所有から利用へ。販売から関係づくりへ、と帯にあるように、今の時代に必要な考え方が凝縮されている一冊だった。
そもそも、マーケティングまたビジネスにおいて、継続して購入される仕組みを作ることが必須であること間違いない。どうしても、目先のビジネスや商売、売ることにとらわれてしまうと、自社の商品を「売り切り」で考えてしまうことが多い。しかし、顧客という存在は、自社のファンであり、ロイヤリティー持って自社を見てくださる方々のことを言うのだ。その意味でサブスクリプションつまり継続購入は必須である。
この本は、そのマーケティングの「そもそも論」をしっかりと考え直させてくれる本でもある。
まず冒頭に出てくるのが、アマゾンの事例。アマゾンはどのように会員をつなぎとめているのかを、コンテンツ、即座の対応、利便性によって顧客を囲い込んでいると言っている。この点も、顧客中心主義のアマゾンの成功の秘密を捉えていて、大いにヒントになることだ。
次に、なるほどと思った点は、BtoBのビジネスにおけるサブスクリプション型のマーケティングについてだ。そもそも、BtoBのサブスクリプションの多くは、契約時にすべてのお金が支払われるわけではない。つまり収益の推移を中止し続けなければならないし、継続課金のマーケティングシステムにも力を入れなければならないと言う。これは、顧客獲得のみでなく、チャーム、すなわち契約を解約されてしまうことにも同時に注意しなければいけないということを表している。実際の実務担当者が見逃しがちな、しかし非常に重要な点だ。
さらに、顧客価値についての言及もこの本には明快にまた、整理されて描かれている。顧客経済価値(EVC)は、お客が支払う有形無形の価値の合計だと著者は言う。価値の育成とは、顧客からお金を搾り取る事ではなく、顧客の知覚価値を含めた総合的な価値判断を高めることだと言う。これはブランドマネジメントにも通じることだ。
価値育成のために5つの方法として
- 顧客満足が得るのを助ける
- 歩行を実施をする
- 価値を創造する
- 顧客との関係を通した価値を創造する
- 価値観を共有する
といったような形でしっかりとまとめられている
今、サブスクリプションのみではなく、シェアリングやIoTを使ったBtoBのマーケティングオートメーションなど、ITを通しての新しい形のマーケティングの重要性や手法論が盛んに叫ばれている。
ただ、その根底にあるのはやはり顧客がどう動くのか、そして顧客が何を求めているのか、さらに企業が売りたいものと顧客が欲しいものとが異なっていることが存在することを認識することによって、継続して購入くれる仕組みができることになると私は信じている。
詳しい章立てはこちら:
出版社からのコメント
(本書の構成)
イントロダクション
PART 1 サブスクリプション・シフト
1.サブスクリプション・エコノミーの拡大
2.サブスクリプションへの移行
3.マーケティングへの影響
4.ファネル再考
5.価値の育成
PART 2 価値育成のための戦略
6.カスタマーローンチプランを作成する
7.早期の成功をめざす
8.顧客の習慣作りを助ける
9.トレーニングプログラムを提供する
10.顧客のストーリーを共有する
11.価値を数値化する
12.成功を祝う
13.コンテンツを通じて価値を創造する
14.コミュニティを作る
15.ファンとアドボケイトを育成する
16.アドバイスやインプットを求める
17.解約には快く応じる
18.自社のストーリーを共有する
19.ビジネスモデルに価値観を組み入れる
20.無料お試し利用者を育成する
PART 3 戦略の実践
21.価値育成のためのビジネスケース
22.価値の育成を開始する
23.組織的なサポート体制を作る
24.共通の課題とリスク
25.価値育成のための4つの基本的ルール
26.マーケティング機会
その点においても、この本は適切にまとめられている。ビジネスに関わる全ての方々にお勧めできる1冊である。
マーケティング コンサル タント 理央 周(りおう めぐる)
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