マーケティングの大家、ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院教授フィリップコトラー氏と、
ネスレ日本株式会社社長兼CEOの高岡浩三氏の共著ということで、
興味を持って読んでみた。
なぜ、21世紀のマーケティングが必要なのか という高岡氏の問題認識と、
その方向性の提示からこの本は始まっている。
第1章は、コトラー氏と高岡氏の対談。
21世紀のマーケティングとは何か?
定義をしている。
学者であるコトラー氏と実業を営んでいる高岡氏の、それぞれの視点が面白い。
コトラー氏はことあるごとに、日本企業には「戦略が必要だ」と説いている。
確かに、戦術論には長けているが、こと戦略となると、理解もバラバラだし、
なにより、語られることが無い。
その意味で、文中でも、
「一般の人にマーケティングの真意が広く理解されていない。
マーケティングのマーケティングが必要だ」
と述べている点に関しては、強く共感するし、
私自身の経営理念に近いことをうれしく感じる。
その前段に、イノベーションの重要性が語られている。
マーケティング活動によって、社会と顧客に価値を提供するためには、
革新的なプロダクトが必須になる。
すなわち、イノベーションである。
そのイノベーションは、「カイゼン」では生まれない、
ビジネス的なブレイクスルーにはならない。
したがって、
顧客の心の「ホット・ボタン」を押すには至らないのだ、
とも言っている。
この章の最後に、これからの日本企業のマーケティングに何が必要なのか、
という質問に対して、
「創造性豊かで、チャレンジ精神旺盛な若者を育てる大学」
の必要性を説いている。
この視点と、将来への展望も素晴らしい。
第2章では、コトラー氏がマーケティングの変遷について語っている。
マーケティング3.0の内容の、ダイジェスト版なのだが、
マーケティング4.0という次のフェイズに移行する、と言っている点が新しい。
メディアや経済環境が複雑になってくると、
消費者の志向も多様化する。
その中で、「ヒトの自己実現欲求」が高くなる、
したがって、多様化するニーズにこたえるのと同時に、
先取りをしていくべきなのだ、
と解釈した。
以降、
第3章 顧客と顧客の問題とは何か?
第4章 イノベーションとリノベーション
第5章 問題解決は問題発見が原点
第6章 コトラー・ビジネス・プログラムの全貌
と続くのだが、この本は一貫して、
ユーザーの問題を解決することがマーケティングのミッションで、
そのためには、「ユーザー視点」になることだと説いている。
これこそ、ドラッカーの言う、セリングとマーケティングの違いで、
マーケティングの定義を、21世紀に当てはめている、
具体的で、実際の仕事に再現できる内容だった。
マーケティング コンサル タント 理央 周(りおう めぐる)
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