共創型マーケティングとは?顧客とともにブランド熱量を上げるAI時代の戦略と事例
◾️ 【マーケティング担当者必見!】共創型マーケティングとは?
顧客と一緒に作り上げていく「共創型」のマーケティングが、2025年に主流になります。
共創型マーケティングとは、企業と顧客が協力して価値を創造するプロセスです。従来の「企業が作り、顧客が買う」という「商品の買い手」とか「受けとり手」の関係から、「企業と顧客が一緒に作り上げる」という「共創者」「共同開発者」っていう関係に変わるのです。
商品開発やサービス設計、さらにはブランディングという全てのプロセスに、顧客の声が反映されることになります。共創型のマーケティングによって、顧客と企業の一体感が出て、関係した多くの顧客が「自分の意見が商品やサービスに反映されるブランドに対して、より忠誠心を感じる」ことになります。
◾️ 共創型マーケティングの事例
共創型マーケティング事例を紹介します。
レゴ(LEGO)の事例:
レゴは顧客との共創をいち早く取り入れた企業の一つです。同社は「LEGO Ideas」というプラットフォームを通じて、顧客が新しい製品アイデアを投稿できる仕組みを提供しています。
採用されたアイデアの投稿者は、報酬とコミュニティ内での評価が得られます。この取り組みによって、レゴは商品ラインナップの充実と顧客の忠誠心を向上させることに成功しました。
ハーレーダビットソンの事例:
ハーレーダビッドソンは、バイクのオーナーが参加するコミュニティ、「H.O.G.」Harley Owners Groupを運営しています。
(ハーレーダビットソンのサイトより)
H.O.G.の共創の仕組みは、ユーザーが集まりライフスタイルを共有できる場をオンラインで提供しています。リアルでのブランド体験を深めることができる、ツーリング体験やイベントも行っています。
以下のH.O.G.のサイトにあるように、ハーレーの世界観を出しています。
H.O.G.に参加することによって、ハーレーファンたちはブランドの一部になったような気分を味わうことができます。ひいては、ハーレーのブランドは単なるバイクメーカーを超え、ハーレーはライフスタイルの象徴としての地位を強いものにしたのです。
JOYSOUNDの事例:
JOYSOUNDのカラオケボックスは、顧客が「歌う」だけではなく、双方向で通信できる仕組みになっています。
カラオケボックスどうしを接続し、アイドルとファンが同時に繋がれた画面越しに一緒に盛り上がれるといった具合です。V-Tuberと歌えたり、占い師に占ってもらったりできますし、場所が離れていても仲間とオンラインでのカラオケ飲み会もできのです。
まさに、顧客の楽しさや共感でブランドの熱量を高める、顧客との"共創"型マーケの新しい形です。
◾️ 共創型マーケティングが2025年に重要になる理由
なぜ、この共創型マーケティングが2025年に特に重要になるのでしょうか?
テクノロジーの浸透:
まず、AIやIoTのテクノロジーが進化し、人々の生活に浸透したことが挙げられます。
顧客は、企業ともリアルタイムでつながること、自分だけの体験ができることが当たり前になったのです。企業も、SNSやクラウドプラットフォーム使って、顧客のフィードバックを瞬時に収集し、商品やサービスに反映させられることもでき露ようになりました。
顧客の変化:
顧客の価値観もここ数年で大きく変わりました。顧客は、ただ製品やサービスを買うだけでなく自分がそのプロセスに関わりたいと感じるようになったのです。「参加型エコノミー」というトレンドです。
SNSでの広がりやクラウドファンディングで、顧客自身が提案者や支援者になる動きが加速しています。自分のレシピで焼いたミスタードーナツのポンデリングを、SNSに投稿する"焼きポンデリング"が広まったのも参加型の1つと言えます。
◾️ 共創型マーケティングの構築ステップ
共創型マーケティングをどう構築していくのか、というステップを紹介します。
1)目的の設定:
まず、共創を通じて何を達成したいのか、明確な目的を設定することが重要です。
共創型マーケティングを手法の1つと捉えるのではなく、事業戦略として捉えるべきです。
したがって、共創型マーケティングのビジョンと到達目標をはっきりさせることから始めるのです。
例えば先ほどのLEGOの事例でいえば、顧客参加型のイベントを開催する、とか、顧客が作ったオリジナルのLEGOをサイトで公表する、というような手法は後で考えるのです。
共創型マーケティングの事業を通して、
- 新製品の市場導入:アイデア創出と具体的製品の開発
- ブランドイメージの向上:顧客との関係性をより強くできるブランドにする
- 顧客ロイヤリティ向上:顧客がリピートし、かつ、推奨してくれるブランドを目指す
- イノベーションの加速:市場の変化に対応できるようにする
といった具合です。抽象的な目標に加えて「3年間で売り上げを1.5倍にする」というような数値を含む具体的な目標値を入れることが効果的です。
2)全体の枠組みを設計する
目標達成のために、どのような共創活動を行うのか、ターゲット顧客は誰か、社外ネットワークの構築が必要か、どのようなプラットフォームを利用するのかという全体像を大きな枠組みで設計します。
3)顧客像を明確にする
戦略の中でも重要なのが、自社の共創パートナーと共創に参画してもらう顧客層の特定です。特に、顧客が感じているニーズや価値観といった心理的要素を深く理解する必要があります。
顧客理解と、セグメンテーション、ターゲティングについては以下の記事で説明しているので参考にしてください。
→ STP分析とは?目的、やり方、活用方法とAmazonの事例
選定した顧客層に対して、共創活動への参加を呼びかけます。SNS、コミュニティサイト、イベント、過去の顧客リストなど、様々なチャネルを活用して募集を行います。
4)共創の場とそこでの実施内容を考える
顧客やパートナーがアイデアを出し合える「場」を設けます。オンラインとリアルの両方が用意できれば理想的です。「モノを売る場所」ではないという点に注意して設計します。
オンライン:
- オンラインプラットフォームを構築〜例:レゴの「LEGO Ideas」
- アプリやデジタルツールを活用〜例:スターバックスのモバイルアプリ
- SNSやクラウドファンディングの活用
リアルな場:
- リアルイベント・ワークショップの開催〜例:IKEAの「IKEA Hackers」
- オープンイノベーションプログラムの実施
- ワークショップ、フォーカスグループ
実施内容の設計:
アイデア投稿、意見交換、投票、共同編集など、共創活動に必要な内容を設計します。
5)共創活動の実施
アイデア創出:
ワークショップ、アイデアコンテスト、アンケートなど、様々な手法を用いてアイデアを創出します。
アイデアの評価:
顧客の投票や専門家の評価など、様々な方法でアイデアを評価します。
プロトタイプ作成:
選定されたアイデアに基づいて、プロトタイプを作成し、顧客にフィードバックを求めます。
6)共創成果の実装
製品・サービスへの反映:
顧客のフィードバックを参考に、製品やサービスに反映します。
コミュニケーション: 共創活動の結果を顧客に報告し、感謝の意を伝えます。
継続的な改善:
顧客からのフィードバックを参考に、継続的に改善を行います。
顧客からの意見や提案をただ受け取るだけではなく、それを迅速に商品やサービスの改善に反映させます。ここでは、データ分析ツールやCRMシステムが大きな役割を果たします。
7)成果を共有する
共創プロセスでは、顧客やパートナーに対して透明性を保つことが重要です。プロジェクトの進捗や成果を公開し、信頼関係を築きます。
最後に、共創プロジェクトの成果を広く共有し、関与した全てのステークホルダーに感謝の意を伝えます。これにより、次の共創へのモチベーションが高まります。
ただし、共創型マーケティングの注意点もあります。顧客の声に振り回されすぎない、企業としての専門性や方向性を保つことが重要です。また、知的財産権の管理に注意を払う必要があります。
◾️ BtoB法人ビジネスでの共創型マーケティングの事例
ここまで消費財、BtoCの事例を紹介してきましたが、BtoBにおいても共創型マーケティングは効果的です。以下に、企業向けソフトウェアの開発企業の事例で解説します。
1. 目的の設定と戦略策定
ソフトウェア企業A社は、顧客企業との共創を通じて、業界特化型の機能を開発し、顧客満足度向上を目的としました。
2. 共創パートナーの選定
A社は、自社のERPシステム導入経験が長く、新機能への期待が高い顧客企業を優先的に選定しました。
そして、既存顧客、セミナーや展示会の参加企業、紹介など、様々なチャネルを通じて共創パートナーを募集しました。顧客満足度調査をし、高い評価を得ている顧客企業に対して、個別にご提案し、共創への参加を呼びかけました。
3. 共創プラットフォームの構築
A社は、プロジェクト管理ツールを活用し、顧客企業とのコミュニケーションを円滑に行えるようにしました。アイデア投稿には、自由記述形式と選択肢形式の両方を用意し、顧客が自由に意見を共有できるようにしました。
4. 共創活動の実施
アイディア創出の段階で、ワークショップを通して顧客企業の担当者と共同で、理想のERPシステムのイメージを描き、具体的な機能要求を洗い出しました。
その後、顧客投票と、自社の開発部門による技術的な評価を組み合わせ、優先度の高いアイデアを決定しました。そこから、特定機能について、プロトタイプを作成し、顧客企業に実際に使用してもらい、使い勝手や改善点を確認しました。
5. 共創成果の実装
顧客からの意見を参考に、ERPシステムの新機能を開発し、リリースしました。
その後、共創活動の成果をまとめた報告書を顧客企業に送付し、今後の展開について説明しました。感謝の意を伝えたのです。
以降も、定期的に顧客満足度調査を実施し、改善点を見つけ、次の共創活動に繋げました。
6. 評価と改善
新機能導入後の顧客満足度が向上し、売上も増加したことを確認しました。
一方で、顧客企業とのコミュニケーション不足、アイデアの具体化が難しいなどの課題が明らかになりました。定期的な進捗報告会を実施し、コミュニケーションを強化するとともに、アイデアを具体化するワークショップを導入しました。
BtoBにおける共創型マーケティングのポイント
企業を顧客とする法人ビジネスの場合は、以下のような点に留意してすすめるといいでしょう。
- 長期的な関係構築: 一度の共創活動で終わらせるのではなく、継続的な関係を築くことが重要です
- 信頼関係の構築: 顧客との信頼関係を築き、安心して意見を交換できる環境作りが大切です
- 両者(両社)にとってのメリット: 顧客(企業)にとっても自社にとっても、win-winの関係になるような共創活動を目指します
- 柔軟性: 顧客の意見や市場の変化に柔軟に対応できる体制が必要です
BtoBにおける共創型マーケティングは、顧客との関係を深め、より顧客にフィットしたソリューションを提供するための有効な手段です。上記を参考に、貴社のビジネスに合った共創型マーケティングを構築してみてください。
◾️ まとめ
共創型マーケティングは、2025年以降、企業が成長し続けるための鍵となる戦略です。顧客やパートナーとの協力を深め、新しい価値を共に創り出すことで、他社との差別化をはかれることができます。具体的には以下のような効果が期待できます。
- 顧客満足度の向上: 顧客が製品開発に参画することで、愛着が生まれ、満足度が向上します
- 新製品開発の加速: 顧客の生の声を聞きながら、短期間で新製品を開発することができます
- ブランドイメージの向上: 顧客との共創を通じて、ブランドイメージが向上します
- 社員のモチベーション向上: 顧客と直接関わることで、社員のモチベーションが向上します
これからの時代、顧客は単なる「消費者」ではなく、顧客は「共創者」としてビジネスに関わることを望んでいる す。あなたの企業も、ぜひこの新しいマーケティング手法を取り入れてみてください。
執筆者
石油会社、家電メーカー、大型車両メーカーなどに、新規事業立ち上げ・ブランド構築のコンサルティングと、法人営業にマーケティングを注入する社員研修を提供。 2013年より2023年まで、関西学院大学 経営戦略研究科で教授を務める。
著書は「売れない問題 解決の公式」(日本経済新聞出版)など国内外で23冊。米国、台湾、香港など海外でも講演。テレビ、ラジオの出演や新聞・雑誌への寄稿も多数。YouTubeでも最新のマーケティング情報を発信中。 本名 児玉洋典
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