科学者、化学者、理論物理学者、宇宙生物学者、進化生態学者、といった、各界の第一人者が、編者の未来についての問いに答え、語っている本。
一見、ビジネスに関係がなさそうに感じるが、それぞれの専門分野に関する見解が自分の視点とは異なりとても面白い。著者たちは化学や物理、医学といったサイエンスの専門家なので、未来に対する問いには、それぞれの専門分野の範囲の中で答えるだろう、と思って読んでいたが、より深い哲学的、アート的な要素が入ったことを言っているのが共通して興味深い。
たとえば、化学者のジェニファーダウドナ氏は、デザイナーベイビーについて、
「ゲノム編集が行われる可能性は確かにある。しかし、テクノロジーの発展について透明性を保ち続けることが重要だ」と述べている。
科学の進化を止めてはならない、同時に倫理に関しても守っていく、という端的な姿勢だ。
デビット・シンクレア氏は、「人類は理論上200年生きられる」と主張する。
そして、「こういった時代において、身体以外の精神面の健康においても長生きするコツはありますか?」という問いに対して、
「複数のキャリアを持つことだ」と答えている。彼の80歳の父親が新しく始めた仕事を例に「自分が社会に役立っていると感じることが重要だ」と言っている。
科学者として生物的な寿命のこと、医学的な健康をキープするという見解のみでなく、キャリアや精神面について語っているのだ。
リサ・ランドール氏は、「ダークマター(暗黒物質)の存在は目に見えないので、万有引力の法則から導かれた推論に過ぎないのではないか?信じられないと言う人もいるでしょう」という問いに対して、
「捨てるべきはすべての技術は原子で成り立っていると考える固定観念です。これはある種の傲慢な考えです。私たち人間は、宇宙にあるすべてのものを知っていると思うほど全知全能なのでしょうか?」と逆に問い返している。
また「物理の教師が授業で完全に理解しているような教え方をしています」という問いに対して「教師は重力をどのように作用するかを説明します。ところが基本的なレベルにおいてその力とは何か?を教えてません。何かを知っているといっても異なるレベルがある」と答えている。
もちろん、ダークマターやブラックホールに対する見解も面白いが、人間の固定観念が自由な発想を阻害する、という点と、物事を多面的に見ると発見がある、という点を訴えている。
ビジネスにおいても、進化することが重要。そのためには、異なる見解を積極的に取り入れることが重要だと考えている。
その意味でも、科学者たちの未来に関する見解は、大きな刺激になったし、興味深かった。
こんをつめた時の気分転換にもいいし、ビジネスの新しい発想の一助にもなる、おすすめの一冊だ。
マーケティングアイズ株式会社 代表取締役
関西学院大学 経営戦略研究科 教授
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