営業はいらない、という刺激的なタイトルに惹かれて読んでみた。
マーケティングをなりわいとする意味において、私はよくドラッカーの、「ダイレクトセリングを不要にするのが、究極のマーケティングである」という言葉を引用する。
これは、営業部を減らすとか、営業マンを減らす、という意味ではなく、直接的な売り込みをしなくてもいいように、戦略を立て、広告で周知し、価格設定をし、販路をちゃんと決めて、
顧客とコミュニケーション取ることによって、
自然に売れるようにしていく。と言う意味に捉えている。
その意味でも、営業すなわちセリングは、できるだけしないほうがいい。
まして、このコロナ禍の今、「ちょっと近くまで来たので、寄っていいですか」といった、ドブ板営業が通用しない時代になっている。(私は、ドブ板営業を高く評価している。ドブ板営業が、不要という意味では無いことを、誤解せずに解釈していただきたい)
この本では、営業活動を分解し、特に営業活動の初期でやる、「顧客を探す、またマーケットのニーズから、ターゲット層を絞る、これらの準備をした上で営業する」という一連の流れを、AIやITでカバーできるという論旨で展開している。
これは全くその通りで、営業活動にマーケティングの考え方を入れて、企業間取引をスムーズにさせようという点において、大いに共感する。
実際のところ、ここ数年で多くのBTOB企業間取引、
法人営業の企業が、マーケティングの重要性について、考え直していると言える。
ところが、マーケティングは、一般的に消費者向け事業の考え方なので、BtoBの事業体向けのマーケティングのスタイルや仕組みは、それほど多くの学問的にも体系化されていない。
したがって、理論やフレームワークも、BtoBで普遍的に使えるもの、という意味では、少ないのだ。
そのため、BtoB企業の多くの経営者や営業責任者は、「マーケティングが営業にも必要だが、
どこから手をつけていいかわからない」という悩み、ジレンマを抱えているのが現実だ。
この本では、大上段から、営業はいらなくなる、と主張している点も、ITでの効率化をしっかりと考えた上で、最終的に営業マンがどこに向かうのか、を明確に示しているため、これからの営業活動を考えていく上で、多いに参考にできるのだ。
企業間取引での営業活動だけは、
うちの会社が一番だと自負がある、経営者、営業責任者が読むことによって、
「今の営業組織をどのように変えていけばいいのか、
将来目指すビジョンをどう社内に示すか」
を明確にしていく上で、参考になる一冊だ。
マーケティング プロデューサー
理央 周(りおう めぐる)
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