顧客歓喜とは?顧客満足を超える顧客歓喜を目指そう:Amazonの事例

◾️ 【経営者必見!】顧客歓喜とは?顧客満足を上げることは必要なのか?
顧客満足度を上げることは重要です。しかし、私が在籍していたAmazon Japanでマーケティングマネージャーの仕事をしていた時に、来日していた経営者から「顧客満足を求めてはいけない」と言われたことがあります。
MBAを取ったばかりの私はその意味がわからなく、「えっ、だって顧客満足を上げることがマーケティングのやることですよね?」
と、思わず聞き返したことを覚えています。
するとその方は、
「お客様は、いったん満足したとしても、次にはさらにその上を欲しがるんだ」
「だから、私たちはお客様が満足したことで満足していてはダメなんだよね」
との説明をしてくれました。私は「なるほど!」と腹落ちしたことを覚えています。
この事例が示唆することは、常に「当たり前の上を目指す」ということ。
◾️ 顧客満足の上をいく顧客歓喜を目指すには
では、顧客満足の上とは何でしょうか?
それは、顧客歓喜=Customer Delightです。
目指すべきはこちらなのです。
あまり聞いたことがない言葉だと思うので、
- 顧客満足と顧客歓喜は何が違うのか?
- どうやって顧客歓喜を目指していくのか?
を説明します。
顧客満足とは、顧客の期待が製品やサービスによって満たされた状態です。
例えば、期待通りの品質、価格、サービスを受けた時、顧客は満足します。
でも、これは基本レベルでしかなく、競争が激しい市場では、必要なことですが、十分ではありません。
それに対し、「顧客歓喜」とは顧客の期待を大きく超えるレベルの経験をお客様に提供することです。
顧客が驚くような、製品、サービスや体験価値提供し、「すごい!」「初めてだ!」と感動を与えることで、単なる満足を超えた絆をお客様と築くことを目指します。
顧客歓喜は、顧客が忘れられない経験をすることで、
強いロイヤルティと口コミを生み出します。
顧客満足と歓喜の違いは、顧客満足が「期待を満たす」ことであるなら、
顧客歓喜は「期待を超える」こと。この違いが、ビジネスにおける成功のカギを握っています。
ちなみに、チャットG P Tにこの2つを図解してもらいました。
意外としっかりと描けていますよね。
例を挙げるとすれば、顧客満足は時間通りに配達される荷物ですが、
顧客歓喜は予想より早く届くとか、封を開けるとサプライズのプレゼントが入っている状態です。
◾️ 顧客歓喜の事例
ここで、顧客歓喜の事例を紹介します。
先日、ネット通販で枕を買いました。
届いたら、中にとても丁寧な文章の手紙が入っていて、
「会社を5人でやっていること、丁寧なおもてなしをしたいこと」
が書かれていました。
さらに、中には手で織った小さい折り鶴が入っていたのです。
私は感動して、S N Sにもアップしたし、こうしてブログにも書いています。
これが、自然な口コミです。
そして次にはまたこのお店で買うでしょう。こちらはリピートに当たります。
顧客満足と顧客歓喜の違いを、カフェの経営に例えてもう少し詳しく説明します。
顧客満足は、普段通りの美味しいコーヒーを提供するカフェのようなものです。
あなたはそのカフェを訪れ、期待していた通りのコーヒーを手に入れます。
コーヒーはいつもどおり美味しく、価格も適正で、サービスも満足できるものです。
この経験は、あなたがカフェに期待していたことを確実に満たしてくれますが、
特に心に残るわけではありません。
あなたは満足しているので、また来るかもしれませんが、
特別な理由があるわけではないので、他に選択肢があればそちらを試してみるかもしれません。
一方、顧客歓喜は、あなたがたまたま立ち寄った小さなカフェで、
期待していなかった驚きのサービスを受けるようなものです。
例えば、コーヒーを注文したら、バリスタから特製のデザートが無料で提供され、
さらにコーヒー豆の選び方や淹れ方についての面白い話を聞かせてくれるかもしれません。
ここでは、ただ美味しいコーヒーを提供するだけでなく、期待をはるかに超える体験を提供しています。このカフェのことは忘れられず、友人や家族にも積極的に勧めたくなります。次にその街を訪れる時、あなたは間違いなくそのカフェのリピーターになります。
◾️ 顧客歓喜を目指すステップ
ではどうやって顧客歓喜を実現するのか、顧客歓喜まで持っていくには何をすればいいのでしょうか?
「顧客歓喜が大事なのはよくわかるけど、そうは言っても難しい」というのが本音だと思います。
「そんなのできれば苦労しないよ」という声も聞こえてきそうです。
もちろん一朝一夕でできることではありません。以下に、顧客歓喜を目指すステップを紹介します。
ステップ1:顧客のニーズと期待の洗い出し
顧客が、今価値を感じていることは何か?
今は提供できていないけれど、提供できたら顧客が喜ぶことは何か?
を洗い出していきます。
ステップ2:競合と比べる
競合との比較をする時に、競合より優位な点、劣っている点という"違い"に加えて、ライバルと"類似""共通"している点も一緒に出すと違いがはっきり見えてきます。また自社の業界だけでなく他の業界のベストプラクティスを探るのもコツです
ステップ3:期待を超えた価値の創造に着手
ここまできたら、期待以上の価値提供を考えていきます。
基本は、顧客が喜ぶことのうち、競合がやっていない、自社だけができる価値を見つけ、提供する、ということになります。これを、バリュープロポジションと呼びます。
バリュープロポジションについては以下の記事で説明をしているので参考にしてください。
→ 【事例と図解で解説!】顧客価値で勝つバリュープロポジションの作り方と実践事例
以下に、3つの価値創造のヒントを挙げるので参考にしてください
パーソナライズ:
顧客一人ひとりのニーズや好みに合わせたカスタマイズされた体験を提供します
サプライズ:
予期せぬプレゼントやサービスを提供する: 顧客の期待を超える何か、例えば無料のアップグレードや追加サービスを提供します。
特別な感謝の表現:
顧客への感謝を示す特別な方法を見つけ、それを表現します。
ステップ4:継続的な関係構築の仕組みを作る
顧客とのコミュニケーションを維持する。定期的に顧客とコミュニケーションを取り、彼らの変化するニーズに対応します。ロイヤルティプログラムやリワードを利用するのも1つの施策です。
ステップ5:内部文化とプロセスの改善
4までで終わりではありません。持続するためには顧客中心の文化を醸成する: 社内で顧客中心の文化を育て、すべての従業員が顧客満足を最優先事項とするようにします・フィードバックループの確立: 顧客からのフィードバックを迅速に製品やサービスの改善に反映させるプロセスを作ります。
効果のモニタリングと分析も必須項目です。実施した施策の効果を定期的にモニタリングし、その結果を分析して改善策を講じます。
◾️ 顧客歓喜の発想を生むマーケティングのフレームワーク
中でも難しいのが、3の新しい価値創造です。いきなりオリジナルの考え方を生み出すのは難しいので、まずはフレームワークを活用するのがいいでしょう。
1)ブレインストーミング
さまざまな背景を持つチームメンバーと一緒に、制限を設けずにアイデアを出し合います。
顧客体験のジャーニーマップを作成してみるのも有効です
顧客が製品やサービスと接触する全てのポイントで、改善やサプライズを提供できる機会を見つけ出します
2)イノベーション発想の手法
デザイン思考という顧客の問題を解決するためのアイディア出しのステップのプロセスを採用してみるのも1つです。
競争が激しい今の時代、顧客満足を得ただけで満足していては市場で生き残っていけません。顧客の期待を超えるには、何をすればいいのか?を、社員全員が考え行動できる組織になることが肝要なのです。
顧客歓喜については、以下の動画でもお話をしています。参考にしてください。
執筆者
石油会社、家電メーカー、大型車両メーカーなどに、新規事業立ち上げ・ブランド構築のコンサルティングと、法人営業にマーケティングを注入する社員研修を提供。 2013年より2023年まで、関西学院大学 経営戦略研究科で教授を務める。
著書は「売れない問題 解決の公式」(日本経済新聞出版)など国内外で23冊。米国、台湾、香港など海外でも講演。テレビ、ラジオの出演や新聞・雑誌への寄稿も多数。YouTubeでも最新のマーケティング情報を発信中。 本名 児玉洋典
差別化して価格競争から抜け出したい、新規事業を立ち上げたい、新しいビジネスを軌道に乗せたい、など、
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