マーケティングチームの作り方とは?:AIを活用するクリエィティブな組織づくり

◾️ 【経営者必見!】AI時代のマーケティングチームの作り方
マーケティング部門のチーム力を上げるには、AI活用が必須です。
例えば、AmazonではAIを活用したチャットボットが即座にカスタマーサポートを提供し、レスポンスタイムの短縮や顧客満足度の向上に貢献しています。これにより、AIは単純作業を自動化し、その空いた時間で社員がより戦略的な業務に集中できるようにしてくれます。作業を減らしてできた時間を、クリエイティブな時間に当てることで、いいアイディアを出して、施策や製品開発に活かすことができるのです。
このようにAIを多面的に見ると、マーケティング部門のチーム力を上げていくのにも効果的なのです。
しかし、ただ単にAIを使えばチーム力が上がるわけではありません。どんなスキルが必要か?どうやって人材育成していけばいいのか?AI時代におけるハイパフォーマンスなマーケティングチームの作り方について事例と説明します。
◾️ AI時代に求められるマーケティング・スキルとは?
ビジネスパーソンのAI活用スキルについて、以下に3つほど挙げていきます。
1. データを読み解く力
AI時代のマーケティングでは、データを読みとく力、データリテラシーが鍵を握ります。激増しているAIからのデータを読み取って、意思決定できるスキルが求められ。
このデータ読解力というのは「年収2000万円のデータサイエンティストを雇いましょう」ということではありません。AIで獲得したデータとデータの間にある売れるヒントを見つけられる人という意味です。データを読み取って仮説を立てて、検証できるスキルが大事です。
自社Webサイトのチェックの事例で考えてみましょう。マーケティングチームは、Google Analyticsなどのツールを使って、Webサイトの訪問者数、ページビュー、滞在時間などのデータを定期的にチェックし日々改善をします。その時に、以下のような点に気づきたいところです。
- 特定のページの離脱率が高いことに気づき、その原因を分析し
- ページのコンテンツが分かりにくい、ページの読み込み速度が遅い、などが原因と特定する
- データを基に、ページの改善策を検討し、A/Bテストを実施して効果を検証する
このように、以下のようなデータリテラシー・読解能力が必要になるのです。
- データの意味を理解し、問題点を発見する能力
- 原因を特定し、改善策を立案する能力
- テスト結果を評価し、効果を判断する能力
2. チームをまたぐ協働能力
企業としてAIを効果的に使うには、マーケティング部門内だけでなく、営業や製造、設計部門など社内のチームと協力する能力が欠かせません。
人間力ですね。
AIで顧客の購買履歴、Webサイト閲覧履歴、SNSでの行動などを分析し、一人ひとりに最適な商品やサービス、コンテンツを提供するパーソナライズされたCXの実現を事業戦略で進めるという事例で考えてみましょう。
このためには、マーケティング部だけでなく、営業部、カスタマーサポート部、商品開発部など、顧客に関わる全ての部署が連携し、顧客データを統合・共有する必要があります。
例えば、マーケティング部がAIで抽出した顧客のニーズや興味関心に関するデータを、営業部が顧客との商談に活用したり、カスタマーサポート部が顧客からの問い合わせ対応に役立てたりすることで、より顧客満足度の高いCXを提供できます。
チームをまたぐ協業のポイントは以下のようになります。
- 全社的な顧客データ統合基盤の構築
- 各部署が保有する顧客データの共有と活用ルールの策定
- AIによる顧客分析結果の共有と、それに基づくアクションプランの共同策定
3. 自発的に情報を探しに行ける好奇心
AI活用において、今までとは違う幅広い情報収集が求められます。自社にとって重要な情報を得るには、つねにアンテナを張りめぐらせておける好奇心が原動力となるのです。
AI技術は日々進化していて、新しい考え方、活用方法やツールが次々と発表されます。
好奇心旺盛なマーケターは、これらの情報を自発的に収集し、自身の業務にどのように応用できるかをつねに考えます。
例えば、最新のAIに関するニュースを読み、その技術を顧客分析やコンテンツ生成に活用できないか、と考えます。また、新しいAIマーケティングツールを積極的に試し、その効果を検証することで、業務効率化や効果向上に繋げます。
AI活用に限らず、マーケティングに好奇心がもたらす役割には以下のようなものがあります。
- 新しい技術はどんなことができるのか?」「自分の仕事にどう役立つのか?」といった好奇心が、情報収集の原動力となる
- 未知の技術に対する探求心が、情報収集を単なる作業ではなく、楽しい学びの機会に変える
◾️ AIを活用できる人材の育成
こういうスキルを持つために、どうやってチーム力を上げていけばいいのでしょうか?
AIがいくら便利になってきるとはいえ、すべてを自動化するわけではありません。 創造的でクリエイティブな発想力と戦略的な問題解決能力は、今も人間だけができることです。有名なところで言えば、Nikeの「Just Do It」キャンペーンは、単なる広告戦略を超えた創造的な成功事例として知られています。
これからのマーケティングチームを作るうえで、従来のマーケティングの考え方をベースに応用できる人材が必要です。AI時代の人材育成に必要な3つの要素を挙げていきます。
1. クリエイティブな思考
クリエイティブな思考とは、常識とは今までの枠組みとかにとらわれず、新しい視点やアイデアを生み出す能力です。AI時代において、この能力はますます重要になっています。
ではどうやって育てればいいのでしょうか?
1) 前提を疑う力
クリエイティブな発想は、「今までの前提を疑う」ことから生まれます業界や会社の常識にチャレンジして、新たな可能性を探る力を鍛えるのです。
2) 拡散思考
2つ目は、拡散思考を鍛えることです。ロジカルシンキングと逆ですね。ロジカルシンキングは解決に向けて問題を収束させていくことですが、クリエイティブシンキングは逆に拡げていく思考です。いろんな角度から問題を捉えて、多様なアイデアを生む訓練をします。
3) 感性と直感
そして、人間らしい感性です。AIは大量のデータを分析することはできますが、人々の感情に訴えかける作品を創り出す能力には限界がありま。人間特有の経験や直感を活かした創造性、今までの延長線上にない力を鍛えます。
クリエイティブで独創的な発想力を鍛えるには、以下のようなトレーニングが有効です
- 「もし〇〇が△△だったら?」という問いを立て、自由にアイデアを出し合うワークショップを開催する
- 異なる職種やバックグラウンドを持つメンバーでチームを組み、新規事業のアイデアソンを実施する
- 美術館や博物館など、普段の業務とは異なる場所に足を運び、インスピレーションを得る機会を設ける
- AI技術を活用した新しいサービスやプロダクトのアイデアを提案するコンテストを開催
- スタートアップ企業や研究機関との交流会を設け、最新技術やトレンドに触れる機会を作る
- 業務時間の一部を、個人的な研究や開発に充てる「20%ルール」を導入する
2. 戦略的な問題解決能力
戦略的な問題解決能力は、市場の動向を捉えて、効果的な施策を生み出す能力です。
まずは、俯瞰する力ですね。AIで自動化させてできる時間で、全体の戦略を立案し、マネジメントする力を鍛えます。
1)データに基づいた意思決定力
- データ分析力:大量のデータから有益な情報を抽出する能力
- 論理的思考力:データを基に仮説を立て、検証する能力
- 意思決定力:分析結果を踏まえ、最適な解決策を選択する能力
具体的には以下のようなトレーニングが有効です。
- 架空のビジネス課題を設定し、関連するデータを提供して、チームで解決策を検討するワークショップを開催する
- 実際のビジネスデータを用いて、AIによる予測モデルを作成し、その結果に基づいて意思決定を行うシミュレーションを実施する
- データ分析ツールやBIツールを活用した研修を行い、データに基づいた意思決定のプロセスを習得する。
2)システム思考力
- 全体像を把握する力:複雑な問題を構造的に理解する能力
- 因果関係を分析する力:問題の根本原因を特定する能力
- 長期的な視点:将来の変化を予測し、対策を立てる能力
具体的には以下のようなトレーニングが有効です。
- ビジネスプロセスを可視化するワークショップを行い、問題点を特定し、改善策を検討する
- システム思考に関する書籍や論文を読み、ディスカッションを行う読書会を開催する
- 複雑なビジネスモデルをシミュレーションするゲームを行い、システム全体の動きを体験する
3.)リスク管理能力
ここ数年の変化は、これまでの変化よりも複雑で多様、スピードも速くなっています。VUCAと呼ばれるこの変化にいち早く対応するためにはリスクを管理する能力を鍛える必要があります。
VUCAについては以下の記事で詳しく説明しているのでそちらを参考にしてください。
クリック→ VUCAとは?:AI時代の変化=VUCAに対応できる人材育成とは?
- リスクを予測する力:起こりうるリスクを洗い出す能力
- リスクを評価する力:リスクの発生確率と影響度を判断する能力
- リスクを軽減する力:リスク対策を立案し、実行する能力
具体的には以下のようなトレーニングが有効です。
- 過去のプロジェクト事例を分析し、発生したリスクとその対策を検討するケーススタディを行う
- リスク管理に関するフレームワークやツールを活用した研修を行い、リスク管理のプロセスを習得する
- チームでリスクシナリオを作成し、それぞれのシナリオに対する対策を検討するワークショップを開催する
これらの力を鍛えることで、AI活用人材は、複雑なビジネス課題に対して、戦略的な視点から解決策を見出すことができるようになります。
3. 数字とクリエイティブを繋ぐ力
そこから新しい"問い"を生み出す力が必要になります。
このロジカルシンキングとさっきのクリエイティブシンキングを状況に応じて使い分けて「問題は何なのか」という
「解くべき問い」を立てる力を磨くことが生成AI時代に求められます。
これには、データとクリエイティブの両方をつなげられる人材も重要です。
以下のようなケースで問題を特定して、解決できる人材育成が必要なのです。
1)データに基づいたクリエイティブ改善
Webサイトのアクセス解析データから、特定のページの離脱率が高いことが判明しました。
そこから、ヒートマップ分析で「ユーザーがページのどの部分に注目しているのか」「どの部分で離脱しているのか」を可視化しました。この分析結果から、離脱率の高い部分のコンテンツの中身やデザインを改善する、といった具合です。
前半がデータ、後半がクリエイティブに当たります。
ここで重要な点は、データ分析によってユーザーの行動を客観的につかみ、そのインサイト・気づきをクリエイティブに反映することで、ユーザー体験を向上させることができます。
2) 顧客データに基づいた広告クリエイティブのパーソナライズ
顧客の購買履歴や属性データから、顧客セグメントを作り、各セグメントの興味関心やニーズに合わせて、広告クリエイティブをパーソナライズします。
例えば、特定の商品の購入履歴がある顧客には、似たような関連商品の広告を表示したり、年齢や性別などの属性に合わせて、広告のコピーやデザインを変更したりする、といった具合です。広告の効果を測定して、パーソナライズされたクリエイティブの方が、それまでのクリエイティブよりも高い成果を上げていることを確認します。
顧客データを活用することで、よりターゲットに響くクリエイティブを制作し、広告効果を最大化することができます。
3)ソーシャルメディアのトレンド分析に基づいたコンテンツ企画
ソーシャルメディアのトレンド分析ツールを使って、特定のキーワードやハッシュタグのトレンドを分析します。その結果から、ユーザーの関心が高いコンテンツのテーマや形式を企画します。
例えば、特定のイベントや季節に関連するキーワードのトレンドが高まっている場合には、それに関連するコンテンツを制作したり、特定の動画が流行している場合には、その形式のコンテンツを制作したりしました。
コンテンツのエンゲージメント率を測定し、トレンドを反映したコンテンツが、従来のコンテンツよりも高いエンゲージメントを獲得していることを確認します。
トレンド分析によって、ユーザーの関心が高い情報を把握し、タイムリーなコンテンツを制作することで、ソーシャルメディアでのリーチやエンゲージメントを高めることができるのです。
◾️ AI時代のマーケティングチームづくり
AI時代のいま、成功するマーケティングチームを作るには、実験できる文化、継続的に学ぶ文化を醸成することが大切です。
例えば、Facebookのマーケティングチームは、新しいAIツールやテクニックを定期的にテストし、キャンペーンの効果を向上させています。
また、成長マインドセットを持ち、チームメンバーがAIの進化に適応できるように促すことも重要です。 Googleのマーケティングチームは、最新のAI技術を積極的に取り入れ、常に革新を続けています。
そして、会社としては、成功事例を称え、失敗を責めることではなく失敗から学ぶことで、チーム全体のイノベーションを加速させることができる企業になることができるのです。
AIはすでにマーケティングの世界を大きく変えています。 しかし、AIを使っているのは人間ですし、A Iによって生み出されたサービスや製品を使っているのも人間です。
データリテラシーや創造的な発想力を備えた人材を採用・育成し、AIツールを適切に活用できるハイパフォーマンスなマーケティングチームを作ることが重要なのです。
また、チームの文化として、実験と学習を奨励し、常に新しい技術を取り入れる姿勢を持つことが、今後の成功の鍵となるでしょう。
AI時代のマーケティングで成功するために、今からできることを一つずつ実践していきましょう。
このブログでは、マーケティングや営業に役立つ記事を掲載しています。 他の記事も読み、ビジネスの参考にしてください。
執筆者
石油会社、家電メーカー、大型車両メーカーなどに、新規事業立ち上げ・ブランド構築のコンサルティングと、法人営業にマーケティングを注入する社員研修を提供。 2013年より2024年まで、関西学院大学 経営戦略研究科で教授を務める。
著書は「売れない問題 解決の公式」(日本経済新聞出版)など国内外で24冊。米国、台湾、香港など海外でも講演。テレビ、ラジオの出演や新聞・雑誌への寄稿も多数。YouTubeでも最新のマーケティング情報を発信中。 本名 児玉洋典
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