製品開発、新規事業において、重要なのが、今までの延長線上には無い、新しい発想に基づいたビジネスモデルの開発が期待される。
一方で、新しいことをやれ、と言われてもそうそううまく行かないのが現実でもある。
このような現状を打破するには、過去の成功体験による固定観念に囚われないことが重要だ。
この本では、その思い込みをいくつかのカテゴリーに分け、数字を始めとする事実を持って物事を考えよう、と提起している。
たとえば、繊維の素材産業が、今までのアパレル用繊維ではなく、
新しい分野の、新しい顧客の獲得を狙うプロジェクトがあったとする。
このようなケースでよくあるのは、
経営陣からの「今までとは違うことをやれ」「イノベーションを生み出せ」
という号令のもとに、プロジェクトチームを組み、
課題に取り組んでいく。
そこで、メンバーは技術、開発、生産、営業といった、
これまでの新製品開発の主軸メンバーが招集され、
ブレーンストーミングから、企画会議、営業計画、そして顧客への商談、
といったプロセスで進んでいくことが大半だ。
しかし、これでうまくいくことは、まずない。
なぜなら、既存のメンバーでやるということになると、
これまでの経験から、アイディア出しをすることになるため、
今よりいいものはできるかもしれないが、市場に潜む潜在ニーズを汲み取り、
新しい画期的なアイディアはそもそも出てこないからである。
まず、大切なのは「何ができるか?」から一旦離れることだ。
それよりも、何が流行るのか?10年後はどうなっているのか?
その中で楽しいことな何か?など、
市場や消費者の動向と、彼らが喜びそうなことを出していくことから始めるべきだ。
このアイディア出しの次のプロセスで初めて「何ができるか」を考える。
そこで重要なことは、
「事実に沿っているかどうか」に基づいて、アイディアを削ることだ。
数字や現実に基づいて、劣後順位をつけ、絞り切った上で、
優先順位を決める。
でないと、思い込みによって、プロジェクトを間違った方向に進めてしまう。
事実、数字に基づいて考えていくことを「ファクトフルネス」なのだ、
と私は解釈した。
この本では冒頭から、
「現在、低所得国に暮らす女子の何割が、初等教育を修了するでしょう?」
A 20% B 40% C 60%
といった、13のクイズから始まる。
そして、欧米や日本、アジアなどの国々別の正答率が出ているのだが、
大半の回答が、ランダムに回答しての正答率(例えば、3択の質問であれば33%)
よりも、低い。
私もやってみたが、正解するどころか一番反対を答えてしまう、という有様だった。
それもこれも、各質問からくるイメージに対する、
たとえば、低所得国では初等教育が受けられていないだろう、
といった「思い込み」によるものだ。
事業開発にかかわらず、情報を収集し、分析することの目的は、
「現状を正しく把握すること」にある。
そしてそこから、各情報をつなぎ合わせ、情報が意味する「含意」を導き出す。
この、含意は仮説のもとになるが、含意が正確であればあるほど、
打ち手も正確になる。
ということは、正しい含意を導き出そうとするためには、
ただし情報を集めなければならない。
その意味もで、この本で述べられている「ファクトフルネス」、という考え方は、
重要、を超えて必要なアプローチと言える。
この本では、医師であり公衆衛生学の権威でもある、ハンス・ロズリング氏の、
研究と事例を用いて、第1章から10章まで、
思い込みを10のカテゴリーに分け、
第11章でその実践法についてまとめている。
- 第1章 分断本能 「世界は分断されている」という思い込み
- 第2章 ネガティブ本能 「世界がどんどん悪くなっている」という思い込み
- 第3章 直線本能 「世界の人口はひたすら増える」という思い込み
- 第4章 恐怖本能 「実は危険でないことを恐ろしい」と考えてしまう思い込み
- 第5章 過大視本能 「目の前の数字がいちばん重要」という思い込み
- 第6章 パターン化本能 「ひとつの例にすべてがあてはまる」という思い込み
- 第7章 宿命本能 「すべてはあらかじめ決まっている」という思い込み
- 第8章 単純化本能 「世界はひとつの切り口で理解できる」という思い込み
- 第9章 犯人捜し本能 「だれかを責めれば物事は解決する」という思い込み
- 第10章 焦り本能 「いますぐ手を打たないと大変なことになる」という思い込み
各章は、事実情報と考え方、そしてその章のまとめとしての定義で構成させているため、
「分厚い学術書」ではなく「体系立てて書かれた実務書」として、
多いに使える内容になっている。
昨年のベストセラーだが、その名の通り内容も濃く、
私も、何度も読み返したりして、読み切るのにあえて、時間をかけた。
それくらい、内容のある本だ。
ビジネスの最前線で頑張る実務家、経営者にぜひ、読んで欲しい、
オススメの一冊だ。
マーケティング プロデューサー
理央 周(りおう めぐる)
New! 「売れる仕組み」を自社に取り入れよう!
事例で学ぶマーケティング 無料メルマガの登録はこちらから:
→ LBT オンライン
最新刊「なぜ、お客様はそっちをかいたくなるのか?」~二択クイズでMBAのエッセンスを身につける!