ボクは普段、自伝というカテゴリーの本を読まない。
この本に関しては、南海キャンディーズの山ちゃんが、女優の蒼井優さんと結婚するというニュースを聞いた時に読んでみようと思い読んでみた。
もともと、ボクはお笑い好きだし、
山ちゃんのバラエティでのしゃべりや、
日テレの「スッキリ」での「天の声」も好き、ということもあって、
「オタクっぽいけど、面白い、いい人」
というイメージでいた。
でも、この本を読んでみるとかなりの「嫉妬深さ」と「相手を蹴落とす」という執念のようなものを感じた。これまで、ボクが持っていた山ちゃんのイメージとは違うのだ。
しかし、それは一人の人間として当たり前の感情だ、ということに途中あたりで気づく。
そして、それは山ちゃんの向上心の現れなのだ、ということにも。
執拗なまでの相方へのお笑いに対する要求、
それは、お笑いのレベルのみではなく、相手のお笑いへの姿勢にまで及ぶ。
自分の要求レベルだけを正しいと信じ込み、
相手にも同等かそれ以上を求めてしまう。
(ここから少しネタバレです)
一番強烈なエピソードが中盤あたりにある、富男くんがキレる場面。
彼のこれほどの怒りの鬱積を、
山ちゃんはその時まで気づかなかった。
この後に続く2つのエピソードがボクには衝撃だった。
1つは、キレる富男くんに驚いた山ちゃんが、
「そんなこと言うなよぉ」と、急に弱気になってしまったこと。
山ちゃんは、キレられた相方に本気でキレ返せるくらい、
お笑いを肚に落としていなかったのだろう。
もう1つは、交番の前で大暴れした富男くんを警官が助けに来なかったこと。
いつも山ちゃんが富男くんに暴言を吐いていたので、
「これくらい暴れて当たり前だろう」と思われていたのだ。
山ちゃんは、周囲の人が気づくくらい暴君で、
富男くんへの気配りがゼロだったのだ。
この2点は、ビジネスにおける組織でのギクシャク、
経営者と従業員のミスコミュニケーションなどの原因によくあることだ。
社長の事業への思い入れが腹に落ちていないと、
従業員に伝えきることができない。
そうなると、新しい事業や、キツい仕事に従業員が反発した時に、
「なぜそれくらいわからないんだ!」とキレても、
従業員はついてこれないのと、構造的に同じだ。
2点目も、裸の王様になってしまった社長は、
自分の行為を客観視することができず、結果社員がついていけなくなる。
この本は、タレントさんのエッセイとしても面白く読める上に、
このように、仕事のヒントになるエピソードも多い。
さらに、巻末のオードリー若林さんの解説も秀逸だし、
何より面白く、これだけで1冊描いてもらいたいくらいだ。
おすすめです。
マーケティング コンサルタント 理央 周(りおう めぐる)
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