私の専門分野であり、関西学院大学の経営戦略研究科(ビジネススクール)でも教えている、ブランドマネジメントの参考にしたく、評判の高いこの本を読んでみた。
まず、興味深いのは、フォリップ・コトラーのマーケティングマネジメントを従来のマーケティングと位置付け、
著者の考え方を中心としたブランドマネジメントと比較している点。
なかでも、マーケティングマネジメントは差別化を重要とするが、
ブランディングでは「独自性」を出すべきだと主張する。
独自性とは、Salience(セイリエンス)を持つこと。
聞き慣れないセイリエンスとは、直訳をすると区別されたという意味になるので、
他にない、自社だけのことで勝負すべきだ、
ということになる。
ブランドマネジメントはここ数年、再評価されている。
単なる手法ではなく、事業戦略として位置付けるべきだ、ということだ。
その背景には、SNSの浸透などで消費者の行動が見える化されて、
「自分にとっていいもの」を人たが選ぶ時代になり、
「共感」でモノを買う時代になってきた、という点がある。
差別化は、サイズや価格など目に見える機能的な価値で勝負すること。
一方で、独自化は「自分に関係あるな」という距離感などの情緒的な価値での勝負になる。
差別化を「ライバルより良いモノを作ること」とすれば、
独自化は「ライバルよりも"価値があると認識"されること」になる。
その意味でも、独自化の重要性についての部分は大いに参考になる。
もう1点は、ブランディングのキモが2つある、それは、
メンタルアベイラビリティと
フィジカルアベイラビリティだ、
ということ。
アベイラビリティという言葉は、日本語英語ではないので、
私も初めて聞いた時(1990年のことだった)には、わかりづらかったが、
「ユーザーにとって身近にあるかどうか」というような意味だ。
前者は、自社がいる業界やカテゴリーで1番に思い出してもらえること。
後者は、買いたいと感じた時に、便利に買うことができるかどうか、ということ。
想起され、利便性が高いことが重要だ、
とのこと。
ブランドマネジメントの目的は「ファン(=ロイヤルユーザー)になってもらって、
継続して買ってもらうこと」
そのためにも、この2点は重要なのだ。
この考え方は、消費財のマーケティングのみではなく、
生産材を扱うような、BtoBのビジネスでの営業にも当てはまる。
多くある競合の中から、一番に思い出してもらえる営業をする、
また、いつでもどこでも自社の製品やサービスのことを、
聞けたり、見積もり依頼をしたり、注文できるようにしておく、
というのも「アベイラビリティ」なのだ。
この本は、私のようなマーケティングの専門家にとって大きな刺激になる。
さらに、これからマーケティングを学ぶ、ブランディングに興味がある、
という方にも、分かりやすくシンプルにまとめてあるという点でおすすめだ。
さらにいうと、
この本で比較されているマーケティングマネジメントの考え方と、
ブランディングの大家のデビット・アーカーのの本をまず読んでから、
この本を読むと、自社にとって何がマッチしているのかが理解できるだろう。
いずれにしてもおすすめの一冊です。
マーケティングアイズ株式会社 代表取締役
関西学院大学 経営戦略研究科 教授
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