2024.12.04
人財開発

営業部門でマーケティングに向いている人材とは?:マーケターの適性

◾️ 【経営者必見!】マーケティングに向いている人材とは? 

うちの社内でマーケティングに向いているのは誰ですか?
マーケティングに力を入れていきたいという経営者からよく聞かれる質問です

法人相手の営業組織にマーケティング視点を入れなければ、というニーズの中、
今の営業部の中で「誰が適任なのか?」と悩んでの相談です。

マーケティングに向いている人材に必要なことを一言でいうと
両極のクロスロードに立てる人」です。

「クロスロード」とは、異なる2つ以上の要素が交差する地点や、組み合わせが生まれる場面をさします。

マーケティングでは、「感性と論理」「アートとサイエンス」といった対極的な要素が交わるところで、新しいアイデアや戦略が生まれます。マーケティング思考を持てる人材は、このクロスロードで力を発揮するスキルが必要なのです。
マーケティング思考についてはこちらの記事を参考にしてください。
法人営業に有効なマーケティング思考の持ち方

マーケティングは、単に商品を売るための手段ではありません。企業と顧客、そして社会全体を繋ぐ奥深い考え方を会社として実践することです。

◾️ マーケターに向いているクロスロードのスキルとは?

マーケティングの仕事の中で、感性と論理、アートとサイエンスが交差するクロスロードで
成果を上げるには、どんなスキルや特性が必要なのかを、事例を交えながら説明します。

-    論理と感性

まず、1つ目のクロスロードは「論理と感性」です。
論理とは、売上や認知度などの数字やデータを分析して、現状を正しく把握する力や、異なった意見を持つ社内や顧客に説得力ある説明ができる力です。
一方で感性とは、顧客に刺さる広告表現ができたり、顧客との関係性を作ることができる人間力を指します。

この2つのバランスが取れていることです。

例えば、ある飲料メーカーの事例。新商品の開発にあたり、市場データを分析したところ、「健康志向」がトレンドとして浮かび上がりました。この冷静なデータ分析力があったからこそ、商品の方向性を「無糖」「天然素材」に絞り込むことができました。

しかし、それだけではありません。このデータを活かして、「忙しいオフィスワーカーが午後に一息つく瞬間に寄り添う」というストーリーを創り上げました。このクリエイティブな着想が、商品のパッケージや広告に反映され、大ヒットにつながったのです。

ロジカルにデータを分析する能力と、顧客の心を動かすアート的な発想の両方を兼ね備えた人が、マーケティングに向いていると言えるのです。

-    バランス感覚

次に、マーケティングには「バランス感覚」、さじ加減が欠かせません。
特に、社内外で異なる関係者と調整する力が求められます。

私が関わったある製造業のケースでは、新しい製品を市場に出す際、製品開発チームはコスト面を重視し、営業部門は即効性のある施策を求めていました。一方で、マーケティング部門は、長期的なブランド価値を築く戦略を提案していました。

この2部門の異なる意見をまとめ、全体最適なプランを導き出すのに必要だったのが「横串を刺す」能力、いわゆるバランス感覚でした。

さらに社外では、広告代理店やWeb制作会社との調整があります。例えば、キャンペーンのクリエイティブ案が、データに基づく戦略とズレていると感じた場合、それをどうフィードバックし、いい広告を作るかが重要です。ここでは、相手を納得させる説得力と、関係性を壊さないコミュニケーション力が求められます。

こうしたバランス感覚を持った人が、社内外でマーケティングの「ハブ」として活躍します。

テレビ番組の制作のプロデューサーは、脚本家、監督、出演者、制作スタッフなど、
様々な専門家と連携します。それぞれの立場の人たちは、脚本家はストーリーにこだわり、監督は映像美や演出を重視し、出演者は自分の演技を最大限活かしたいと思うでしょう。一方、スポンサーや視聴者は、もっと別の期待を抱いているかもしれません。

この時、プロデューサーの役割は、これら異なる意見や立場を調整しながら、
「視聴者にとって価値のある番組を作る」
という共通の目標に全員を導くことです。

マーケターも同じように、社内の様々な部署や外部のパートナーをまとめます。

例えば、製品開発チームが「もっとコストを下げたい」と言い、営業チームが「早く売り出したい」と主張する中、

マーケティング部門は「長期的なブランド価値」を考えて調整役を果たします。この社内での「横串を刺す」役割が、まさにマーケターの重要な仕事です。

また、社外では、広告代理店やWeb制作会社とのやり取りがあります。

たとえば、キャンペーンのクリエイティブ案が、データに基づいた戦略とズレている場合、
プロデューサーのように相手を納得させる説得力と、良い関係を保つためのコミュニケーション力が求められます。

つまり、マーケターには
「全体のバランスを見ながら調整できる力」と、
「関係者全員を同じゴールに向けて動かす力」
が求められるのです。

このバランス感覚は「攻撃的なミッドフィルダー」のような存在です。
例えば、営業がフォワードだとしたら、営業がゴールを決めやすいようにパスを出すのがミッドフィルダーの役割です。同時に、全体の戦略を把握して、チーム全体が一つの目標に向かって動けるようにコントロールします。
また、管理会計などを支える「ボランチ」のように、経営的な視点を持ちながらバランスを保つことも重要です。マーケティングは、こうした複数の役割をこなす総合力が必要なポジションです。

マーケティングは一人で完結する仕事ではありません。

だからこそ、この「テレビ局のプロデューサー」や「攻撃的ミッドフィルダー」のような役割を意識することが大事です。

-    好奇心と現場感覚

次に挙げたいのは、「好奇心」と「現場感覚」です。


あるIT企業のマーケターの事例です。彼は、顧客アンケートの結果だけに頼らず、直接顧客の会社に訪問して現場を見て回りました。その結果、単なる「機能性の向上」だけでなく、
ユーザーが困っている「導入時の手間」を解消することが、購入の決め手になると気づきました。

データ分析はもちろん大事ですが、現場に行かなければわからない「肌感覚」を持つことで、
顧客目線の価値を提供できるようになります。


つまり、新しいことに好奇心を持ち、自ら動いて見つけにいくタイプの人がマーケティングで成功しやすいのです。

マーケターは、探検家のような好奇心を持って新しい市場や顧客のニーズを探る必要があります。

探検する時に、地図を持っていても、現地に足を踏み入れなければ本当の地形や状況はわかりません。

同じように、机上のデータはマーケティングの「地図」にすぎません。データをもとに仮説を立てたら、実際に現場に出向き、顧客や取引先の声を直接聞くことが必要です。

ある家電メーカーのマーケターは、アンケートデータだけでは捉えきれない、消費者の「実際の使い方」を知るために、製品を使っている家庭を訪問しました。

そこで初めて、「キッチンに設置する際のスペースの悩み」が商品の売れ行きに影響していることに気づきました。

この現場での気づきが、次の商品開発に活かされ、大ヒット商品を生むきっかけとなったのです。

マーケターはシェフのような「肌感覚」を持つことも大切です。

シェフはレシピや計量だけで料理を完成させるのではありません。食材の鮮度や火加減、調理中の香りや味見によって、その場で微調整を加えます。

同じように、マーケターも机上のデータだけで判断するのではなく、現場での実際の状況に応じて戦略を調整できる柔軟性が必要です。

例えば、小売業のマーケターが、新しい店舗のオープニングキャンペーンを企画したとします。データ上は、SNS広告が一番効果的という結果が出ていました。しかし、実際に店舗を訪れ、地元の顧客層と話してみると、紙媒体のチラシが地域の主要な情報源であることに気づき、戦略を変更。その結果、初日から大盛況となりました。

この「現場の肌感覚」が成功のカギとなったのです。

いかがでしたか?
マーケティングに向いているのは、
「感性と論理」、「バランス感覚」、「好奇心と現場感覚」
を持った人材です。

◾️ 営業組織から「クロスロードに立てる人材」を選ぶ方法

マーケティングにおいて「クロスロードに立てる人材」、つまり感性と論理を兼ね備えた人材を営業組織から見つけるには、以下のようなポイントを基準に選抜すると効果的です。

1. データ活用力を見極める

選抜基準:データに基づいて行動や戦略を考えられるか

営業の中でも、売上データや顧客データを分析し、自分なりに仮説を立てて行動している人を探しましょう。

:顧客ごとに提案内容を変えたり、受注率を向上させるための独自の戦略を持っている営業パーソン。

見極める方法
実績の背景を聞く面談を実施:たとえば、「この成績を出した背景で、どのようなデータを使って戦略を立てましたか?」と質問し、データ活用力を確認します。

2. 顧客理解力を観察する

選抜基準:顧客視点に立って、真のニーズを理解できるか

単に売り込むのではなく、顧客が本当に必要としているものを見極め、それに応じた提案ができる人材は、マーケティングに向いています。

見極める方法
同行や商談の振り返り:顧客のニーズに応じて提案内容をどのようにカスタマイズしたかを具体的に説明してもらう。
「なぜその提案をしたのか?」を深掘り:顧客視点に立てているか確認します。

3. クリエイティブな発想力

選抜基準:独自のアイデアや工夫で顧客の心を動かしているか

クロスロードに立てる人材は、論理だけでなく「感性」も重要です。たとえば、商品のプレゼン方法を工夫して顧客の心を動かしている人材は、マーケティングでも活躍できます。

見極める方法:

提案資料やプレゼンを評価:資料やプレゼンに独自性や工夫が見られるかどうかを確認します。
クリエイティブな成功体験の共有:たとえば、「過去にどのような工夫をして受注につなげましたか?」と聞きます。

4. 好奇心と探究心

選抜基準:新しいことに挑戦し、現場を自分の目で確かめる姿勢があるか

現場を訪れたり、商品の仕組みを深く理解しようとする好奇心旺盛な営業は、マーケティングの現場で強みを発揮します。

見極める方法

自主的な取り組みを観察:たとえば、「商品の製造現場を訪問した」「顧客の声を聞くために独自にアンケートを行った」など、行動力がある人を評価。
新しいツールや方法の活用:営業の中で、デジタルツールや新しい営業手法を進んで取り入れている人も候補になります。

5. バランス感覚と調整力

選抜基準:社内外で異なる利害を調整し、全体をまとめる力があるか

営業部門の中でも、チームをまとめたり、他部署と連携して成果を出した経験がある人材は、マーケティングにおける「クロスロード」を担える可能性が高いです。

見極める方法:
リーダーシップ経験の確認:たとえば、「他部署との連携プロジェクトをどう進めましたか?」と聞いて、調整力やリーダーシップを評価します。
トラブル対応の事例を確認:利害の異なる関係者をどのようにまとめたかを具体的に話してもらいます。

◾️ マーケティングに向いている人材を選ぶプロセス

最後に、営業からマーケティング部門に向いている人材の選考プロセスを挙げておきます。

  1. 基準を共有:営業リーダーやマネージャーに、選抜基準を明確に伝える
  2. 候補者リストを作成:各基準に基づいて、候補者をリストアップ
  3. 観察期間を設ける:商談同行やプロジェクトでの働きぶりを観察する
  4. 面談やワークショップを実施:事例を深掘りする質問やグループディスカッションで、候補者の適性を確認
  5. 育成プログラムを提供:マーケティングに必要な理論やフレームワークを学ぶ機会を与え、適性をさらに引き出す


営業組織から「クロスロードに立てる人材」を選ぶには、データ分析力や顧客理解力だけでなく、クリエイティブな発想力やバランス感覚を見極めることが重要です。選抜後は、マーケティングの視点を養う育成機会を提供することで、さらに力を発揮できるようになります。

執筆者

マーケティングアイズ株式会社 代表取締役 理央 周(りおう めぐる)

石油会社、家電メーカー、大型車両メーカーなどに、新規事業立ち上げ・ブランド構築のコンサルティングと、法人営業にマーケティングを注入する社員研修を提供。 2013年より2023年まで、関西学院大学 経営戦略研究科で教授を務める。
著書は「売れない問題 解決の公式」(日本経済新聞出版)など国内外で23冊。米国、台湾、香港など海外でも講演。テレビ、ラジオの出演や新聞・雑誌への寄稿も多数。YouTubeでも最新のマーケティング情報を発信中。 本名 児玉洋典 

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