オーストラリア、香港、イギリスに留学し、国際資格のバカロレアを取り、その後、外資系戦略コンサルティングファームを経て、独立した、28歳の起業家で経営者の方が、「面白いからぜひよんでみてください!」と、強く勧められあり読んでみたこの本。
まず「WHY,WHAT,HOW」という順で中心から3重に成る、「ゴールデンサークル」を提唱している中で、すべてはWHYが出発点であるべきだ、と説く点に共感した。
それぞれ、WHYとは「なぜあなたはそのビジネスをしているのか」ということ、
WHATは何を提供するか、
HOWとはどうやって提供するのか、ということだ。
私はこれまで、多くの経営者、ビジネスパーソンたちに、
経営およびマーケティングについてご指導させていただいてきている。
その中で「思うように売れない」というのが共通の悩みである。
売り上げがジリ貧だ、お客様が離れていく、
といったマーケティング上の問題点が、
どこに端を発するのかを突き詰め、掘り下げていくと、
先のWHYを忘れ、何を売るのかというWHATや、
どうやっているのかというHOWにばかり注意を払ってしまっている点に行き着く。
これは私が、マーケティングとは、
「何を、誰に、どうやって」の3つの戦略を考えることで成り立つ、
と説いている中で、多くの人が「どうやって売る」のかをばかりを考えてしまう点と共通している。
どうやって売るのかという選択肢は数限りなくあるので、
中から最適なものを選ぶべきだ。
従い、何を買ってもらうのか、誰が買ってくれるのかという、
プロダクト戦略とターゲット戦略を明確にしていない限り、
「どうやって売るのか」というコミニケーション戦略がぶれてしまう。
この本では、同様にそもそもその事業の目的は何で、
何をもって誰を幸せにするのか、
自社の特徴は何なのか、自社の信念はなにか、
ということを明確に定義せよと述べている。
そしてこの考え方が、アップルやサウスウエスト航空など多くの事例とともに書かれているため、読んでいて自分の当てはめることができハラに落ちる。
また、営業において会社をどうアピールするかという手法と、恋愛とを比較して書いている事例も面白い。
恋愛では自分を売り込むだけでは、相手にとってインパクトを与えるような言葉をつむぐことができない。
自分の思いを伝えていくために、より深く広く相手のことを知ることが全ての始まりになる。
そのためには相手から多くのことを聞き出し、相手が本当に欲っしていることは何か、
何をしてもらうと喜ぶのかを聞き出すといったことが先決だ。
営業マンの場合もこれと同じで、自社の売り込みばかりをしていると、顧客のほうはいい加減に嫌になる。
これを避けるために、顧客が抱えている問題点や課題を引き出すことが先である。
これらを踏まえた上での提案でなければ、そもそも顧客を聞く耳を持たないし、顧客の課題解決にマッチした提案もできない。
このように、ゴールデンサークルの考え方に加えて、それを実際の企業がどのように活用してきたのかという事例と、このようなアナロジーが見事に調和されて書かれているので、普遍性も高く再現性も高い。
冒頭に書いたように、私とは、親子とも年齢が違い、その年齢の差があるがゆえの、私とは異なる視点を持つ彼に、いつもなるほどと感銘を受けていたのだが、やはりこの本にも感銘を受けた。本をはじめとして、様々な情報は主観的に選んでいるよりも客観的に、自分とは異なる価値観を持つ人の意見を取り入れると、自分の中に新しい風が吹き、私の視野を広げてくれたという意味でも読んでよかったビジネス書だ。
自社にとって課題がある経営者、自分の仕事に行き詰まっているビジネスパーソンにとって、いちど原点に立ち返ると言う意味でも読んでみることをお勧めする1冊だ。
マーケティング プロデューサー
理央 周(りおう めぐる)
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