Marketing i's [マーケティングアイズ]

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カテゴリ:「ビジネス書書評」の記事

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成果を生む事業計画の作り方 平井 孝志氏 淺羽 茂氏著

仕事柄、講演やセミナーなどで多くのビジネスパーソンと会う中で感じてきたのが、
事業計画の意味と意義を勘違いしてる、ということだ。
事業計画を作ることが目的にしてしまっている人が多いのだ。

この本の帯に、「数字合わせ」「絵空事ではない」
「実効性あるプラン」にすると書いてある。
これらが、本質的な事業計画の作り方だ、と常々感じたので読んでみた。

私は会社員時代、企業の中の人として、また起業してから、
私も長年自分で自社の事業計画を作成し実施してきた。
また、企業に入り込んで、事業本部長たちと、
事業計画の作成及び実施支援の"伴走"をさせていただくことも多い。

このよう場合は、事業計画の目的は、「収益を上げるための計画」であって、
上司や、提出先の銀行に見せるためだけのものではない。

経営計画を立てた経営陣から、事業計画を作成せよとの指示が出て、
これまでのフォーマットを使い、教科書通りの構成で、事業計画を作成する、
といったケースもよくある。

事業計画がないよりもマシだが、本質的なものではい。

事業計画は、作成してからがスタートになる。
なぜなら、目標達成するための計画が事業計画だから。

この本では、事業計画の作り方も書かれているが、
事業計画の意味や意義などの、本質的なところにフォーカスを置いている。

まず第1章では、経営の本質は戦略にありというテーマで書かれている。
ゴールまでの道筋を示す戦略は、
事業の成功を左右するし、ひいては企業の浮沈にも関わる。
企業の未来を左右するのだ。

「事業計画が大事だ!」「作成せよ!」
と号令をかけても、絵に描いた餅になってしまったり、
うまくいかないことが多い。

それは、事業計画が書けないからではなく、
事業計画の本質、「なぜ事業計画を作るのか?」が、
腹に落ちていないからだ。

この本は、まずこういった大事なポイントを押さえるところから入っていく。

そして第2章から第4章までは、具体的な事業計画の立て方と、
個別事業から全社計画の落とし込む際に、
何を入れ込むべきか、どう実行するか、ということが説明されている

そして、この本の最大の特徴は、
第5章の「計画を絵に描いた餅に終わらせないために」にある、
と私は考える。

事業計画は、作成し上位者の同意を得られたあとに、
「実施」をする。

計画というものは「計画通りに行かない」ことが大半だ。
なぜなら、計画に入れた数値などは全て仮説なので、
実施した時にその通りに進むとは限らない。

その意味で、実施してから微調整をしながら行動をしていくことになる。

この第5章は、計画作成後に留意すべき5項目が書かれている

それらは、

  • 事業計画の質を随時向上させること
  • 組織や社員への浸透させ方、
  • KPIなど数字の考え方、
  • 計画を立ててから実行まで、経営者事業責任者の視点を社員に落とし込むことが最大の人材育成になる

ということである。

成果を出すことが事業の目的である。
その成果に向けて、いつ、誰が、何をやるか、というのが事業計画だ。
事業に関わる者だけではなく、社員全員がその意義を理解して動かなければ、
成果を出せるはずもない。

作成のやり方だけではなく、これらのポイントを押さえている点が、
この本が、本質的な1冊であることの特徴だ。

事業計画作成を命じる経営者、作成する事業責任者、本部長が、
もう一度、事業計画を見直すこともできる、
おすすめの1冊だ。

マーケティングアイズ株式会社 代表取締役
関西学院大学 経営戦略研究科 教授

理央 周(りおう めぐる)

即買いされる技術キャッチコピーは売りが9割コピーライター弓削徹さんの著書

営業やマーケティングの実務担当者が、
ホームページやチラシ、カタログなどを作るときに、
意外と悩むのがキャッチコピー。


一方で、本来悩むべきところとは、
「違うポイント」で悩んでいる場合も多いのが事実。


「文字数が多くなってしまった」
「漢字が多くなってしまう」
「かっこいい言葉が思い浮かばない」
といった具合です。


しかし、マーケティングコミュニケーションにおいて、
まず考えなければならないのが、
自社だけが顧客に提供できる強み、
すなわち"ウリ"ということになる。


この本の帯にもあるように、
自分の製品やプロダクトやサービスの強み、違い、
すなわちウリをどうやって見つけるのか、
それをどう伝えるのか、
が、本来まずさいしょに悩むポイントだ。


著者の弓削徹氏は、
製造業に特化したマーケティングコンサルタントであり、
かつ、コピーライターの経験もある二刀流で、
どちらもいける方だ。


以前書かれた「キャッチコピーの極意」という本が、
使えるコピーライティングの本ということで有名なので、
この本も読んでみた。


こちらの本は、サブタイトルにもあるように、
自社製品やサービスのウリを、どう見つけていくか、
そしてそれをどうキャッチコピーとして表現していくか、
について、ステップを踏んで書かれている。


マーケティングを学ぶ段階で、
本を読んだりセミナーにいったりすると、
まずは、「強みを書きましょう」、
「違いを出そう」とよく言われるはず。


しかし「そうは言ってもなかなか難しいですよね」
というのが、多くの人の本音だろう。


同時に、自社の強みはあまりにも自分に近いところにありすぎて、
実務担当者には見えてなかったり、
気づいていなかったりすることも、よくある。


このような実務家たちの悩みや盲点について、
「ここを押さえましょう」
「この点に気づきましょう」というポイントを押さえて、
段階的に説明しながら、
キャッチコピーの書き方を説明しているのが、
再現性が高いと言える。


例えば、まずニーズがあり、
次に、より具体的な「ウオンツ」になる。
そしてウオンツを持っている人たちの中で、
どうしても欲しい、必要だ、
と考えている人がいると著者は説く。


すなわちニーズは市場の大きさ、
ウォンツはその具体的な欲求、
そして著者がいう、"切実"すなわちデマンドとは、
買う直前や、意思決定をする前に、
価格がいくらだとか、
実際にその製品やサービスを購入した後に、
自分にとって効用があるのかどうかということを考えることになる、


それを著者は「切実」と呼んでいるところがわかりやすくていい。


ひとことに「ウリ」といっても、
製品の機能的な特徴や、
スペックについての優位性を考えてしまう人多いが、
著者が言っているウリとは、
顧客が使用時や後に感じる価値や効用、
すなわちベネフィットを指す。


そこを著者は、製品の効用や、使用感や効果を見つけ、
それをウリとせよと言っているのだ。


このコンセプトをベースに、著者はこの本の最後に、
ワークシートをつけている。


このワークシートは、いくつかの部分に分かれているのだが、
中でも良いのは、まず自社のウリについて、
棚卸しをすることを勧めているところだ。


研修やセミナーでワークシートを使う講師の方も多いが、
受講者からすると、
「いきなりウリを見つけてください、と言われても、
そう簡単にはできないよ」と言うのが本音だと思う。


まずはすべて棚卸しして、そこから整理整頓をしていく方が、
抜け漏れやダブりもなく、
また自分の頭の中の思考の見える化にもなる。


その意味でも、再現性の高い1冊だ。

マーケティングアイズ株式会社 代表取締役
関西学院大学 経営戦略研究科 教授

理央 周(りおう めぐる)

絶対達成する人は言葉の戦闘力にこだわる 横山信弘氏著


目標を絶対達成する営業コンサルタントであり、
アタックスセールスアソシエイトの社長である横山信弘氏の新作を読了。

私は、横山白絶対達成における予材管理の考え方を,
再現性が高いので実戦的なアプローチだと思っている

横山氏は、営業といえば、まず名前が出てくる営業の第一人者だ。
その横山氏が、言葉というテーマでの新刊を出したことに、
とても興味を覚えたので読んでみた

最初にも書かれているように、多くの"流行り"や"定番"のビジネスワードが、
多くのビジネスパーソンに使われている。

一方で、これを正しく使っている人がどれほど多くいるのか、
そしてその考え方を、正しく仕事で使えていて、
成果を出している人がどれほど多くいるのか。
私もこの件に関しては、常々疑問に思っていた。

横山氏はその点にメスを入れ、間違って使っていると結果が出づらくなる言葉を提示し、
その理由と、解決のためのフレームワークや別の表現という内容を、
8つの言葉についてそれぞれ説明している。

それらは、

  • モチベーション、
  • 働きがい
  • PD CA
  • イノベーション
  • 主体性
  • 褒める
  • 楽しむ
  • 論理的

といった8つのワードだ

この中で、私の専門分野であるマーケティングに関連深い言葉では、
イノベーションがある。

イノベーションとは、誰もが考えなければいけないことであるが、
誰もが簡単にできることではない。

それ横山氏は、絶対達成できる人は、
偶然を形にする方法を知っている」と書いている。

一方で、絶対達成できない人は、
合言葉は、イノベーションを起こそう」
という人だと言っている

まさに、この通りだな、と私は共感した。

イノベーションという言葉は、単なるバズワードではなく、
もはや事業戦略として考えなければいけない、
企業の戦略テーマだ。

それを、会社の方針として進めていこうという意欲は、
私も重要なことだと思う。

しかし、なんのフレームワークも導入の背景の理由の説明もなく、
何のストーリーもし目指す、社員に「イノベーション起こせ」「合言葉はイノベーションだ」
と連呼するだけでは、社員は何をすればいいのか分からなくなり、疲弊してしまう。

横山氏の主張に対する私の解釈は、
イノベーションを始める際に、
最低限必要なフレームワーク、やり方がというものがあり、
ゴールまでの道のりを示すことが必要だ、ということだ。

ここに書かれているような、
ポアンカレの4つの思考プロセスとか、
4W2Hといった定番のフレームワークのことである。

もちろん、そしてそこから先は企業努力で、
どう進めていくのか、何をやるのかを示し、ゴールに進む。

このイノベーションという言葉のようなビジネスワードを、
曖昧な解釈で、曖昧なままで進めていると、曖昧なままで終わってしまう。

そしてもちろん、結果につながらないため、目標達成ができないのである。

この横山氏の新刊において紹介されている8つの言葉は、
今のビジネスパーソンの仕事のために、必要な言葉であり、考え方である。

一方で、その言葉の意味をしっかりと考え、腹に落とした上で、
自社に必要かどうかを見極め、自分のビジネスや仕事に落とし込み、
ツールとして使っていくことができるかどうかが、
成果を出すために必要なことだ。

その意味でも、読む価値のある1冊だ。

マーケティングアイズ株式会社 代表取締役
関西学院大学 経営戦略研究科 教授

理央 周(りおう めぐる)

デジタル時代の基礎知識 BtoBマーケティング 潜在リードから効率的に売上をつく新しいルール 竹内哲也氏 著 志水哲也氏監修


ここのところ、法人取引、企業間取引、すなわちBtoBの営業に、
どのようにマーケティングを取り入れればいいのか、という依頼が増えてきたので読んでみた。

もともと、マーケティングはBtoCの企業むけの考え方から始まっている。
なので、BtoB、法人営業、企業間取引のマーケティングについて、
まとめた考え方や理論フレームワーク等はあまりないために、
このような質問をいただくことが多い。

では、法人取引での営業において、マーケティングは必要ないのか?
というと、もちろんそんなことはない。

なぜなら、私が定義するマーケティングとは、
「売り込まなくても売れる」仕組みを作り、
顧客に価値を提供することなので、
営業活動にも当てはまる。

そもそも営業活動とは、誰に、何を、いつまでに、どうやって、提供するかという一連の流れ。
なので、まさにマーケティング活動そのものなのだ。

マーケティング活動は、大きく次の3つのステップを踏む:

  • 準備〜情報収集、分析、市場機会の発見、コンセプト決定
  • 計画〜誰に、何を、どうやって買ってもらうかによる、顧客獲得と維持の仕組み
  • 行動〜PDCAサイクルをいつどう回すか、成果をどう見える化・見せる化するか

法人営業においても、まったく同じプロセスを踏むのだが、
多くの場合、「売る製品やサービス」があらかじめ決まっているので、
計画を立てる段階で、営業担当者個人個人が、自分のもつ情報に「付加価値」をつけないと、
製品やサービスでの差別化になってしまい、ひいては、
値引きか、人間関係に頼らざるを得なくなる。

この本においては、上に書いた、準備、計画の段階を、
デジタル技術を使って、より効率的にやる手法について書かれている。

いわゆるデジタル・トランスフォーメーション(DX)。
私も自社のマーケティングにマーケティング・オートメーションや、
インバウンドマーケティングを入れているが、
こういった営業活動の一連の流れを、クラウドなどを含むITで、
どのように効率化できるか、という手法と、
その事例が書かれている。

その意味で、これからこのようなSaaSと呼ばれる、
クラウド上にあるソフトウエア・サービスを取り入れたい企業には、
役に立つ内容だ。

事業会社が取り入れる検討をする場合に気をつけたいのは、
マーケティングオートメーション(MA)などはあくまでツールであって、
その前に、市場機会がどこにあるのか、
正しい顧客はどんな顧客なのか、
自社の売り物は、その市場で勝てるのか、
という、マーケティング戦略をしっかりと立てなければ、
せっかくのツールも、宝の持ち腐れになってしまう。

この本は、ITを取り入れ営業を効率化したい企業で、
戦略が既に立ててある企業にとって、
具体的な事例をも含めて書かれているため、有益な一冊になる。
おすすめです。

マーケティングアイズ株式会社 代表取締役
関西学院大学 経営戦略研究科 教授

理央 周(りおう めぐる)

プロデュースの基本 木﨑賢治氏著 からプロデューサーのあり方を学ぶ


マーケティング活動とは、
新製品を世に出し、
人々に浸透させ、人気が出て、継続的に売れる、
一連の流れをいう。

その意味では、製品やサービス、
時によっては事業そのものを、
プロデュースすることに他ならない、
と思っている。

この本の著者の方は、
実績のある著名な音楽プロデューサー。
スターを生み出して、育て、ファンになってもらい、
愛され続ける、という流れも、
プロデュースなので、
ヒントになることが多い一冊だった。

一方で、この本には、プロデュースのやり方とか、
こうすれば、ヒットするといった、
手法はそれほど書かれていない。

この本のエッセンスは、
プロデュースする側とされる側の、
人間関係や、考え方、向き合い方、
別の言い方をするとすれば、
プロデューサーのあり方、
が、豊富な経験による事例とともに書かれている。

たとえば、プロデュースの対象者や彼らの生み出すものを見る際に、
「個々ではなく、全体を見る」とある。

ビジネスにおいても、新製品を導入する時においても、
やり方や手法といったHowから入ってはいけない。
個々の手法を考える前に、
まずは、事業やプロジェクトの大きな絵、
ビッグピクチャーを描いてから、
個々に落とし込む。

その意味で、スターのプロデュースも、
マーケティングと共通する。

また、新しいものとは、新しい組み合わせだ、という点も、
マーケティングの新結合による新しい顧客価値に通じる。

なかでも、私が最も共感したのは、
「自分の感性を信じること」という点。

著者は、そんなふうに強く信じられる人は稀だ、
といっている。
信じ続けることは難しいので、
うまくいかない人は、自分の感性に自信を失うからだ、と。

なので、音楽アーティストには、
「感性に自信を持て」と言い続けてきたそうだ。

これは、独立して、フリーランスでやっている人たち、
また、士業やコンサルタントにも言えることだ。

自分をどう売るのか、を考える前に、
自分の経験、知見、工夫など含めた、自分自身の中にある、
クリエイティビティと感性を信じることがなければ、
顧客との信頼性も築けない。

その意味で、たゆまぬ努力によって、
自分の感性とコンテンツを磨き上げなければならない。

プロデューサーとは表に出ることが少ない、
守備範囲が広い仕事だ。
しかも、収益の責任を持つ重大なプレッシャーもある。

しかし、全体を見て方向性を決め、
各分野のプロたちに対して揮をとる、
オーケストラの指揮者のような側面もある。

これは、製造や開発、品質や営業など、
社内の多くの部署とともに、
事業を組み立て、計画にし、実践の指揮をとる、
マーケティングと共通している。

その意味でも興味深い、
とてもためになる一冊だった。

マーケティングアイズ株式会社 代表取締役
関西学院大学 経営戦略研究科 教授

理央 周(りおう めぐる)

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