新規事業立ち上げ最大のポイント顧客不在を解消しよう

◾️ 新規事業立ち上げの最大のネックは顧客不在の視点

新規事業の立ち上げがなぜうまくいかないのか?

それは、「顧客不在」になるからです。

なぜ、そうなるのでしょうか?

新規事業の立ち上げにおいて「顧客不在」になりがちな理由は、いくつかの要因があります。これらの要因を理解しないと、企業は自社の製品やサービスに集中しすぎ、顧客の本当のニーズや問題を見失ってしまいます。以下にその理由と事例を挙げて説明します。

1. プロダクト志向が強すぎる

企業が自社のプロダクトや技術に過度に集中すると、顧客のニーズや市場の動向を無視してしまうことがあります。特に技術革新や製品開発に強い企業では、これが顕著です。つまり、「良いものを作れば売れる」という誤った前提で進めてしまうことが原因です。

事例:セグウェイの失敗
セグウェイは、2001年に「都市の交通革命」を目指して登場しました。開発者はその技術力と革新性を信じ、大規模な市場成功を確信していましたが、実際には消費者のニーズに合っていませんでした。価格が高すぎたこと、インフラ整備が追いついていなかったこと、そして消費者が日常的に使う場面が限定されていたため、思ったほど普及しませんでした。これは技術や製品に注力しすぎて、消費者の生活スタイルやニーズに対する配慮が足りなかった典型例です。

2. 社内の思い込みと視点の偏り

企業内での意思決定が、社内の専門家や上層部の視点に偏ることがあります。トップダウンで決められた戦略が必ずしも顧客の視点に基づいているとは限りません。マーケティングや営業の現場で得られるフィードバックが軽視されることもあり、「社内の常識が市場の常識」だと誤解するケースです。

事例:New Cokeの失敗
1985年、コカ・コーラ社は新しい味の「New Coke」を導入しました。これは社内の味覚テストや市場調査に基づいて決定されたものでしたが、結果として大失敗しました。消費者は従来のコカ・コーラの味に強い愛着を持っており、新しい味を受け入れなかったのです。この失敗は、消費者の感情やブランドへの忠誠心を軽視し、社内の分析や判断に基づいて決定を下したことが原因です。

3. 市場の変化を無視する

市場や顧客のニーズは常に変化していますが、企業は時として過去の成功体験や旧来のビジネスモデルに固執し、変化に対応しきれないことがあります。時代の変化や顧客の新しいニーズに目を向けず、従来の手法で事業を進めようとすることで、顧客とのギャップが生まれます。

事例:Blockbusterの破綻
ビデオレンタルチェーンのBlockbusterは、かつてアメリカで大成功を収めた企業でしたが、ネットフリックスなどのストリーミングサービスの台頭に対応できず、結果として市場から姿を消しました。Blockbusterは顧客のライフスタイルの変化(物理的な店舗からオンラインサービスへの移行)に気づかず、従来のレンタルビジネスに固執してしまいました。この事例は、顧客のニーズが変化しているにもかかわらず、それに対応できなかった典型的な例です。

4. 社内の部門間の連携不足

営業、マーケティング、製品開発の各部門が分断されていると、顧客のニーズが正確に反映されないことがあります。特に、製品開発チームが営業やマーケティングから得られる顧客フィードバックを十分に取り入れられない場合、製品が市場ニーズから乖離してしまうことがよくあります。

事例:ボーイング787の開発
ボーイング787の開発では、製造工程におけるコミュニケーション不足と供給チェーンの問題が重なり、製品の発売が大幅に遅れました。結果として、顧客(航空会社)からのフィードバックや期待に応えられず、最終的に信頼を失うことになりました。顧客のニーズに対して柔軟に対応できなかったため、製品の開発が遅延し、市場での優位性を失ったのです。

5. 仮説を検証せずに進める
初期段階で顧客のニーズに対する仮説を立てることは重要ですが、それを実際に検証せずに事業を進めてしまうと、後に大きな問題を抱えることになります。特に、製品やサービスのフィードバックを無視したまま大規模に展開することは危険です。

事例:Google Glassの失敗
Google Glassは、スマートグラスとして一部で注目されましたが、発売後に消費者からのフィードバックを十分に反映できず、市場で失敗しました。プライバシーの問題やデザイン、価格設定など、多くの問題点が指摘されましたが、それらの問題を検証し改善する前に商品を市場に出した結果、消費者のニーズに合致せず、大規模な失敗を招きました。

「顧客不在」になりがちな理由は、プロダクト志向や社内視点の偏り、顧客フィードバックの軽視、変化への対応不足などが挙げられます。事例からもわかるように、企業は常に顧客の視点を忘れず、市場の動向を的確に把握し、フィードバックを取り入れた柔軟な対応が求められます。これが、新規事業を成功に導く鍵です。

◾️ 新規事業立ち上げ時の盲点とは?

多くの企業が新規事業を始める際、自社の製品やサービスに過度に集中してしまい、顧客が実際に何を求めているかを見逃してしまうことがよくあります。これは「売り手視点」に陥る典型的なミスで、顧客のニーズや問題をしっかりと理解しないまま、プロダクトを推進してしまうことが主な原因です。

例えば、次のようなケースが考えられます。


- 市場調査特にニーズの探り出しが不十分:

顧客が実際にどんなニーズを持っているのかを徹底的に調査せず、独自の仮説に基づいて進めてしまう。

- 製品中心のアプローチ:

製品やサービスの開発に力を注ぎすぎ、顧客の声を聞かずに進めてしまう。


- 競合分析の不足:

競合が提供している価値や、顧客がすでに求めていることを無視し、自社製品の独自性ばかりを強調してしまう。

これらの盲点により、どんなに優れた製品を作っても、市場とのミスマッチが発生し、結果として失敗に繋がってしまいます。成功するためには、顧客が本当に求めているものを理解し、その上で価値を提供することが必要です。

◾️新規事業立ち上げの時の顧客視点欠如の解決方法

新規事業の立ち上げにおける「顧客視点の欠如」を事前に解決するためには、以下のような事前準備をしっかり行うことが重要です。

1. 徹底的な市場調査

顧客のニーズや市場の動向を把握するための市場調査は不可欠です。主観的な仮説ではなく、客観的なデータに基づいた調査を行うことで、顧客が本当に求めているものや、どのような問題を抱えているかを正確に理解できます。以下のステップを実行すると効果的です。

ターゲット顧客のペルソナ作成:
顧客層を細かく分析し、理想的な顧客像(ペルソナ)を作りましょう。そのペルソナが抱える問題、ニーズ、生活習慣などを考慮に入れることが重要です。

競合分析:
市場で既に存在する競合製品やサービスと自社の製品がどのように差別化できるかを確認し、競争優位性を見極めます。

2. 顧客インサイトを探る

顧客の表面上のニーズだけでなく、その背後にある「インサイト」を掘り下げることが大切です。インサイトとは、顧客が明確には言葉にしないものの、潜在的に抱いている感情や価値観です。これを見つけるには、直接の対話やアンケートだけでなく、観察やインタビューなどで深堀りする必要があります。

デプスインタビュー:
少人数の顧客に対して深いインタビューを行い、彼らの行動や考え方、感情にフォーカスします。


顧客の購買行動分析:
購買データやオンライン行動を分析し、顧客がどのような選択をするか、その背景に何があるのかを把握します。

3. 仮説の設定と検証(プロトタイプとテスト)

早い段階で仮説を立て、実際の顧客にテストを行うことで、盲点を見つけやすくなります。完全にプロダクトを作り込む前に、以下のアプローチを取ることで顧客の反応を確認します。

MVP(Minimum Viable Product)の作成:
最低限の機能を持つプロダクトを早期にリリースし、顧客からのフィードバックを集める。これにより、製品のコンセプトが顧客のニーズに合致しているかどうかを確認できます。

A/Bテスト:
複数のバージョンを用意し、どちらがより効果的かを少人数の顧客にテストする。

4. フィードバックループの構築

顧客からのフィードバックを常に収集し、プロダクトやマーケティング戦略を改善するための仕組みを導入します。新規事業の初期段階では、顧客の声に敏感に反応し、柔軟に調整することが成功の鍵です。

早期顧客のコミュニティを作る:
初期の顧客に対して特別なコミュニティやフォーラムを設置し、フィードバックを容易に収集できるようにします。

定期的なサーベイ:
顧客満足度や新たなニーズについて、定期的にアンケートやサーベイを実施し、状況を把握します。

5. チーム内での顧客視点の共有

全員が同じ顧客視点を持つことが必要です。事業の初期段階から、開発チーム、マーケティングチーム、営業チームなどが一貫して顧客目線を共有できるようにコミュニケーションを強化しましょう。これには、以下のアプローチが効果的です。

顧客の声を共有する定期会議:
顧客のフィードバックやデータをもとに、部門を超えて協議し、改善点を洗い出します。

顧客体験マップの作成:
顧客が最初にサービスを知り、購入するまでの流れや体験を可視化することで、顧客がどの段階でストレスを感じるか、満足するかを確認できます。

この記事の内容を動画でも説明しています。

マーケティングアイズ株式会社 理央 周

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