集客が難しい理由とは?マーケティング力で差をつけるAI時代の集客戦略
マーケティング活動で、オンラインにしろ、リアルなイベントや店舗にせよ、多くのビジネスに集客は重要な役割を果たします。しかし、
- 新商品発表のイベントに集客がなかなかできない
- ホームページに集客できず、問い合わせが増えない
- 店頭やE Cサイトに集客ができない
と悩む経営者やマーケティング担当者も少なくありません。
10年ほど前は、バナー広告を出してランディングページに集客する、とか、Facebookにイベントを立ててSNSで周知して集客をする、メルマガで告知していれば大丈夫、と言うこともできました。しかし今はうまくいきません。
なぜ、集客は難しいのでしょうか?
それは「戦略」がないからです。
集客も他のマーケティングと同じで「これさえやれば上手くいく」という魔法のような施策はありません。
AIやITが進化して、便利なツールが溢れる今だからこそ、手法に頼るのではなく、戦略を立てた上で集客をすることが重要なのです。
◾️ なぜ、集客は難しいのか?
まず、集客が難しくなっているのはなぜか?について考えてみましょう。
キーワードは「飽和と変化」です。
1) 飽和
市場の飽和
多くの市場では、競合が増えているため、消費者の注意を引き、製品やサービスを際立たせることが難しくなっています。
情報過多
消費者は日々、大量の情報にさらされています。そのため、特定のメッセージやブランドが埋もれやすく、目立たせることが困難になっています。
2) 変化
テクノロジーとトレンドの急速な変化
デジタルマーケティングのツールやプラットフォームは毎日のように進化していて、
最新のトレンドに遅れないようにすることはもはやできません。
顧客行動の変化
オンラインでの情報収集やレビューの影響力が増えて、顧客が契約や購買に至る意思決定するプロセスが複雑になっています。
これらの理由で、従来は効果があったマーケティング手法では効果が出にくくなっています
さらに、この飽和と変化、そしてA Iの浸透によって、多くの企業がさまざまな手を打ち、顧客価値を高めています。この動きに伴って、顧客の期待はどんどん高まります。
欲しい情報やパーソナライズされた体験を求めるようになっているのです。
こうなると、単に市場に向けて一斉に自社製品を告知するだけでは顧客は見向きもしません。顧客が解決したい課題やニーズに合わせたアプローチが必要になってきているのです。
似たようなものや情報が溢れているなかで、自社ブランドを差別化するのが難しくなってきているのです。
◾️ 日本で求められるマーケティングコミュニケーションの質
集客に限らず、マーケティングコミュニケーションにおいて、日本独特の難しさもあります。
私の米国での勤務や、日本国内での外資系企業での経験をもとに、日本の市場における集客の難しさをアメリカと比較し、違う点を以下に挙げてみます。
1) 文化的な背景
まずは、文化的要因があります。日本では、間接的なコミュニケーションが好まれることが多いのです。「買ってね」という直接的な売り込みが嫌われるのです。
直接的な販売手法やアグレッシブなマーケティング戦略がアメリカと比較すると、受け入れられにくいと言えます。
また、日本人はサービスの質や細かい部分にとても敏感です。製品やサービスに対する期待が高いので、顧客満足度を保つためには、細かいニーズに応える必要があるのです
2)市場の特徴
日本市場では高齢化が進んでいて、年齢層の比率がアメリカより高めです。年齢層ごとにマーケティング戦略が必要になるのです。
日本の小売やサービス業は、顧客サービスの点で発展している部分もあり、飽和状態にある分野が多く、新規参入や差別化が難しいことも事実です。
日本のI T分野では、モバイルツールの利用率が高いく、マーケティング戦略ではモバイルファーストで考えるアプローチが必須です。デスクトップP Cでの施策とモバイルの利用バランスを頭に入れて考える必要があるのです。
◾️ 変化と飽和の中での集客策
日本の市場特有の集客の難しさを克服するには、いくつかの工夫が必要です。ここでは、特に日本市場に適した集客戦略をいくつか紹介します。
1. 文化に合わせたコミュニケーション
直接売り込みをかけるような販売戦略ではなく、顧客の心理と行動の周辺に向けて間接的なアプローチを取り入れる戦略が効果的です。具体的には、以下のようなアプローチが効果的です。
自社製品やブランドの背景にあるストーリーを伝える
BtoCであればターゲット層の価値観やライフスタイル」
BtoBであればターゲット企業の「品質重視とか新しい考えの需要度など意思決定の基準」
地域コミュニティ向けのイベントやプロモーションを通じて親近感を持ってもらう
2)ターゲット層に響くメッセージと届くメディア
ここでも大事なのは「ターゲット像をはっきりさせる」ことです。
高齢者市場なのか若年層市場を狙うのか、というようなデモグラフィックでのセグメンテーションをすることで、特定の年齢層に合わせた製品やサービスを展開するのです。そこで、狙った年齢層がよくみるメディアに出すという王道の戦略がまずは重要です。
若年層に限らず、モバイルファースト戦略は欠かせません。WEBサイトも、スマホでどう見えるか、みやすいかどうかをまずは確認しましょう。スマホでLINEやInstagramを見ることが多いので、その辺りに広告や仕掛けをしていく、ということが効果的です。
同時に、ターゲット層の価値観とライフスタイルも深堀りしていきます。若い層の中でも、値段の安さに響く層もいれば、高くてもいいのでいいものが欲しいという層もいます。この2つの層はそれぞれ全く違う価値観を持っています。BtoBでも同じで、とにかく価格で決める企業もあれば、高くても品質が良いものを求める企業があります。
ターゲットに響くメッセージはでもグラフィックではなく、インサイトと呼ばれる価値観やライフスタイルから導くと効果的です。
3)顧客体験のアップ
とても大事なのが顧客体験の向上です。
顧客体験とは、お客様が商品やサービスを買おうかどうするかを検討して、実際に買って、使うすべての過程で体験するすべての感覚とか印象のことです。
製品やサービスを知ることから始り、情報収集、比較検討、商談、購入、使用、アフターサービスに至るまでの、顧客が経験するすべてが含まれます。
顧客は、このプロセスで良い顧客体験をすると、快適さ、満足感、価値を感じます。
集客の場合でも、この各プロセスで顧客体験を向上させることが重要なのです。
顧客体験を向上させるためには、オムニチャネル戦略が効果的です。
オムニチャネルに関しては、以下の記事で詳しく解説しているので、そちらを参考にしてください。
→ 【図解と事例!】オムニチャネルとは?マルチチャネルとの比較と営業マーケティングの課題別解決方法
オムニとは「すべての」という意味です。オムニチャネル戦略とは、顧客に接するすべてのタッチポイントに"マーケティング的な顧客体験を仕込む"ことを指します。
今は、オンラインとオフラインの境目を感じさせない"シームレスな状態"を提供することで、ストレスなく製品やサービスを体験できることを目指します。実店舗や商談などのオフラインと、ホームページやS N Sなどのオンラインのさまざまなチャネルを一貫して統合するアプローチが必要です。これが今求められる「オムニチャネル戦略」なのです。
◾️ 集客につながるオムニチャネル戦略の実例
オムニチャネル戦略を効果的に実施し、集客に繋げている企業の例を3つ挙げます。
1. Starbucks(スターバックス)のモバイルオーダー&ペイ
スターバックスのアプリを利用して事前に注文・決済すれば、リアル店舗で受け取るときに待ち時間なく商品を受け取れるシステムです。利便性を高めることで「同じコーヒーを買うなら便利に買えるスタバで」という心境になり店舗への集客につながります。
買うたびにポイントが貯まるスターバックスのリワードプログラムはオンラインとオフラインの両方で利用できるので、リピートに繋がります。
2. Disney(ディズニー)マジックバンドシステム
ディズニーワールドの訪問者がもらえるバンド型デバイスで、入園パス、ホテルの鍵、ファストパス、決済システムなどができる体験を提供しています。モバイルアプリも秀逸で、パーク内のアトラクションの待ち時間やダイニングオプションの情報提供、ファストパスの予約などができます。
待つ時間が事前にわかるのであれば、行っても便利に過ごせるよね、と集客につながるのです。
3. コスメのSephora(セフォラ)のデジタルと店舗の統合
オンラインでの商品情報やレビューを、リアル店舗内でも確認できるようにし、オンラインでの購入履歴を基に店舗でのパーソナライズされたおススメを確認できます。
顧客はアプリを使っていろいろな化粧品を試すことができ、その後オンラインまたは店舗で購入できるのです。
いつでも、どこでも欲しい時に欲しいものを提案してくれる顧客体験は、選ばれる理由になり、店舗やサイトへの集客にとても有効です。
これらの企業は、デジタルと物理的なタッチポイントをシームレスに統合することで、顧客に一貫した高品質な体験を提供しています。
このようなオムニチャネル戦略が、集客に貢献していることは間違いありません。さらに、顧客満足度の向上、ブランドへの忠誠心の強化、そして最終的には売上の増加に寄与しています。
集客は「種をまく農夫」に例えることができます。
農夫が畑に種をまくように、ビジネスは市場に自社の存在や価値を植え付けます。
ただ種をまくだけでは不十分でなくて、農夫が水やりや肥料を与え、日々の手入れを行うように、ビジネスも継続的なマーケティング活動や顧客との関係構築を通じて、その種を育てる必要があります。
また、気象条件や季節の変化に対応する農夫のように、ビジネスも市場の変化や消費者のニーズの変動に柔軟に対応し、適切な戦略を立てます。最終的に、農夫が収穫を迎えるように、ビジネスは顧客獲得という実りを得ることができます。
集客は一回限りのイベントとかキャンペーンという戦術ではなく、継続的な努力が必要な戦略なのです。
顧客は、ニーズがある製品や製品やサービス以外欲しくはありません。
集客も、顧客ニーズを満たすことで初めて成り立つのです。
執筆者
石油会社、家電メーカー、大型車両メーカーなどに、新規事業立ち上げ・ブランド構築のコンサルティングと、法人営業にマーケティングを注入する社員研修を提供。 2013年より2023年まで、関西学院大学 経営戦略研究科で教授を務める。
著書は「売れない問題 解決の公式」(日本経済新聞出版)など国内外で23冊。米国、台湾、香港など海外でも講演。テレビ、ラジオの出演や新聞・雑誌への寄稿も多数。YouTubeでも最新のマーケティング情報を発信中。 本名 児玉洋典
集客が上手くいかない、新製品のイベントに集客したい、新しいビジネスを軌道に乗せたい、など、
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