マーケティング活動は、消費者の行動を促す、
生活者を動かすことを目的としていた。
動かすとは、心と体を動かすということになる。
その意味で、行動経済学についても、
私のマーケティングメソッドに取り入れてきたが、
心と言う意味においては、
ニューロマーケティングも非常に重要な考え方だ。
その意味で読んでみた。
この本の特徴は、序章にも書かれている通り、
過去の分析ではなく、これからどうすればいいのかを理論建てて、
またさまざまの事例とともに紹介してくれる点だ。
その意味では、単なる成功哲学ではなく、
普遍性が高く、また私たちがビジネス、仕事に使う、
という意味での再現性も非常に高い。
第1章では、人間が行動するとき、購買や興味を持つ時に、
脳のどの場所の活動と結びついているのか、
というような実験結果が様々載っている。
この点は、ものを買うという行為が、
不確実な事態での意思決定という研究課題の応用だからである、
と書かれている通り、
人間は常に合理的な意思決定をするとは限らず、
不合理な判断の繰り返しで、
最終的に決定行動に出ることが多い。
筆者の言葉を借りれば、「エイやっ」と決めるということである。
これは、とりもなおさず、フレームワークを覚えるだけでは、
全く何の意味もないということにつながる。
フレームワークは、あくまで思考の枠組みに過ぎない。
自社のプロダクト、ターゲット、
市場環境においてそのフレームワークを、
応用して当てはめながら考え、
試行錯誤しなければならないということに他ならない。
誤解を避けるために、言及しておくが、
フレームワークが不要だ、
と言っているわけでは全くもってない。
フレームワークは、迷ったときに方向を示してくれたり、
現在地が正しいかを教えてくれる地図のようなものだ。
そこから最短距離で、目的地に着くのは良いのか、
または少し遠回りをしても、
必要なものを手に入れてから目的地に行くのか、
それは行く人本人が決めるように、
フレームワークを出発点に過ぎない。
したがってフレームワークは、
必要な条件ではあるが、十分な条件では無いのだ。
このように、問題提起にフレームワークと、
そして様々な企業の事例が多く書かれている。
無意識が思考を作るという第3章では、
消費者が商品を手に取るまでの動機付けと感情、
価値の生成が意識決定に至るまでのフレームワークが書かれている。
特に興味深かったのが、
自分が楽しかったと思わせるという第6章に書かれている、
認知構造の変化だ。
自分が正しいに違いないとか、
過去の成功体験や固定観念にとらわれていると、
思考がストップし、画期的なプロダクト開発につながる、
いいアイディアが生まれない。
この点は、私も拙著「ひつまぶしとスマホは同じ原理でできている」
に書いたことだ。
この本に書かれているいくつかの例によると、
新しい発想を生み出すには、
ほんのちょっとしたことができるかどうかにかかっている。
それが事例とともに書かれているので、
企業においては社員研修などに使っても、
効果の出る手法だと私は思っている。
期待を裏切ると言う第5章には、
やる気を起こすものは予告なのか報酬なのかというマトリックスが書かれているし、巧みに不満を演出すると言う第7章では、計画的陳腐化が系統立てて描かれている。
こういったフレームワークや事例は、
マーケティング活動において、
とても有用な知識になりうる。
また事例も書かれているので、
前述したように、自分化することで、仕事に再現もできる。
その意味で、オススメの1冊である。
マーケティング コンサル タント 理央 周(りおう めぐる)
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