2023.05.03
人財開発

経営課題としてのリスキリング 企業としての人財開発の仕組み構築とビジネスパーソンのキャリア形成

リスキリングは経営課題 日本企業の学びとキャリア考 小林祐児氏著を読了。

自分のスキルをアップデートするために学び直すリスキリング。

今のビジネス環境において重要なテーマとして話題になっています。
技術や社会の変化が速まり、ともなって企業間の競争も激しくなる中、
市場で優位性を保つためには、
スピード持って、質が高い意思決定を素早くできることが求められます。

すなわち、人材の価値が変化しているため、
「何ができるか」「何をしなければならないか」も、
ともなって変わってきています。

企業内においても、人材がアウトプットする価値・質の高さがより求められる、ということに他なりません。

この本は、そのあたりを経営においてどう捉えていくのか、
を「仕組み」として解説しています。

まずなるほど、と思ったのが「リスキリングとリカレント教育の違い」について。

リスキリングが現在のスキルをアップデートすることに対し、リカレント教育は職業訓練や再教育を指すとのこと。

私の解釈は、
リカレント教育が学び直し、知識の再編といったイメージで、
リスキリングは、今持っているスキルを最新のものにする、とか、
営業のスキルにマーケティングやイノベーションを付加する、
といったイメージです。

このあたりの違いを認識して読み進めると、
なぜリスキリングが大切なのか
リスキリングを企業経営にどう取り込んでいくべきか、
をより深く理解できます。

企業の人事部長、営業部長、管理部長、といった管理職や、社長、役員の経営者の多くにとって、

  • 技術や社会の変化についていけず、業務に支障をきたすこと
  • 若手社員の育成に苦労していること
  • 人材の流出

といった悩みはついて回ります。

市場の変化にともなって業務内容の多様化し、
必要な人材も多岐にわたります。
そのためには多様なスキルを持つ人材を確保する必要が出てくる中で、
人材のリスキリングが必要だ、ということなのです。


企業の人材教育における工場モデルの限界とは?

次に参考になった内容は、「工場モデルの限界」についてです。

著者のいう企業の人材教育における工場モデルとは、
スキルの明確化
必要なスキルを身につける
ジョブをマッチング
という直線的なものです。

先程述べたように、今必要とされる社員の学習機会としてのリスキリングは「スキルのアップデート」を促すものであるべきです。

変化の激しい今のビジネス環境においては、
社員一人ひとりが自分に必要なことは何か、を自覚して、
それに応じたスキルアップが必要です。
企業の中においても、自発的な学びやキャリアプランを、
社員自らが立てることが重要なのです。

つまり、企業が社員に対して提供する研修や学習機会だけでは、社員が必要なスキルや知識を十分に習得できないという潜在的な問題があります。

また、企業が社員に対して提供する学習機会は、一定の枠組みの中で行われることが多く、個人のニーズやペースに合わせた学びには対応しきれない場合があります。そのため、社員一人ひとりに合わせたカスタマイズされた学びが必要とされます。さらに、社員が学んだことを実践する機会やフィードバックを得る機会を設けることも必要です。

企業がステレオタイプで構築した「工場(のような)モデル」だけでは、これらの課題に対応できないと著者はいっています。

リスキリングの3つの学びであるアンラーニング、ソーシャルラーニング、ラーニングブリッジとは

3点目は、リスキリングの3つの学びであるアンラーニング、ソーシャルラーニング、ラーニングブリッジについての解説です。

著者はこの3つを、それぞれ以下のように分類しています。

  • アンラーニング: 自分自身で問題解決を行い、自分で学びを得ること。自己学習や独学、実践的な学びを指します。
  • ソーシャルラーニング: 同じ目的や興味を持つ人たちと交流しながら、相互に学び合うこと。グループ学習や共同制作、コミュニティでの学びを指します。
  • ラーニングブリッジ: 既存のスキルや知識を活かしながら、新しいスキルや知識を習得すること。異なる分野や業種への転職、新しい技術の習得、ビジネススキルの習得などを指します。

これらの学び方はそれぞれ、従来の企業研修や学校教育のような、一方向からの知識の受け取りではなく、自己主導的で自由度が高く、実践的な学びを特徴としています。現代のビジネス環境において、スピード感のある変化に対応するため、また、自己成長を促すためにも、これらの学び方が重視されている、図書者は言っています。

研修などの社会人としての学習機会提供と社内に変化を生み出す仕組みの関係は?

研修などの社員教育の一環としての学習機会提供は、
社員のスキルアップを促すための重要な手段ですが、
単に研修を提供するだけでは、社内に変化を生み出すことができません。

研修や学習機会を提供することは、
社員のスキルアップのための基盤となりますが、
社内に変化を生み出すためには、
継続的な取り組みが必要です。

また、ビジネスパーソンの学びとは、
覚えること、知識をインプットすることだけでは十分ではありません。
仕事での成果につなげて初めて意味を持ちます。

そのためには、学んだ社員が仕事で実践できるように、
それによって、社員一人一人が能動的に動けるように、
「自分で」変わらなければなりません。

そのためには、リスキリングなどの研修の実施後に、
社内に向けて受講した社員の行動の変化を生み出す仕組みとして、
学んだことを実践する機会を設け、かつそれを見える化する、
また、社員同士でコミュニケーションを取れる場を提供すること、
が必要になります。

同時に、学んだことを会社として評価し、
フィードバックを行うことも重要です。

さらに、社員が自己成長を目指すために、
キャリアアップ支援の仕組みを整備することも効果的です。

これらの仕組みを整備することで、
社員は学びを実践し、成長していくことができるからです。

ここまでのまとめ

現代のビジネス環境においては、
技術や社会の変化が加速し、
従来の大事だとされてきたスキルだけでは対応できない課題が増えています。

こうした環境下で、企業がリスキリングに取り組むことは、
競争力を維持するために不可欠な課題となっています。

しかし、単に研修などで学習機会を提供するだけでは、
社員一人ひとりの成長や、社内に変化を生み出すことができません。

社員一人ひとりが自己成長を目指し、
継続的な学びを実践するためには、
アンラーニングやソーシャルラーニング、
ラーニングブリッジのような自己主導的で、
自由度が高い学び方が重要です。

また、企業は、社員が自己成長を目指し、
成長することを支援する仕組みを整備することが必要です。

これによって、社員一人ひとりが成長し、
ひいては企業も成長し、急な変化にも柔軟に対応することができます。

リスキリングに取り組むことは、
企業としての成長や社会貢献にもつながるため、
今後ますます重要な課題となることが予想されます。

ビジネスパーソンが活かすには

ビジネスパーソンがこれらの考え方を自分の仕事に活かすためには、
以下のような方法が挙げられます。

まず、自己主導的で自由度が高い学び方を実践することが重要です。
例えば、アンラーニングやソーシャルラーニングを取り入れ、自分自身で学びを得られる習慣をつけたり、同じ目的や興味を持つ人たちと交流しながら学び合うことが必要です。

また、ラーニングブリッジを実践し、既存のスキルや知識を活かしながら、新しいスキルや知識を習得することも大切です。

さらに、自己成長を目指すために、キャリアアップやキャリアアップ支援の仕組みを整備することも必要です。自分自身がどのようなスキルや知識を必要としているのかを自己評価し、それに合わせた学びやキャリアアップの計画を立てることが重要です。

このような話をすると「うちの会社はやってくれない」と嘆く声を聞くことがあります。新しい仕組みを会社に導入するにはパワーが必要です。でもそこで諦めていてはもったいないですよね。自分から声をあげてみるのも1つだと思います。

社内に変化を生み出すためには、社員同士のコミュニケーションを活発化させることや、学んだことを実践する機会を設けることが必要です。自分自身が積極的に学び、実践することで、自己成長だけでなく、企業や社会に貢献することができます。

以上のように、自己主導的で自由度が高い学び方を実践し、キャリアアップや社内に変化を生み出す仕組みを整備することで、ビジネスマンは自己成長を促し、企業や社会に貢献することができます。

企業経営者がリスキリングを経営課題として捉えるには

企業経営者がこれらの考え方を自社経営に活かすためには、
以下のような方法が挙げられます。

まず、社員一人ひとりが自己成長を目指せる仕組みを整備することが重要です。継続的な学びを支援するために、アンラーニングやソーシャルラーニング、ラーニングブリッジのような自己主導的で自由度が高い学び方に取り組むことが重要です。

また、社員が自己成長を目指すためのキャリアアップ支援の仕組みを整備することも大切です。人事・教育部門に「社員同士のコミュニケーションを活発化させ、学んだことを実践する機会を設けることが必要だ」という方針を出すのも1つでしょう。

社員同士が情報や知識を共有し、相互に学び合うことができるような環境を整えることで、社員一人ひとりが成長し、企業全体の競争力を高めることができるからです。

また、企業経営者自身も、自己成長を目指すことが必要です。新しいビジネスモデルやテクノロジー、社会的な問題について、継続的に学び、自己変革を進めることが求められます。自らの成長を通じて、企業戦略の見直しやビジネスモデルの変革を進めることができます。
以上のように、社員一人ひとりが自己成長を目指すための環境を整備し、企業経営者自身も継続的な学びを実践することで、企業は変化に対応する柔軟性を持ち、成長を継続することができます。

この記事で参考にした本

マーケティングアイズ株式会社 代表取締役
理央 周