人々はどんな属性なのかと、年齢や性別、地域などにより細分化していきます。例えば20代都心に住む女性会社員といった具合です。
- 【ポジショニング】競合他社と比較しつつ市場での立ち位置=ポジショニングを決めていきます。
- 【製品開発】上記をもとにして新製品を開発していくのです。
ロジカルシンキングを用いて、徐々に絞っていく、すなわち不要な部分を削ぎ落としていき、重要なことに集中していくので、この図のように、逆三角形のようになるのです。上から下に行くので、垂直思考と呼んだりします
◾️ なぜラテラルマーケティングが必要なのか?ロジカルシンキングの限界
ロジカルシンキングは、マーケティング戦略を立てる上でとても大事ですが、ロジカルシンキングだけだと限界があるのです。なぜなら、削ぎ落とした逆三角形の両端のところに、例えば"男性""30代""アウトドア思考""ファッション好き"など「もしかすると存在するかもしれない売れるチャンス」を見逃すことになるかもしれないからです。
そこで、たまにロジカルシンキングで削ぎ落とした部分に注目してみることを、ラテラルシンキング(=水平思考)といいます。
この水平思考をマーケティングに用いて、新しい発想を生み出すことを、ラテラルマーケティングと呼ぶのです。
既存の枠組みや決まりきったパターンにとらわれず、新しい視点から問題を見つめ直していく、というアプローチです。
◾️ ロジカルシンキングとラテラルシンキングの比較
ロジカルシンキングとラテラルシンキングを登山に例えてみます。
ロジカルシンキングは、山頂までの安全なルートを示す登山道です。
経験豊富な登山者によって整備されているから、登山者は、登山道を登ることで、確実に山頂へとたどり着くことができます。
ロジカルシンキングも同様に、確実性と論理性を重視します。
論理的に考え、正しい手順を踏むことで、目標達成の可能性を高めることができます。
一方、ラテラルシンキングは、登山における登山道ではない道です。
険しく危険な場所もありますが、誰も見たことのない景色や、思いがけない発見がある場所でもあります。
このような道を上手く利用することで、より早く山頂にたどり着けたり、新しいルートを発見したりすることができます。
ラテラルシンキングも同様に、固定観念にとらわれず、自由な発想を重視します。常識や過去の経験にとらわれず、様々な角度から物事を考えることで、新しいアイデアを生み出すことができます。
マーケティング活動では、状況に応じてロジカルシンキングとラテラルシンキングを使い分けることができると効果的です。
例えば、既存の課題を解決する必要がある場合は、ロジカルシンキングが有効ですし、新しいアイデアを生み出す必要がある場合は、ラテラルシンキングが有効なのです。
◾️ ラテラルマーケティングの活用事例
ラテラルマーケティングの活用事例をいくつか紹介します。
コンビニエンスストア
コンビニでは、限られたスペースでユーザーの需要を満たせる"必要最低限の商品"を置きます。しかし、売れ筋ばかりだと各社が似たり寄ったりの商品ラインアップになり、差別化ができません。
そこで、原点に立ち返り商品を売る場から「ユーザーにとって便利な体験を提供する場所」でできることは何かを考えたのです。この時に、宅急便の受け取り、公共料金の支払い、銀行のATMなどが追加されました。
コンビニエンスストアは、ラテラルマーケティングとして「顧客の使い道」「用途」を追加したのです。
これらの追加サービスにより、コンビニに立ち寄る回数も増え、ついで買いも増えるので売上増にも繋がります。
シリアルバー
グラノラバーのような、シリアルバーは、コーンフレークを固めた製品です。これにより、それまで朝食に食べるだけだったのコーンフレークを、ユーザーは、おやつなどの間食に食べることが増えて、売り伸ば死につながりました。
シリアルバーは、ラテラルマーケティングで顧客が食べる「状況」を追加したのです。
上記の事例とラテラルマーケティングについては、フィリップ・コトラー氏の「コトラーのマーケティング思考法 」に詳しく書かれているので参考にしてください。
◾️ ロジカルシンキングとラテラルシンキングの比較
この、ロジカルシンキングとラテラルシンキングを比較をまとめておきます。
ロジカルシンキング
ロジカルシンキングは、論理的かつ体系的なアプローチをします。多くの場合は、データと事実に基づいて考えていくので、問題解決に向いています。
メリットは、データに基づくため信頼性が高く、予測可能な結果を得やすいいし、計画立案にも有効です。
一方で、既存の枠組みにとらわれやすいため、革新的なアイデアが出にくいこと、そして変化に対応しにくいことが難点です。
ラテラルシンキング
一方で、ラテラルシンキングは、創造的で非線形的なアプローチを取ります。そのため、既存の枠を超えた発想が生まれるので、新しい視点から問題を捉えることに適しています。
メリットは、革新的なアイデアが生まれる可能性が高いこと、柔軟な問題解決が可能であること、したがって、差別ポイントを生め、競争優位を築きやすいことが挙げられます。
しかし、デメリットとして、実現性が見えにくい場合があるので、計画の具体性に欠けることがあります。ともなって、リスク=不確実性が高い可能性があります。
◾️ ラテラルマーケテティング実践のヒントと具体例
新しい市場や未知の顧客ニーズを発見するには、論理的な枠を超えた思考、すなわちラテラルマーケテが必要です。ここで役立つのが、水平思考です。
最後に水平思考をするヒントをいくつか紹介します。
固定観念を外す
今までの経験や過去の成功体験にとらわれないようにする。課題に取り組むときに、5W1Hや論理思考だけでなく、「なぜそうなるのか?」「その後はどうなる?」といった、事実の深掘りをするための質問を繰り返すことで本当の解決策に到達できます。
顧客と対話する
単純に顧客にアンケートをするという意味ではなく、顧客とリアルタイムに双方向で対話をすることが有効です。具体的には、フォーカスグループインタビューを通じて顧客の声を聞くとか、ソーシャルメディアでの反応を見てみる、製品やサービスの顧客からの使用体験のフィードバックにヒントを得る、などです。
連想してみる
問題や課題の直結していることだけではなく、その周辺にあるニーズやできることを"連想する"のも効果的です。
ブレーンストーミングやマインドマップなどをチームでやってみる、などが効果的です。
厳しい市場で差別化をすることは簡単ではありません。顧客が何を求めているのか、他者が未だやっていなくて自社でできることは何か?を深掘りしていくのに有効なラテラルマーケティング、ぜひ実践してください。
執筆者
石油会社、家電メーカー、大型車両メーカーなどに、新規事業立ち上げ・ブランド構築のコンサルティングと、法人営業にマーケティングを注入する社員研修を提供。 2013年より2023年まで、関西学院大学 経営戦略研究科で教授を務める。
著書は「売れない問題 解決の公式」(日本経済新聞出版)など国内外で23冊。米国、台湾、香港など海外でも講演。テレビ、ラジオの出演や新聞・雑誌への寄稿も多数。YouTubeでも最新のマーケティング情報を発信中。 本名 児玉洋典
差別化して価格競争から抜け出したい、新規事業を立ち上げたい、新しいビジネスを軌道に乗せたい、など、
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