パーソナライズ戦略とは?〜AI時代のマーケティングコミュニケーション

◾️【経営者必見!】 AI時代のマーケティングコミュニケーションに必須のパーソナライズ戦略とは?

AIがビジネスのみでなく生活にまで浸透してきた今、時代に適したマーケティング戦略が必要です。情報が溢れている今、不特定多数に同じメッセージを発信しても、埋もれてしまいます。

顧客が持つ課題を解決できる"個別化=パーソナライズ"されたメッセージでなければ、顧客の心には刺さりません。

      目次
  1. ◾️【経営者必見!】 AI時代のマーケティングコミュニケーションに必須のパーソナライズ戦略とは?
  2. ◾️ なぜパーソナライズ戦略が重要なのか?
  3. ◾️ AIを活用したパーソナライズの構築ステップ
  4. ◾️ パーソナライズ戦略に有効なRFM分析
  5. ◾️ パーソナライズ戦略の注意点
  6. ◾️ まとめ

実際に、パーソナライズに優れている企業は、そうでない企業よりも40%も多くの収益を上げている、また、パーソナライズされたマーケティングメッセージは、そうでないものに比べて、顧客エンゲージメントを平均で6倍も高いというデータもあります。(データ参照元:The value of getting personalization right--or wrong--is multiplying McKinsey & Company)

顧客エンゲージメントについては以下の記事で説明しているので参照ください。
顧客エンゲージメントとは?成果を出し、売り上げにつながる方法〜顧客離れを防ぐ戦略と施策の事例

もはやパーソナライズが「あれば良いもの」ではなく、「必須のもの」であることを示すデータです。

◾️ なぜパーソナライズ戦略が重要なのか?

AIはビジネスや生活に浸透し、もはやインフラになっています。ただでさえも、S N Sとかで情報が溢れかえっている今、「誰にでも」響くメッセージはもう存在しません。

パーソナライズ戦略の必要性.png

マスメディアを使った広告や、S N Sで多くの人に同じメッセージを届ける手法は、効果が薄いのです。

顧客一人ひとりに合わせたパーソナライズされたコミュニケーションが不可欠であるという背景には、以下のような理由が挙げられます。

- 情報の過多:

情報が氾濫する中で、顧客は自分に関係のない情報に目を引かれないのです。

- 顧客の期待値の上昇:

マーケティングを取り入れている企業がどんどんパーソナライズされているサービスをしているので、顧客は自分に合った情報やサービスを期待するようになっています。

- AI技術の進化:

そしてこの背景には、AI技術の進化により、高度なパーソナライズが可能になったことがあります。

パーソナライズの事例をいくつか紹介します。

NIKEのNike by You

自社Webサイト上で、自分が欲しい靴にパーソナライズできる事例です。
靴の色、紐の種類や、ロゴの色を、サイト上で選びながら、自分の好き靴にしていくというサービスです。顧客にとって"世界に1つだけの自分だけのNIKE"ができるのです。

IKEAの家具シミュレーション

顧客は、アプリ内のカメラで自分の部屋の写真を撮離、その写真に写っている"今ある家具を消し"て、自分が"欲しい家具"をアプリ上で配置することができます。
A R、仮想現実で"自分の部屋のレプリカ"を見ることができるのです。

これにより、店舗に行かなくても想像ができるため、E Cサイトでそのまま買うこともできるので、顧客にとって労力の節約にもなります。

何より、顧客が欲しいのは家具ではなく、自分らしい部屋、とか、そこで楽しく暮らすことが欲しいのです。「この家具、安いですよ」と売り込んでも、顧客には響きませんし、値段の安さで勝負していると、真似されてしまいます。

顧客が欲しいものと、企業が売りたいものは違うということが大原則なのです。

NIKEとIKEAの事例から学べることは、

1)    顧客が感じる自分だけのプロダクトという価値を、テクノロジーで具現化できるようになったこと と、
2)    個人の個と書く"個客"に寄り添う企業姿勢

の2点が、自社だけの価値になる、すなわち差別化になるということです。

ここでは、NIKEとIKEAという大企業の事例で説明しましたが、経営資源に限りがある中小企業やスタートアップでも、A Iを使うことでパーソナライズ戦略を取ることができるようになりました。

一方で、パーソナライズ戦略を取っている企業はまだ多くはありません。
したがって、今パーソナライズ戦略を取れるということは、大きなチャンスなのです。

◾️ AIを活用したパーソナライズの構築ステップ

AIを活用したパーソナライズ戦略を実現するステップを、5段階で説明します。

パーソナライズ構築のステップ.png

1. データ収集

顧客の行動、嗜好、購買履歴などのデータを収集します。

eBayの事例:

オークションサイトのeBayでは、ユーザーの閲覧履歴、購買履歴、検索キーワードなどのデータをリアルタイムで収集していますこれにより、ユーザーの最新の興味や関心を反映したパーソナライズが可能となっています。

2.  AIによる分析

機械学習アルゴリズムを使用して、顧客の自社サイトでの行動パターンを分析して、顧客セグメントを作成します。

Netflixの事例

Netflixは、視聴履歴やユーザーの嗜好に基づいて、詳細なカテゴリ分類を行っています。AIがこれらのデータを分析し、ユーザーの好みを学習することで、高度にパーソナライズされたレコメンデーションを実現しています。

3. 予測モデルの構築

将来の行動や嗜好を予測するモデルを開発します。

Amazonの事例

Amazonは、ユーザーの過去の購買履歴や閲覧パターンを基に、AIを使用して将来の購買行動を予測するモデルを構築しています。これにより、ユーザーが次に購入する可能性が高い商品を事前に推測し、効果的なレコメンデーションを行っています。ちなみに、私が在籍していた2000年当時、まだA Iが浸透していなかった時から、「協調フィルタリング」という考え方のパーソナライズ戦略をしていました。

4. コンテンツの最適化

AIを使用して、各顧客セグメントに最適なコンテンツ、デザインや動画、ブログ記事など、を生成します。

はるやま商事の事例

はるやま商事は、AI「SENSY」を導入し、顧客一人ひとりの購買履歴や嗜好を学習させました。これにより、ダイレクトメールで顧客にぴったりの商品を提案し、来店率を向上させることに成功しています。

5. リアルタイム対応

顧客の行動に応じて、即座にパーソナライズされた対応を行います。

Salesforce Commerce Cloudの事例

三越伊勢丹のギフト特化型ECサイト「MOO:D MARK」では、Salesforce Commerce CloudのAI機能「Einstein」を活用しています

Einsteinは顧客の行動をリアルタイムに分析し、商品一覧や検索結果を一人ひとりに最適化した並び順で表示します。その結果、レコメンデーション経由の売上が全体の40%以上を占めるまでになりました。これらのステップを適切に実施することで、Eコマース企業はAIを活用した効果的なパーソナライズ戦略を構築し、顧客満足度の向上と売上の増加を実現することができます。(Salesforceのサイトより)

一朝一夕では、パーソナライズ戦略の構築はできません。段階を踏んで構築していくことで、より成果につながる戦略になっていきます。

◾️ パーソナライズ戦略に有効なRFM分析

パーソナライズ戦略を構築する上で、マーケティングのフレームワークを活用することで、より現実的な施策にしていくことができます。

事例として、Amazonのレコメンド機能を考えてみましょう。

Amazonは、顧客の購買履歴や閲覧履歴をAIで分析し、「あなたへのおすすめ」としてパーソナライズされた商品情報を表示しています。

これは、まさにAIを活用したパーソナライズの成功事例です。

RFM分析」というフレームワークがベースになっています。

顧客の契約履歴から、Recency(最新の購買日)、Frequency(購買頻度)、Monetary(購買金額)の3つの指標で顧客を分類し、それぞれのグループに合わせたアプローチを行う手法です。AIはこの分析を高度化し、より細かなセグメント分けを可能にします。

この図はそれぞれ縦軸が時期で上に行けばいくほど最近、下に行くほど昔、となります。横軸は頻度を指し、右に行けば行くほど回数が多く、左に行けばいいこと少ないことを意味します。

RFM分析.png

そして奥行きは金額を指し、奥に行けば行くほど多く、手前が少ない、ということを表した表です

自社にとって、一番良い顧客は、契約の金額と回数が多く、直近に購入や契約した顧客になります。すなわち、一番奥の赤丸の顧客、という考え方です。

やり方や手法だけじゃなくて、フレームワークや理論も、身につけておくと、
あなたが、別な業界に行ったりする時にも応用できます。

◾️ パーソナライズ戦略の注意点

パーソナライズは有効ですが、注意すべき点があるので3つほど挙げておきます。

プライバシーへの配慮: 

顧客データの収集・利用は、プライバシーに配慮して行う必要があります。データ利用の目的を明確に伝え、顧客の同意を得ることが重要です。パーソナライズ戦略の注意点.004.png

偏りの排除: 

AIのアルゴリズムに偏りがあると、特定の顧客グループに不利益が生じる可能性があります。アルゴリズムの定期的な見直しが必要です。

過度なパーソナライズの回避: 

あまりにパーソナライズしすぎると、顧客に不快感を与える可能性があります。適切なバランスを保つことが大切です。

◾️ まとめ

経営者、人事部長、企画責任者の皆様から、
「前みたいに、広告の効果が出なくなってきた」
「新規顧客の獲得が難しくなった」
「既存顧客が離れていく」
といった悩みをよくいただきます。

よく聞いてみると、パーソナライズせず、昔ながらの一斉メッセージの手法でコミュニケーションを取ろうとしていることが多いのです。

パーソナライズ戦略なしで新規顧客獲得を行うことは、大海原で無作為に釣り糸を垂らすようなものです。釣り人が魚の好みや習性を理解せずに餌を選んでいるようなもので、顧客の興味や需要に合わない商品やサービスを提供してしまう可能性があるのです。

パーソナライズ戦略なしの新規顧客獲得は、効率が悪く成果を得るのが難しくなります。

法人向けビジネスのBtoBマーケティングの場合は、不特定多数にメッセージを出してもまず間違いなくうまくいきません。AI時代のマーケティングにおいて、パーソナライズはもはや不可欠なのです。

データ収集、データ分析、パーソナライズされた施策の実行という3つのステップを踏むことで、AIを活用した効果的なパーソナライズを実現できます。ただし、プライバシーへの配慮、偏りの排除、過度なパーソナライズの回避という3つの注意点を忘れないでください。

マーケティングとは単なる手法ではなく、顧客視点の文化を企業に根付かせることです。AIは、そのための強力なツールとなります。AI時代のパーソナライズ戦略を実践し、ビジネスの成長につなげてください。

執筆者

マーケティングアイズ株式会社 代表取締役 理央 周(りおう めぐる)
石油会社、家電メーカー、大型車両メーカーなどに、新規事業立ち上げ・ブランド構築のコンサルティングと、法人営業にマーケティングを注入する社員研修を提供。 2013年より2023年まで、関西学院大学 経営戦略研究科で教授を務める。
著書は「売れない問題 解決の公式」(日本経済新聞出版)など国内外で23冊。米国、台湾、香港など海外でも講演。テレビ、ラジオの出演や新聞・雑誌への寄稿も多数。YouTubeでも最新のマーケティング情報を発信中。 本名 児玉洋典 

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