カスタマージャーニーへのAI活用とは?〜カスタマージャーニーマッピングの改善の方法

◾️ 【マーケティング担当者必見!】効果をだせるカスタマージャーニーとは?
生成AIやSNSの浸透は、顧客の行動を大きく変えています。企業が顧客データを解析する際に、今までのやり方ではとらえきれない顧客の行動や嗜好があることが分かっています。
この複雑になってきた顧客行動や、多様なニーズを正しくつかむことが、ビジネス成功の鍵となっているのです。その解決策の1つに「正しくカスタマージャーニーマッピングを描く」ことが挙げられます。
この記事では、最適な顧客体験を提供できるカスタマージャーニーマッピングを描くために何をすればいいのか?特に「AIを使ったカスタマージャーニー」の見直しについて説明します。
- 目次
◾️ カスタマージャーニーとは?
カスタマージャーニーとは、
「顧客がブランドを発見してから購入し、リピートをしてくれる優良顧客になるまでのプロセスを見える化する」
ことです。
具体的には、ある顧客がSNSで自社ブランドを知り、自社サイトで商品をチェックし、購入し、その後リピーターになるまでの一連の流れがカスタマージャーニーです。
カスタマージャーニーの中身と作り方については以下の記事で説明しているのでそちらを参考にしてください。
こちらから→ カスタマージャーニーとは?作り方、ステップ、仮説の立て方、作成のポイントを事例で解説
◾️ なぜ、カスタマージャーニーが上手く描けないのか?
NikeやAmazonなどの大企業はもちろん、多くの企業がカスタマージャーニーマッピングを取り入れています。
一方で、
「カスタマージャーニーマッピングの効果が見えない」
「今までと違ってカスタマージャーニーが上手く描けない」
という相談もよくいただきます。
カスタマージャーニーが上手く描けない、あるいは現実と違うジャーニーマッピングになってしまう理由は、従来の「顧客アンケートやインタビューに頼る」方法では、時間がかかる上、顧客行動の全体像を捉えることが難しいという問題が出てきているからです。
カスタマージャーニーマッピングがうまくいかない主な理由と具体的な事例を挙げてみましょう。
データの不足または品質の問題
カスタマージャーニーのマッピングには、顧客の行動や意見を網羅的に捉える詳細なデータが必要です。データが不足していたり、データの品質が悪い場合、実際の顧客体験を正確に反映したジャーニーマップを作成することは困難です。
顧客の行動変化への対応の遅れ
市場や技術の変化により顧客の行動や期待が変わることがあります。ジャーニーマップがこれらの変化に柔軟に対応して更新されない場合、マッピングはすぐに古くなり、実用性を失います。
内部のサイロ化
組織内の異なる部門が協力してカスタマージャーニーマッピングを行う必要がありますが、部門間のコミュニケーションや協力が不足していると、全体としての顧客体験の視点が欠け、効果的なマッピングが難しくなります。
事例〜大手電子商取引サイトのカスタマージャーニーマッピングの失敗
ある企業がカスタマージャーニーマッピングを導入し、顧客体験の向上を図ることを目指しました。しかし、以下の問題に直面した、という事例を紹介します。
データの不整合
複数のデータソースからの情報が整合性を欠いていたため、顧客が実際にどのタッチポイントで問題を感じているのかを正確に把握することができませんでした。これにより、効果的な改善策を打ち出すことが困難になりました。
更新の遅れ
ジャーニーマップが定期的に更新されず、市場の変化や新しい顧客の行動パターンを反映できていませんでした。特にモバイルショッピングの増加という新しい顧客行動のトレンドを見逃し、その結果、競合他社に顧客を奪われる形となりました。
部門間の連携不足
マーケティング部門と顧客サービス部門が独立して行動しており、共有されるべき顧客データが部門内で閉じられてしまいました。その結果、顧客のニーズに対する全社的な取り組みが欠け、顧客満足度が低下しました。
この事例からわかるように、カスタマージャーニーマッピングの失敗はしばしばデータの不足、更新の遅れ、内部の連携不足によって引き起こされます。これらの問題を解消するためには、データの品質を確保し、ジャーニーマップを定期的に見直し、組織内の異なる部門が協力して顧客中心のアプローチを取ることが重要です。
◾️ AIでカスタマージャーニーマッピングを進化させるには?
Google AnalyticsやSalesforce EinsteinのようなAIツールは、機械学習を使って、顧客行動や嗜好についての膨大な顧客データを分析して、より深い理解を提供してくれます。
Netflixでは、AIを使用してユーザーの視聴パターンを分析し、顧客ごとにパーソナライズされたコンテンツを推薦してくれます。これにより、エンゲージメントの向上とサブスクライバーの維持を可能にしています。
これらの事例のようなAI活用をカスタマージャーニーマッピングの作成にも使うのです。
カスタマージャーニーマッピングの中で特に、
1) お客様がどこでつまずいているか(ペインポイント)の分析と予測
2) 顧客ニーズの理解
3) 将来の行動の予測
に役立てることができます。
◾️ カスタマージャーニーへのAIの取り入れ方:E コマースのケーススタディ
オンラインで物販をする小売業のカスタマージャーニー改善の事例をもとに上記3点でのAIの使い方を解説します。
このオンライン小売業A社は、顧客の購入プロセスの最適化と、顧客体験(=CX)の向上のためにAIツールを利用する、という事例です。同時に、私が在籍していた初期のAmazonのカスタマージャーニーの事例も併せて紹介します。
ペインポイントの特定
ペインポイントとは「顧客が製品やサービスを利用する過程で経験する問題や不便、不満」を指します。具体的には、
- サービスの利用に時間がかかりすぎる
- 維持費などコストが高すぎる
- 期待する機能が足りない または 複雑すぎる
というような、顧客が何かに対して感じるフラストレーションや困難な点です。
A社では、顧客が商品を選んだ後に、買い物かごへの移行が低いという問題が発生していました。
そこでAIを使い、顧客の行動データを分析して、多くの顧客が配送オプションを選択する段階で離脱していることを発見しました。特に、配送費がよくわからないことが離脱の主な原因であることを発見するっていう具合ですよね。
私が所属していた初期のAmazonでも「買い物かご=ショッピングカートに商品を入れてはいるが購入のボタンを押していない」という顧客が多かったのでリマインドをするキャンペーンを打ったことがあります。当時は、特定のアプリケーションを使いこの問題を発見したのですが、今はAIでの行動分析でこのようなポイントを発見できるのです。
顧客ニーズの理解
カスタマージャーニーを改善するためには、顧客ニーズの理解が重要です。顧客ニーズとは、顧客が製品やサービスに対して持っている具体的な要求や期待のことを指します。これを深く理解することで、企業はより効果的に顧客の期待に応え、顧客満足度を高めることができます。顧客ニーズをより深く理解できると以下のようなメリットがあります。
投資対効果の向上
顧客のニーズを理解することで、特定の顧客グループに合わせた製品やサービスを開発し、マーケティング活動を最適化することができます。これにより、リソースの無駄を減らし、より高いROI(投資利益率)を達成できます。
顧客体験の向上
顧客が何を求めているかを正確に把握することで、その期待に応える製品やサービスを提供できます。また、カスタマージャーニーの各接点での体験を個々のニーズに合わせてカスタマイズすることが可能となります。
競争優位の確保
市場における競合他社との差別化を図るためには、顧客ニーズの理解が不可欠です。顧客が真に価値を感じる点を見極め、それを製品やサービスに反映させることが、ブランドの独自性と魅力を高めることにつながります。
A社では、AIを使って顧客のフィードバックと行動パターンを分析して、顧客が最も価値を感じる配送オプションだと発見しました。
そこで 配送オプションをシンプルかつ透明にすることで、顧客のニーズに応える配送施策を導入しました。購入額が一定額以上で無料配送を提供するといった具合です。
これも私がいた初期のAmazonで実施した「1500円以上送料無料」キャンペーンに近い施策です。当時は、リアルの書店と差別化をするために何がポイントになるのか?を顧客インタビューなどで汲み取っていました。そこで、送料無料が1つの壁になっていることに気づいたのです。統計的にシミュレーションを行い、1500円以上送料無料にたどり着いたのですが、この一連のプロセスを、AIで発見することが可能になっています。
将来の行動の予測
カスタマージャーニーを改善するための将来行動の予測は、顧客の将来の購買行動や関与度を予測するプロセスです。このアプローチによって、企業は顧客の次の行動を先読みし、それに対応する準備を整えることができます。これはマーケティング戦略をより効果的にし、顧客体験を向上させるために重要です。
顧客満足度の向上
顧客のニーズや期待が何であるかを予測することで、その要望に応じた製品やサービスを事前に用意することができます。これにより、顧客満足度が高まり、顧客のロイヤルティが向上します。
在庫管理と供給チェーンの最適化
顧客の購買行動を予測することで、需要のある商品の在庫を適切に管理し、供給過剰や不足を防ぐことができます。これにより、コスト削減と効率的な運営が可能になります。
パーソナライズされたマーケティング
個々の顧客の興味や購買履歴に基づいて将来の行動を予測し、その情報を用いてパーソナライズされたマーケティング活動を展開することができます。これにより、マーケティングの効果を高め、より高いコンバージョン率を達成することが期待できます。
A社では、過去の購入データと顧客行動データから、顧客がどのような商品を再購入する可能性が高いか、またいつ購入するかをAIに予測させました。
この情報を基に、顧客が再購入を検討し始める時期に合わせてパーソナライズされたプロモーションやリマインダーを送信したんです。これにより、顧客エンゲージメントとリピート購入率が向上しました。
私が在籍していた初期のAmazonでも、レコメンデーションを作成するためにすべての顧客データを、ソフトウエアを使い手動で分析していました。このプロセスを今はAIでできるようになっているのです。
AIを活用してカスタマージャーニーの各段階で発生する具体的な顧客の問題を特定し、顧客ニーズにマッチする施策をうつことで、顧客体験を向上させるとともに、将来的な顧客行動を予測して、ライバルに先手を打った事例です。このように、AIは複数の面で顧客ジャーニーの最適化に貢献することができます。
◾️ AIなしでジャーニーマッピングをするとどうなるのか?
AIなしでカスタマージャーニーを描くのは「暗闇で地図を見て進んでいくようなもの」です。本当にやらなければならない点を見逃してしまいます。
まずは、データの不足です。AIツールなしでは、顧客行動の膨大なデータを収集・分析すると、不完全な情報に基づいたジャーニーマップしか作成できず、実際の顧客体験とのギャップが生じます。
インサイトの抽出にも限界が出てきます。手動でのデータ分析では、潜在的な洞察を見逃すリスクが高く、顧客行動の複雑なパターンや傾向を理解するのが難しくなります。
ひいては、時間と労力の無駄になります。大量のデータを手動で処理するには時間がかかります。特に、大規模な顧客基盤を持つ企業にとっては非効率的で、市場の変化に対応することも難しくなります。
◾️ カスタマージャーニーマッピングにAIを使う理由とは?
カスタマージャーニーマッピングにAIを使うということは、「夜空を見るために望遠鏡を使う」ようなものです。裸眼で見えない星も、望遠鏡でその美しさや複雑な構造を観察することができるように、AIで顧客の心理や行動を読み解いていくのと似ています。
詳細な行動データの解析
AIは、機械学習やデータマイニング技術を用いて顧客がどのタッチポイントでどのように振る舞うかを詳細に追跡し、分析することができます。このデータを使って、顧客がどの製品やサービスに関心があるのか、を掴んで、それに基づいてマーケティング戦略を調整するのに役立ちます。
リアルタイムの洞察と対応
AIツールを使うと、顧客の行動に基づいてリアルタイムで対応ができます。例えば、顧客がオンラインで製品を見ているときに、関連製品を推薦したり、特定のプロモーションを提案することができます。
予測分析による未来の行動予測
AIは過去の行動パターンから学習して、顧客が次にどんな行動を取りそうかを予測できます。これにより、企業は顧客のニーズが顕在化する前に、それを満たす製品やサービスを用意することができます。ライバルに先手を取れるのです。
このように、カスタマージャーニーマッピングでAIを「望遠鏡」として使うことで、顧客の行動やニーズをより深く理解して、そこから効果的な対策をうつことができるようになります。これにより、企業は顧客満足度を向上させるとともに、ビジネスの成果を最大化することが可能になります。
◾️ AIツールを活用したカスタマージャーニーマッピング作成のステップ
AIを取り入れるカスタマージャーニーマッピングは以下のステップで作成していきます。基本的には、上記の画像のようにワークシートを作成して自社内で見えるか及び共有をしていくといいでしょう。
ワークシートをご希望の方は、以下の問い合わせドームからご連絡ください。パワーポイントの資料としてお送りします。
こちらから→ マーケティングアイズ株式会社 問い合わせフォーム
ペルソナの設定
AIツールを使用して、顧客データから理想的な顧客像(ペルソナ)を作成します
年齢、職業、興味関心などの特性を明確化します
ジャーニーの特定
AIが顧客データを分析し、認知から購入、ロイヤルカスタマーになるまでの主要なステップを特定します
一般的なステップには、認知、関心、検討、購入、利用、評価、継続/離脱などがあります
タッチポイントの特定
AIツールを使用して、各ジャーニーステップにおける顧客とブランドの接点を洗い出します
Webサイト、SNS、店舗、カタログ、コールセンターの、顧客接点・チャネルなどが含まれます
顧客の行動・感情のマッピング
AIが顧客データ、アンケート、ソーシャルメディアの投稿などを分析し、各ステップでの顧客の行動や感情を特定します
改善ポイントの特定
AIがマッピングした内容を分析し、顧客体験を改善すべきポイントを特定します
戦略的視点の追加
AIツールを使用して、各ステージでのマーケティング戦略への貢献度を分析します
KPIの設定
AIが各ステージでの成功を測定するためのキーパフォーマンスインディケータ(KPI)を提案します
マッピングの可視化
AIツールを使用して、収集したデータを視覚的に分かりやすいカスタマージャーニーマップとして表現します
継続的な改善
AIが常に新しいデータを分析し、カスタマージャーニーマップを自動的に更新しますこれにより、PDCAサイクルを効率的に回せるようにするためです
これらのステップを通じて、AIツールを活用することで、より正確で効率的なカスタマージャーニーマッピングが可能になります。
◾️ まとめ
この記事の趣旨は「AIを使えば全てうまくいく」といっているわけではありません。
カスタマージャーニーを使うかどうか、A Iが出してきたデータやインサイトが自社の目的にマッチしているかどうかという大事な決断はやはり人間がするべきです。
AIは単なる手段であって目的ではありません。
目的をはっきりさせて、戦略を立てられるマーケターが社内にいなければ、AIとかシステムを入れても意味がないのです。
そこだけ注意してAIを活用しましょう。
AIは単なる技術革新ではなく、お客様とのより良い関係構築への道筋そのものです。この機会に、自社でどのようにAIを活用できるか考えてみてください。
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執筆者
家電メーカー、石油会社、大型車両メーカー、高機能フィルムメーカー、建築部品メーカーなどに、新規事業立ち上げ・ブランド構築のコンサルティングと、顧客視点の顧客文化にするマーケティング社員研修を提供。 2013年より2024年まで、関西学院大学 経営戦略研究科で教授を務める。
著書は「売れない問題 解決の公式」(日本経済新聞出版)など国内外で24冊。米国、台湾、香港など海外でも講演。テレビ、ラジオの出演や新聞・雑誌への寄稿も多数。YouTubeでも最新のマーケティング情報を発信中。 本名 児玉洋典
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