【ビジネス書】モデルナはなぜ3日でワクチンをつくれたのか 田中道昭氏著 常識にとらわない発想で破壊的イノベーションを生むには
■ この本の特徴
モデルナとはこういう会社だ、凄さはここだという
単にモデルナを礼賛する本ではなく、
モデルナを例にとって、
この激変の時代に企業がどう生き残るか、
を示唆する内容になっている。
具体的には、
DXの取り入れ方、姿勢、戦略など。
とはいうものの、企業の経営者が読む本で、
実務担当者には不向きか、というとそうではない。
経営者の仕事は、会社の方向を"決める"こと。
実務担当者や、事業の責任者は、
経営者が正しく判断できるように、
全体最適の視点からも、責任範囲の仕事をしなければならない。
その意味では、多くのビジネスパーソンに役立つ内容と言える。
金融機関のバックグラウンドを持つこの本の著者は、
当たり前だが、私のようなメーカーや事業会社のマーケティングマネージャーの視点とはまた違っている。
資金調達やコスト管理の側面もそうだが、
マクロで物事を見ている点が私には参考になった。
■ この本を自社のマーケティングに活かすには
著者は、世界のトレンドにともなって、市場全体がどう動くかという視点で物事を見ている。
マーケティングや営業の実務担当者は、自分が担当するエリア(多くの場合は日本や国内の地域)になるため、身近な変化や国内での戦略を立てることになる。
したがって、目の前の事実に注力せざるをえない。そしてそれは正しいことだ。
一方で著者はより広い視点で、高めの視座でこの本を書いている。
なので、実務担当者はその視点と視座が自分とどう違うか、
また、この視座視点で見た時に、自分の仕事をどうみるといいか、
を意識して読み進めるといいだろう。
たとえば、モデルなの成功要因は、クオリティー、スピード、スケーラビリティ、コストの4つにある、と著者はいう。この4つは、変化の激しい今当たり前のように必要だ、と言われている。一方で、大企業や歴史のある企業になればなるほど、スピード持って変化に対応することが難しいし、固定費がかかるが故に余分なコストもかかりがちだ。
その中で、モデルナがとった戦略は「モダリティ(=様式や様相)のアップデート」だという。その具体的事例も書かれているので、モデルナが、何をして業界の常識を変えたのか、様式をアップデートしてきたのかを掴み、自分の仕事に当てはめる、といった具合だ。
このように、今の時代に必要なコンセプトを事例を用いて解説しているので、バズワードを使える知識として理解できるのがいい。
たとえば、DXは「デジタル化」「システム化」「クラウド化」「オンライン化」とか、IoTの恩恵はつなげる効果で、ヒトとインターネット、ヒトとモノ、ヒトとヒト、モノとモノ、モノとインターネットで、スマートコインロッカーの事例を上げて説明している、といった具合だ。
上記以外にも、
- アウトカム重視の見える化テクノロジーが重要
- 競争条件の変化について
- Appleウォッチは単なるスマートウォッチではない
- Amazonのカスタマージャーニー
- Amazonがデイスラプトする五つの業界
といったところが参考になる。
中でも私が私の仕事に使える内容としては、「モデルナから学ぶこと」について。
それらは以下の3点だ。
- 大企業からのイノベーションの起こし方
- 社員が起業家マインドセットを持つこと
- 組織ミッションが社員に浸透していること
これからの変化は、経験を超えた変化になる。
ということは、経験で解決できない問題が出てくることになる。
予測をし仮説を立て一歩ずつ進むしかない中、
この本に書かれているような、精度の高い分析による未来予測は、
ビジネスでの意思決定に役に立つ。