【図解と事例!】戦略と戦術の違いとは?経営資源を最適化するマーケティング施策の構築ステップ

◾️ 【マーケティング初級者必見!】戦略と戦術の違いとは?

マーケティングは、企業が事業を行うための重要な戦略の1つです。
では、戦略とは何でしょうか?
戦術と戦術は何が違うのでしょうか?

戦略と戦術の二つをごっちゃにしてしまうと、どんなに良い製品やサービス、アイデアがあっても成果が上りません。逆に、戦略と戦術をうまく使い分けることができれば、成果が出せるようになるのです。

この記事では、以下について説明をしていきます。

  • 戦略と戦術の違いとは?
  • 戦略の事例:消費財の新製品導入のケース
  • 戦略なしだとどうなるのか?
  • 戦略を立てるコツとは?

そもそも戦略と戦術とは何なのでしょうか。 

戦略と戦術の違い 図解.png

  • 戦略:どこに向かうかを決めるもの〜全体の目標を達成するための長期的な計画やビジョン
  • 戦術:戦略を実行するための具体的な手段や方法。

戦略とは、「どこへ行くのか」を定めること、ビジョンですね
目標を決めて、その目標を達成するための、大きな枠組みを設計することです。 

一方で、戦術とは「どのようにそこに行くのか」を定めることです。戦略を実現するための具体的な行動計画と、いつやるかというタイムラインを指します。

チェスで例えるなら、戦略はゲーム全体の勝利を目指した盤上の配置、戦術は相手の動きに対応した個々の駒の動かし方と言えます。

◾️ マーケティング戦略を立てるためのステップ〜分析、課題形成、目標設定

戦略と戦術の違いを、消費者向けビジネスで考えてみましょう。
コカコーラ社のような飲料品の会社が、飲料水のカテゴリーに天然水のような新製品を出すという事例で説明していきます。

図解 戦略と戦術の違い 消費財の事例 3.001.png

現状分析

現状を分析して、まずは現在の姿を正しく把握します。ここでは3C分析、SWOT分析、S T P分析などのフレークワークを使います。また並行して、市場の動きや対象の顧客層の意見やトレンドも参考にしていきます。

課題形成

分析結果から、新製品導入の際の課題を具体化します。
例えば、自社のブランドは確立されているが、飲料水の市場では認知されていない、とか、自社の販売網を使えば流通対策は優位に動ける、といった具合です。

目標設定

分析結果をもとにして、売上金額、売上本数、相対的マーケットシェアなどの数値的な目標を立てます。例えば、発売開始から1年後に売上金額10億円、当該の市場でシェア2%を目指す、といった具合です。

◾️ 戦略を立てるためのステップ

立てた目標を達成するために、期日までに何を目指すのかを決めます。
これが戦略です。

マーケティングでは大きく分けて、以下の3つの戦略を立てます

  • プロダクト戦略:製品やサービスの差別化、価格設定
  • ターゲット戦略:市場のどの層に絞ってアプローチをするか
  • コミュニケーション戦略:ターゲット層に向けてどんなメッセージをどのメディアで発信するか

プロダクト戦略と差別化に関しては以下の記事を参考にしてください
【差別化とは?】利益を上げるための差別化戦略と手法:競争優位の戦略を作ろう

差別化された自社の"売り物"を、狙う"売り先"に向けて"売り方"を考えていく、というステップになります。

具体的には以下のようにフェイズごとに戦略を立てます。

  1. 最初の3ヶ月でターゲット層の間での認知度を上げる
  2. 市場で知られてきたら、差別化ポイントを訴求する
  3. 競合との違いが浸透してきたら選ばれるためのキャンペーンを実施する

◾️ 戦術の立て方

立てた戦略をもとに具体的に何をしていくかを決めます。これが戦術です。

フェイズ1の認知を上げるために何をするか?
T V C Mを打ったり、SNSで話題性を作ったり、マスメディアにPRして取り上げてもらう、などです。

次に、差別化ポイントを深く知ってもらうためのメディアを使います。よりしっかりと読んでもらえるようにホームページやYouTubeに集客していきます。

認知が広がり、差別化点もはっきりしてきたら、店頭やE Cサイトで選ばれる施策を実施します。プレゼントキャンペーンや期間限定値引きをやるなどです。

図で、黄色が分析と課題形成、緑が目標値です。そして、赤が戦略、青が戦術になります。

今回は消費財の事例で説明しましたが、法人向けのビジネス、生産材やBtoBでも考え方は同じです。

◾️ なぜ、戦術より戦略を先に立てる2つの理由

ここで重要なことは、まず戦略を立てその後に戦術を立てていきます。
ではなぜ、戦略を先に考えることが重要なのでしょうか?

まず、戦術は手法なので、星の数ほど選択肢があります。
その中から最適な手法を選ばないと、ヒト・モノ・カネ・時間・情報という経営資源が無駄になってしまうからです。

戦略に基づいて戦術を立てることで、投資対効果を高めていけるのです。すなわち、資源の無駄遣いを防ぎ、効率的に目標達成に近づけることになります。 

逆にいうと、戦術がうまくいかなかった時は戦略に戻って「戦略に沿っていたかどうか?」

を確かめてみると良いのです。

戦略は、マーケティングの羅針盤です。 戦略がしっかりしていれば、日々の業務で迷いが少なくなり、全員が同じ方向に向かって進むことができます。 

◾️ 戦略を立てずにマーケティングをやるとどうなるのか?

戦略を立てずにビジネスをやるとどうなるのでしょうか?

戦略を立てずにビジネスを進めることは、設計図なしで家を建てるようなものです。 

設計図がないまま家を建て始めると、どこに柱を立てるべきか、どの素材を使うべきか、窓やドアの位置をどうするかが分からず、途中で工事が行き詰まったり、出来上がった家が住みにくかったり、最悪の場合は家が崩れてしまうこともあります。

マーケティングにおいても同じです。戦略という設計図がないまま進めると、
全体の方向性がはっきりしないため、予算や労力が無駄になるのです。

また、短期的には一見うまくいっているように見えるかもしれませんが、長期的には大きな問題が生じやすくなります。

例えば、新商品を発売する場合、ターゲット顧客がぼんやりしたままなんとなく良さそうな商品を開発してしまうと、誰に何をアピールすべきか、もぼんやりしてしまい、売上が伸びない、ということになります。

◾️ Amazonの初期の戦略構築に学ぶ戦略の決め方

私が在籍していた頃の初期のAmazonは、ターゲット層を、
「新しいものが好きな、ネットユーザー」
とはっきり決めてオフラインの広告を一切やらず、ネット広告だけで新規顧客を獲得していました。

そして戦術は、ヤフーとMSNに集中して、検索連動広告を出すことでした。

ここで1つポイントがあります。

戦略を決める、ということは

「やらないことを決める」

ということでもあります。

当時のAmazonの「ターゲット層を決めて、オンライン広告に絞ること」ということは、

"オフラインの広告"をやらない 

と決めたことです。別な言い方をすると、オンライン広告に集中する、ということになります。

戦略を決める、ということは何かをやめること、

AでなくてBとする

ことが、戦略を立てる時のコツです。

戦略と戦術の違いを正しく理解して、混同しないようにしましょう。

また、定期的に戦略を見直し、必要に応じて修正していくことも大切です。

ぜひ、実践してみてください。

この記事の内容は動画でも説明しています。

執筆者

マーケティングアイズ株式会社 代表取締役 理央 周(りおう めぐる)
石油会社、家電メーカー、大型車両メーカーなどに、新規事業立ち上げ・ブランド構築のコンサルティングと、法人営業にマーケティングを注入する社員研修を提供。 2013年より2023年まで、関西学院大学 経営戦略研究科で教授を務める。
著書は「売れない問題 解決の公式」(日本経済新聞出版)など国内外で24冊。米国、台湾、香港など海外でも講演。テレビ、ラジオの出演や新聞・雑誌への寄稿も多数。YouTubeでも最新のマーケティング情報を発信中。 本名 児玉洋典 

差別化して価格競争から抜け出したい、新規事業を立ち上げたい、新しいビジネスを軌道に乗せたい、など、
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