Marketing i's [マーケティングアイズ]

マーケティングはサイエンス(科学)に基づいたアート(芸術)である

買いたがる脳:ニューロマーケティングを収益につなげるために必要な顧客視点

「買いたがる脳」を読んでみた。


買いたがる脳
マーケターとしてのこの本からの気づき  

副題に「なぜそれを選んでしまうのか?」とあるように、ニューロマーケティングの考え方をもとにした、理性的ではなく「感情的」な買う時の判断について書かれている。

と同時に、脳科学研究者の著者がその知見を説明することで、消費者として賢い買い物ができるようにすることにもある。

ボクたちマーケターの多くは、これまでの理論やフレームワーク,そして数字を用いてロジカルに物事を考える傾向が強い。しかし、生活者がモノを買う時はどうかというと、必ずしても論理的に,三段論法を用いてモノを買う意思決定をするとは限らない。

中学3年生になるうちの娘を見ていても、
「あ、これカワイイ〜」
と言って買いたくなることもしばしばなのだ。

マーケティングに限らず、このような情緒的で一見説明しづらいことをなんとかまとめていくのが科学や学術のすべきことなんだけど、消費行動の特に「脳の中身」が何を考えてどのようなステップでモノを買うに至るかをこの本はまとめている。

たとえば、裕福なエリアに住んでいる少女は「多分賢い」と思い込んでしまう、という実験結果があるそうだ。これを脳はパターンを求めると意味付けている。すなわち、人は無意識のうちにカテゴリー化してしまう、ということである。(第5章)

これをマーケティング活動に活用するとすれば、拙著「なぜか売れるの公式」にも書いたようにハロー効果を用い、著名人やその道の第一人者に解説をしてもらうなどしてもらうことで、購買意欲をあげることにつなげられるのだ。これはブランドマネジメントをする際の「見た目の価値」の資産につながる「信じる理由」の一つにもなる。

このように、脳科学をマーケティング活動に応用することは可能になることが、この本には多くの実例とともに書かれている。


ニューロマーケティングを活用するときに気をつけるべき点  

もちろんこのアプローチを活用する際には気をつける点(=ダウンサイド)もある。
生活者の消費行動の逆手をとり、「だまして買わせる」という姿勢にならないように気をつけるべきである。

たとえば、第6章「雰囲気の説得パワー」にある視覚への効果の中で、光の当て方によって野菜などを美味しく見せることができるとのこと。

これは,小売業などが用いるVisual Merchandising VMDと呼ばれる考え方などにも応用できる考え方で大いに活用できる。

しかし、この場合気をつけなければならないのが「売り手目線」にならないこと。
たとえば、少し古くなった野菜や、信頼できないところから安く仕入れたものを、よく見せようとして照明でごまかす、ということは本末転倒でやるべきではない。
自社の都合で物事を考えるべきではなく、あくまで「より美味しく見せる」ことを主眼に置くべきなのだ。

ビジネスで一番大事なことは「いいプロダクトを生産し顧客に価値を提供すること」。よく見せることは二の次なのだ。

この点をはき違えると、脳科学ニューロマーケティングも意味がなくなってしまう。
ビジネスにおいて「稼ぐ・儲ける」は目的ではなく、顧客や社会、自社を幸福にするための手段に過ぎない。このことを再認識したうえで読むと、非常に使える本なのだ。
おススメです。

■この本から学ぶこと■
  1. 消費者がモノを買う時には、論理的でなく感情的に行動する。そしてそれは脳が関係する
  2. 脳が関係するその行動にはいくつかのパターンがあり、覚えておくとマーケティングに活用できる
  3. しかし、あくまで顧客主導。自社の都合で考えない


マーケティング コンサルタント
理央 周


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