Marketing i's [マーケティングアイズ]

マーケティングはサイエンス(科学)に基づいたアート(芸術)である

ファイナンス思考 日本企業を蝕む病と再生の戦略論朝倉祐介著

日頃、経営資源中でも、モノ=マーケティングを扱っている私としては、ヒトであるところの組織のあり方と、カネであるところの広い意味での会計の重要性を感じていた。

この本では、ファイナンスを「企業価値を最大化する考え方」と定義し、日本企業が陥っている短期的にビジネスを評価する視点をどう直していくべきなのか、そして創造性溢れる視点を持つ企業人として何を見据えていけば良いのかを明快に示している。

財務諸表を読み解くべきだということは、昔から言われていることで、この本にも財務諸表の読み解き方は書かれているのだが、今までにあるファイナンス、会計の本と大きく違うところは、キャッシュフローとBSを、私たちがどう解釈し、それをどのように自社の未来に投資していくのかという考え方と、それで成果を出してきた企業の事例とかミックスされて書かれていることがまずは第1点目。

そして、その視点を持つことで未来に向いた視点を持つことができ、正しい投資につながる、という流れで書かれているのが第2点目だ。

まず、日本企業が陥っている短期的な評価の視点を、損益計算書を重視しすぎる、またはそれしか見ていないという意味で「PL脳」と名付け、その弊害について具体的な事例を挙げている。

どうしても私たちは、財務諸表をその段階での通知表のようなものとして捉えがちだ。しかし、財務諸表は今現在を見るためのだものだけではなく、未来を見通すためにあるのだということこの本は私たちに示唆している。

このPL脳に陥りがちな原因としては、成功体験、役員の高齢化、メディアの影響などが挙げられている。短期的に売り上げと利益を上げなければと言う思考に陥りがちな要因になっているのだろうと思われる。

PL脳に陥るのは、一方で上記のような理由からだけではなく、その前段階においで、財務諸表のそれぞれの役割と、なんのために財務諸表を作成するのかというそもそも論への理解が足りないから、とも感じている。

特に、中小企業、起業家、大企業の新規事業の責任者といったこれから自社のサイズを質量ともに拡大していくビジネス・パーソンにとって、会計は、財務、税務、管理会計の3種類があり、それぞれの役割は何で、何を目指すのか、また、将来を見据えた時に、自社の現在地と未来への道においていくらをどこに投資するのか、という考え方ができないと、日本からアマゾンやアップルは生まれないだろう。

その意味においては、すべてのビジネス・パーソンが読むべき一冊だと言える。

章立てはこちら:
第1章 PL脳に侵された日本の会社とビジネスパーソン 
第2章 ファイナンス思考なくして日本からアマゾンは生まれない
第3章 ファイナンス思考を活かした経営:
〜アマゾン、リクルート、JT、関西ペイント、コニカミノルタ、日立製作所
第4章 PL脳に侵された会社の症例と末路
第5章 なぜPL脳に侵されてしまうのか

マーケティング コンサル タント 理央 周(りおう めぐる)


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