「世界に冠たる中小企業」読了。
ボク自身、中小企業での勤務経験もあるし、また今も中小企業や個人事業主の経営相談をさせていただいていることもあり、手に取ってみた。
世界に通用する、とくにモノ作りの企業が日本には多い。
一方で、価格競争や外資系企業の流入などで苦戦している企業が多いのも事実である。
そんな中で、中小企業が活路を見出すにはどうすればいいのか?
ボク自身の永遠の課題でもあるのだが、そのヒントが多く書かれている。
この本の著者は、ジャーナリストということもあり、各企業の実情が正確に取材され克明に描かれている。通常のビジネス書は、経営関係の人たち、例えばコンサルタントや士業の方々、学者の先生が書いているため、読み手の再現性も考えてまとめられていることが多い。著者はこういったプロフェッショナルよりも、さすがはジャーナリスト、という感じで写実的に書いている。その分だけ、読み手は自分で解釈をしなければならない。そこが面白いとも言えるのだが。
ボクが特に感銘したのは、価格競争に巻き込まれないための大きなヒントになる、
第2章「専門分野に特化」が成功のカギ に書かれている、東海バネ工業の事例。
「大量生産はしません。100個200個の注文でも他社にお願いします」と言うという。
そのラインアップは、日常生活用途のものからはやぶさまでとのこと。
もちろん値引きはせず、2014年度の売上は約19億円、粗利約50%、営業利益12%。素晴らしい数字である。そのヒミツは多くあると思われる。
- 正当な利益の見込める価格でしか受注しない
- 完納率99.9%〜仕組みとして過去の受注経歴の情報がすべての部署で共有されている
- 在庫をできる限り多く持つ
という点にある。
1に関して言えば、値引き合戦に巻き込まれずまたブランド価値を守れる。
2については、顧客の信頼に直結する。
3に関しては、一般に考えられていること、たとえばROA(総資産利益率)を重視するような傾向とは逆の発想になる。
特に2と3に関しては「顧客」のことを常に考えているのでできる発想である。
逆にいうと、自社のことを最優先していたらでてこない発想ということになる。
しかし、東海バネのやり方をそのまま真似してもうまくいかない。
自社の状況を正しく把握し、あてはめていく、というステップになる。
そのために必要な第一歩は「売り手目線」を「買い手目線」に転換することであろう。
このような事例が数多く書かれているので、中小企業経営者はもとより、私のようなコンサルタントにとって,非常に有益な一冊である。
マーケティング コンサルタント
理央 周
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