【ビジネス書】論理的思考のコアスキル 波頭 亮氏著〜法人営業のマーケティングに必要なロジカルシンキングのために
■ 私がこの本を手に取った理由
法人向けの営業、BtoBビジネスでの営業での商談においては、
「理にかなった説明」が必要になる。
相手が企業人であり、契約に至るまでの意思決定に複数のキーマンが関わるため、感覚的な説明や説得力のない商談内容では、こちらの意図を伝えきれないからである。
いわゆる「ロジカルシンキング」が必要になるのだ。
ではロジカルシンキングとは何か?と聞かれると「?」となってしまうビジネスパーソンも多い。なぜ、ロジカルシンキングは重要だと言われているのに、なかなかできないのか?
その理由の1つは「手法から入ってしまう」ことだろう。
ロジカルシンキングの頭になるにはXXをすればいい、という書籍やセミナーも多いが、それはある程度はらに落ちている人に理解できることだ。
手法を得る前に、そもそもロジカルシンキングとは何かという定義と、その中身を理解していないと、日常の業務で使うことは難しい。
営業やマーケティングにおいて、相手になる顧客や市場は常に変化している。また、いずれも人間なので、千差万別でつかみどころもない。
なので、直感で気づき素早く手を打つことは重要だが、それだけでは十分ではない。論理的に考え、自分のアイディアや直感があっているかどうを確かめることや、自分の考えを相手に筋道立てて説明することが重要なのだ。
■ この本の特徴
この本は、多くの抽象的な言葉や考え方を著者が分かりやすく"定義"している。
- 「論理的思考」とは、根拠 論理(=筋道) 結論から成り立つもの
- 「情報を分ける」「比べる」「くくる」ことがその中身
- 具体と抽象の双方が必要であること
といった具合だ。
この辺りをはっきりとさせた上で、
演繹法と帰納法の違いはどこにあるのか、
- "したがって"と"なぜならば"という2つの方向からの論理思考があること
- 十全な文脈を構築するために曖昧さをどう回避すればいいのか
- 気づきと情報を"繋げ"て、ロジカルに考えるための2つのスキル
といった説明が具体的にされているので、論理思考の意義と必要性が理解できた上で、ロジカルシンキングの手法に入れるため、仕事に再現できるようになっている。
例えば、私の場合は因果関係の分析のための「縦横分析」が役に立った。
状況を把握した後で、その事象が起きた原因を追及するために、「なぜ」を繰り返す手法はよく使われる。
しかしこの分析は、その1つの事象を縦には深掘りできるけれど、それ以外の事象のことは別途同じことをしなければならない。すなわち"横"に展開していくことで、本来の問題に辿り着かなければ、一局面だけでの分析に終わってしまい、精度が高まらない。
この考え方を明快に説明し、具体的に何をすればいいのか、が書かれているので汎用性が高く、実務でも使えるのだ。
このようにビジネス書の良書は、ある程度多くの業界や実務に当てはめられる普遍性が高く、かつ仕事で使える再現性が高いことが必須だが、この本はどちらも兼ね備えている。
ただ、かなり高度な内容にまで踏み込んでいることもあるので、
この本をそのまま仕事に使おうとしても難しいかもしれないが、
そもそも論を理解した上で本気で論理的思考を使いたいのであれば、オススメの一冊だ。