この本のエッセンスは、
「分析、論理に軸足を置くサイエンスに基づいた経営では、この複雑にうごめく環境下での経営は困難だ」
という問題に対する答えを述べている点にある。
私は常々、マーケティングは「サイエンスに基づいたアートだ」
と思っている。
マーケティング活動の顧客コミュニケーションの際に、
消費者や顧客の直接目に触れるクリエイティブは、
「アート」に機能性をもたせたものだと考えている。
アーティストが生み出す芸術に、企業側としての意図を加味する、
という意味で。
一方で、数多くの成功哲学やキャリアポルノ的なアプローチでは、
普遍性、再現性に乏しくなる傾向がある、とも思ってきた。
人間は、感情の生き物なので、必ずしも論理的に行動をするわけではない。
その意味でも、今年ノーベル賞経済学賞の受賞テーマが、行動経済学だったことが興味深い。
この本では、その一つの回答として、アートとサイエンスに加えて、
「クラフト」という概念を加えていることが私には参考になった。
というのは、混沌としているからこそ、垂直的に問題を解決できることは重要だと思うし、現実社会での経営活動やマーケティングにおいて、分析と課題形成までのステップにおいては、サイエンスの側面が必要である。
前述のアートという抽象的な側面と、成功哲学的なアプローチでの普遍性と体系性がカバーできないという側面を
をクラフトという個別の体験が固めてくれ、さらにそこをサイエンスがサポートする、というアート、クラフト、サイエンスの三位一体が、私の長年の疑問のヒントになりそうだ。
イノベーションが必要とされる今、「とはいうものの何をどうしたらいいのか?」というのがマーケティングの実務担当者の悩みだと思う。
イノベーションには、アート、美的感覚というものをいかに自分の視野に取り入れるか、という大きな気づきを与えてくれ、さらに具体例も書かれている。その意味で一読の価値がある1冊だと言える。
目次はこちら:
第1章 論理的・理性的な情報処理スキルの限界
第2章 巨大な「自己実現欲求の市場」の登場
第3章 システムの変化が早すぎる世界
第4章 脳科学と美意識
第5章 受験エリートと美意識
第6章 美のモノサシ
第7章 どう「美意識」を鍛えるか?
マーケティング コンサル タント 理央 周(りおう めぐる)
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