「タレント」の時代 読了。
副題に、世界で勝ち続ける企業の人材戦略論とある通り、
企業がいかにして、画期的でイノベイティブな製品を開発できる人材を確保し、
教育し、継続して活躍させていくことができるか、ということに焦点を当てている本である。
【タレントの定義】
この本で著者はタレントを、
- 複数分野の知識があり、創造的知識労働、目的的・改革・地頭・洞察・未知を既知に変える能力を持つ人
と定義している。(P154)
創造的知識労働とは、
- 否定型的で、新しいものを創り出す。新規のプロダクト・プロセスを創り出す労働
とのこと。
タスクを処理するだけの労働ではなく、「知恵」を振り絞り、
新しい価値を創造していく開拓者的な人物だということになる。
書いている通り、「先進国で最も必要とされている」人材なのだ。
【タレントであるために】
したがって、タレントと、それ以外の日との違いは、
にある。
私も以前そうだったのだが、まじめすぎて型にはまらなければ「間違っている」と感じてしまうメンタリティでは、タレントとなりえずイノベーションを起こすことが困難になってしまう。
本の中では、MBAに対しても「経営のプロが、無力」な業界や領域があると説く。
私自身MBAだし、ビジネススクールで教鞭をとっていることもあるので、全面的に肯定はできないし、するつもりもない。
しかし、私も取得直後はそうだったが、
確かにフレームワークだけを「覚え込み」、すべてあてはめようとしたり、
MBAは万能だと思い込んでしまったりすること自体、
実社会でのビジネスにおいては、非常にリスクが高くなる。
著者は、製品開発においては「学際領域(複数の研究分野が必要な領域)」という点を挙げているが、
その意味において、私も同感だし、研究領域に固執し、幅を広げられないMBA(に限らないとは思うが)がいるとしたら、やはり実社会での仕事では通用しない。
という(極端な表現が楽しいが)ことは組織では、私の会社員時代でも散見された。
【中小企業はどうすべきか】
この本は中小企業の経営者は必読である。
なぜなら、大企業よりも「人」一人の比重が自社にとって高いからである。
タレントが一人でもいるのでは、会社に与えるインパクトが違うのだ。
この本では、有名なトヨタの主査精度(チーフエンジニア制)と、
スターバックスのホスピタリティが紹介されている。
スタバでは、製造業で試作を量産化するときのように、
行動手順があり、画一的ははない笑顔と思いやりを提供しているとのこと。
まず1点目として、
組織を構築するときに、トヨタの主査のように広く深い責任範囲をもつナンバー2やナンバー3を育てること。
2点目として、単一領域ではなく複合的な領域、たとえば製造と経理、デザイン、人事など、
クロス・ファンクションという視点でタレントを育てること。
きっと、大抜擢が必要になるはずである。
3点目として、非定型的つまりルーティンでない仕事を「無理を承知」で与えること。
そして、創造性を目標の一つに入れていくことになるだろう。
ヒト・モノ・カネ・情報・時間という5つの経営資源の中で、
唯一の生き物である「人」。
人で勝負がつくのは、考えてみたら当たり前なのだ。
なので、単に優秀な人材を確保・採用すればいいというわけではなく、採用⇒教育⇒継続のループを戦略として考えるべきなのである。
その意味でも、ビジネス・パーソン必読の一冊であった。
マーケティング コンサルタント 理央 周
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