ひつまぶしの老舗、名古屋市熱田区にあるあつた蓬莱軒さんでの勉強会に行ってきた。
明治6年の創業、142年続いているとのこと。司会の方が、五代目の女将にお話を聞くという内容の勉強会だった。
創業140年の老舗から学んだこと
学ばせていただいたのは、
「当たり前のことを当たり前にやってきただけ」
「いい人材に恵まれた。人は宝です」
という素晴らしいひとこと。
顧客サービスのことに話が及ぶと、一番にお答えになられたのが、
「美味しいものを食べていただくこと」
そして、
「笑顔で帰っていただくこと」
とのことだった。
名古屋で蓬莱軒と言えば、誰でも知っているのはもちろん、ひつまぶしの代名詞になっている。
一番に想起されるのだ。
広告などもほとんど打たれていないとのこと。
クチコミで広まって、ここまできている。
それもそのはず、
「美味しいから」にほかならない。
蓬莱軒はなぜひつまぶしの代名詞なのか?
心に響いた言葉は、
「美味しかったら、必ず人から人に伝わります」
というひとこと。
飲食店に行くのは、広告がきれいだからとか、値引きをしているからではない。
大事な人と、美味しいものを、楽しく食べに行くのだ。
ということを、再度思い起こさせていただけた一言だった。
さらに、
「うちは独特の味をこれからも守り続けます」
という言葉に、「何を」買っていただくのかという原点を絶対に忘れないという信念を感じた。
ひつまぶしは世の中に多いけれど、やはり蓬莱軒さんを一番に思いおこすのは、この味だからである。
ちなみに、ボクが書いた3冊目の本にも蓬莱軒さんを取り上げさせていただいた時に、そのお礼ということで女将からご丁寧なお手紙とお礼をいただいた。(その時の記事はこちら→ あつた蓬莱軒のお客様へのおもてなしの心)今日やっと、その時のお礼を申し上げることができた。
今日は、うまきと、
さらに熱田神宮に献上するお酒「草薙」、
そしてもちろんひつまぶしをいただいた。
流行っている有名店になるには理由がある。
ということを、学ばせていただくことができた勉強会だった。
■蓬莱軒から学んだこと■
- 独自の味を守り続けることこそが、お客様への価値になる
- 美味しいものを提供することが自社の事業。そこから外れないこと
- お客様に毎日相対している従業員こそ宝である
*蓬莱軒のことも書いた、イノベーションをテーマにした本はこちら ↓
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毎月準レギュラーとして出ているZIP-FM「モーニングチャージ」
出ているのは毎月第4月曜の朝で、この番組にある「トヨタ ハイパーチャージャー」のコーナーに、7時45分くらいから出ている。
ZIP-FMでは「エントリー」というサイトを設けていて、ここに「理央さんに聞いてみよう」ということでマーケティングに関する質問ができるようになっている。
名古屋市昭和区にあるうどんやさん
今回は、こんな質問をいただいた。
「うどん屋をやっています。
2号店を出したいと、ずっと狙っていたエリアに、他のうどん屋が出店してきました。
特徴として、「お値打ち価格、だけど安過ぎず」、「チェーン店ではない」。
それに「名古屋では珍しい関東風」といったように自分の店と、個性がかぶっている様子です。
自分もすっかり店を出すつもりでしたが、ここは、いったん引っ込めて様子をみたほうがいいのでしょうか?」
このメールを読む限り、まだ出店計画を中止できる段階のようだが、ボクは、
「まだコンセプトがはっきりしていなさそうなので「練り直してできる限り早く」出せるにはどうすればいいのか?を考えるべきですね」
と答えた。
いったん中止して相手の様子を見る場合のメリット、デメリットを考えてみたい。
様子を見るメリットは相手の戦略や様子を見たあとで自分だけのメニューなどを開発できること。デメリットは、先行者利益を与えてしまうこと。その地域での「うどん屋」としての認知度があいての方が先に高くなってしまうことにある。
強引に同じタイプの店をぶつけていくメリット、デメリットというと、
「同じうどん屋というカテゴリーで違うタイプならともかく、同じタイプのものをそのままぶつけるメリットは無いに等しい。後発にとってはデメリットだらけである」
一番やってはいけない事は何かというと、「価格競争」
利益も減るし、ブランドマネジメントで重要な「見た目の価値=Perceived Value」も下がってしまう。もっとも避けるべきである。
飲食店は何で勝負をすべきなのか?
「では何で勝負していくべきか?」
やはり、どんなうどんで誰を幸せにしたいかをまずは考えるべきである。
うどん屋に行く理由は、値段や味だけではないはずである。
先日このブログでも紹介した、名古屋市天白区植田山の鮨や、ふじわらさんでは、カウンターの下に小さい電熱線が引いてありほっこりした。
顧客が満足し、次にもう一度来たいと思うのは味に加えて、雰囲気やおもてなしなど総合的なものになる。したがって、勝負は価格だけですべきではない。
*そのときの記事は⇒ こちら
こういう場合でも、自分の構想は変えないべきですか? それとも柔軟に対応すべきなのだろうか?
うどんへのこだわりはそのままで、お客様に喜ばれることを取り入れる心だけは、臨機応変に常に探り改善していくべきである。
■行列ができる飲食店になる3つの秘訣■
1.まずは自社だけのメニューを開発する
2.誰をどうやって幸せにしたいかを徹底的に考える
3.常に改善していく
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「買いたがる脳」を読んでみた。
マーケターとしてのこの本からの気づき
副題に「なぜそれを選んでしまうのか?」とあるように、ニューロマーケティングの考え方をもとにした、理性的ではなく「感情的」な買う時の判断について書かれている。
と同時に、脳科学研究者の著者がその知見を説明することで、消費者として賢い買い物ができるようにすることにもある。
ボクたちマーケターの多くは、これまでの理論やフレームワーク,そして数字を用いてロジカルに物事を考える傾向が強い。しかし、生活者がモノを買う時はどうかというと、必ずしても論理的に,三段論法を用いてモノを買う意思決定をするとは限らない。
中学3年生になるうちの娘を見ていても、
「あ、これカワイイ〜」
と言って買いたくなることもしばしばなのだ。
マーケティングに限らず、このような情緒的で一見説明しづらいことをなんとかまとめていくのが科学や学術のすべきことなんだけど、消費行動の特に「脳の中身」が何を考えてどのようなステップでモノを買うに至るかをこの本はまとめている。
たとえば、裕福なエリアに住んでいる少女は「多分賢い」と思い込んでしまう、という実験結果があるそうだ。これを脳はパターンを求めると意味付けている。すなわち、人は無意識のうちにカテゴリー化してしまう、ということである。(第5章)
これをマーケティング活動に活用するとすれば、拙著「なぜか売れるの公式」にも書いたようにハロー効果を用い、著名人やその道の第一人者に解説をしてもらうなどしてもらうことで、購買意欲をあげることにつなげられるのだ。これはブランドマネジメントをする際の「見た目の価値」の資産につながる「信じる理由」の一つにもなる。
このように、脳科学をマーケティング活動に応用することは可能になることが、この本には多くの実例とともに書かれている。
ニューロマーケティングを活用するときに気をつけるべき点
もちろんこのアプローチを活用する際には気をつける点(=ダウンサイド)もある。
生活者の消費行動の逆手をとり、「だまして買わせる」という姿勢にならないように気をつけるべきである。
たとえば、第6章「雰囲気の説得パワー」にある視覚への効果の中で、光の当て方によって野菜などを美味しく見せることができるとのこと。
これは,小売業などが用いるVisual Merchandising VMDと呼ばれる考え方などにも応用できる考え方で大いに活用できる。
しかし、この場合気をつけなければならないのが「売り手目線」にならないこと。
たとえば、少し古くなった野菜や、信頼できないところから安く仕入れたものを、よく見せようとして照明でごまかす、ということは本末転倒でやるべきではない。
自社の都合で物事を考えるべきではなく、あくまで「より美味しく見せる」ことを主眼に置くべきなのだ。
ビジネスで一番大事なことは「いいプロダクトを生産し顧客に価値を提供すること」。よく見せることは二の次なのだ。
この点をはき違えると、脳科学ニューロマーケティングも意味がなくなってしまう。
ビジネスにおいて「稼ぐ・儲ける」は目的ではなく、顧客や社会、自社を幸福にするための手段に過ぎない。このことを再認識したうえで読むと、非常に使える本なのだ。
おススメです。
■この本から学ぶこと■
- 消費者がモノを買う時には、論理的でなく感情的に行動する。そしてそれは脳が関係する
- 脳が関係するその行動にはいくつかのパターンがあり、覚えておくとマーケティングに活用できる
- しかし、あくまで顧客主導。自社の都合で考えない
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先日初めて飲んだ、スターバックス リザーブ®の「1000円のコーヒー」
厳密には、トールサイズの税込みで1140円。
同じサイズのドリップコーヒーが345円なので、約3倍の値段になる。
スターバックス リザーブ®シリーズ Starbucks Reserve
このシリーズはボクが飲んだもの意外にも複数の種類がある。
スタバのサイトによると、以下のような感じで説明がされている。
「それぞれの個性的な味わいをじっくりと楽しんでほしいから、ご注文ごとに挽いて、選りすぐりの器具で一杯ずつ抽出します」
まず、スタバでこのシリーズのことを聞いてみると、通常とは違うメニューを出してくれてその中から選ぶ。支払いが終わると、通常ドリップコーヒーはカウンターで、ラテなどのものは「赤いランプの下」でコーヒーを受け取る。しかしこのスターバックス リザーブ®シリーズは、席まで持ってきてくれるのだ。
しかも、カップは通常の白いマグカップではなくスターバックス リザーブ® ようのブラウンのもの。
ボクが頼んだコーヒーは「Wallenford Coffee Company」の「Jamaica Blue Mountain Coffee」 で、こんな説明用のリーフレットなんかも渡してくれる。
ホームページを見てもすごくしっかりしているし、Instagramもやっているみたいで、ボクがアップしたら、すぐにコメントを残していった。
ちょっと調べてみると、豆売りになるが1杯換算で1998円のものは売っていたようで、
「スタバ史上最も高いコーヒー 1杯1998円」 というタイトルで朝日新聞デジタルが取り上げている。
スタバがスターバックス リザーブ®シリーズをメニューに入れる理由と戦略
これくらいの価格帯の商品をなぜスタバはメニューに入れるのか?
たぶん、高価格帯にシフトしたい、というワケではなく、直接競合のタリーズやシアトルズベスト、代替品のマックカフェなどに対して、
「コーヒーそのものにこだわりを持っているのです」
という理念を伝えたいのではないかと思う。
スターバックスは、コーヒーだけではなく雰囲気もお客様に提供している。
情緒的な価値としては「リラックスできる空間」ということになるのだ。
其の価値をさらに強めるコトができる商品ラインアップになると思われる。
スターバックスリザーブから学べること、さらにいうと中小企業や個人事業主が応用できるポイントは、自社独自の価値をしっかりと考えること。それを様々な角度で考えていくとリザーブシリーズのようなアイディアにつながるはずである。
■スターバックスリザーブ® からの気づきと学び■
- こだわりのプレミアムシリーズがあるというこだわりを伝えることが差別化につながる
- 特別なコーヒーを楽しんでもらいたい と示すことで競合よりも独自なイメージを創り出せる
- カフェ・飲食店で売るものはコーヒーだけでなく、感情に訴える雰囲気やホスピタリティ
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昨日、今日と箱根駅伝をテレビで見た。
青山学院大学が感動の初の優勝を飾った。
第91回とのこと、いつからかはわからないけれど、うちでも毎年の恒例行事のようにテレビで見ている。
今まで見なかった箱根駅伝の中継
箱根駅伝だけは亡くなった父や義父も好きでよく見ていたこともあって、家族での正月のテレビの恒例行事になっているが、ボクはもともと、野球やサッカーバスケなど球技が好きで、中でも動きがあるものを好んで観戦する。だから、箱根駅伝に限らず、マラソンや駅伝をじっくり見ることはそれほどなかった。
今年はけっこうのめり込んで観戦したんだけど、その理由はやはり「ドラマ」があるから。
言い換えると、駅伝の各大学のチームの裏側には、多くのストーリーがあるのだ。
息子が陸上部だということもあり、
「A大学のBさんは高校時代よりも大学に入って努力して強くなって」
「C大学の往路は、考えられないくらいのメンバーをそろえてる」
「青山学院の縛りの少ない自由な雰囲気がいい学生を集める」
などなど、彼の解説付きで見ていると、より一層楽しんで見ることができる。
放映するテレビ側も、走っている姿やゴールまでの経路を解説するのみでなく、これまでトレーニングしてきた苦労や、選に漏れて実際に駅伝に出られない選手が出場している選手を応援している様子なども実況している。
箱根駅伝を楽しむには
去年までは、サッカーや野球なんかと比べて、
「単に走っているだけなのに、なんであんなに人気があるんだろう」
と、よく知りもしないで感じていた。
まず、陸上部の息子に教えてもらって気づいたのは「駅伝と経営に共通点があるんだ」という点。
駅伝はチームプレーだということがその典型的な事例。
「2区にエースを持ってくる」ことで言えば、
16人のチームの中で、誰が坂道に強いか、全体を引っ張るのは誰か、精神的に強いのは誰かを総合的に考えての決定になる。また、監督としては往路での結果と他校の順位を見て、復路の走行順を変えることもできる。
また、今回青山学院大学が往路復路ともに完全優勝し、それもぶっちぎりだったのも、
「往路で大きな差をつけてるので、追ってくる相手のことを意識しなくてもいいので精神的にも楽。
監督としても、「追い上げられたらどうすべきか」というような複雑な作戦を立てる必要がなかったはずである。
つまりは、戦略と同じなのだ。
何年も見ていたが、今年になって初めて新しい「箱根駅伝」の楽しみ方を知ったのだ。
きっと、このように思っている人たちはまだまだいると思う。
これは、企業のマーケティング活動でも同じで、「使い方」「楽しみ方」をお客様にきっちりと教えてあげないと、「お客様は分からない」まま通り過ぎてしまうのだ。
「お客様は、企業側が思っているほど、企業のことを知らない」
これが大前提なのである。だから、教えてあげなければならなのだ。
箱根駅伝が、単なる駅伝の中継でなく、綿密な取材をすることで、背後にあるドラマとストーリーを伝えていることが、テレビ局の顧客への約束なのである。ひいてはそれが、自社の事業の定義になるのだ。これは、企業のマーケティングにおいて、自社の製品やサービスの本当の良さと、それを使ったときの顧客の内面的な喜びが、「顧客の価値」になるのだ。
■箱根駅伝に教わったこと■
- 単に中継するだけでなく、ドラマとストーリーを伝える
- それこそが顧客が本当に欲しいものを提供することになる
- 駅伝と経営には多くの共通点があり自社に即した学びと気づきがある
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